サントル&ニヴェルネ地区 ロワール地方のワイン産地4

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サントル&ニヴェルネ(Centre&Nivernais)地区

 サントル&ニヴェルネ地区はロワール地方の一番東、ロワール川の上流域に位置する地域です。
基本的に隣り合って接しているロワール地方の他の地域と違い、やや離れたところに飛び地のようにあります。
ロワール川の上流域、そして並行して流れているシェール川の左右にある小高い台地が主になっており、海洋性気候のペイナンテ(Pays Nantais)地区や温暖な気候に恵まれているトゥーレーヌ(Touraine)地区とはまったく違う、寒暖差が激しく夏も冬も厳しい気候が特徴です。
「テュフォー(Tuffeau)」とは異なりますが、貝殻や化石の出土する石灰質の土壌を持ち、辛口の白ワインにはロワール地方を代表する世界的に有名なものも含まれます。

サントル&ニヴェルネ地区の歴史

 この地区でのワイン造りは非常に古い歴史があり、ローマ帝国時代にはすでに名醸地として認識されていたと言われています。
しかし、フランスの統治下に入ったあと名声が高まったのはおよそ12~13世紀。
キリスト教ベネディクト派、そしてその亜流であるシトー派の修道院が作られたあとのことです。
はじめは聖餐(ミサ)などの宗教的な儀式のため、そして修行と日常の糧として造られたワインは、やがて川を下ってオルレアンやパリなどの主要な都市にも運ばれるようになり、歴代のフランス国王にも愛され宮廷御用達となりました。
19世紀には、フィロキセラ災害の被害にあったことをきっかけに、メインの栽培品種をそれまでのシャスラから現在の主要品種であるソーヴィニヨン・ブランに変更。
これが世界的な嗜好の変化や土地の特性とマッチし、一躍有名な産地となります。
現在では、プイィ・フュメのワインに感銘を受けた生産者がカリフォルニアで「フュメ・ブラン」という上質な白ワインを作るなど、ロワール地方でもっとも影響力のある地域のひとつとなっています。

サントル&ニヴェルネ地区のワイン

 サントル&ニヴェルネ地区のワインといえば、なんといっても「プイィ・フュメ(Pouilly Fumé)」、そして「サンセール(Sancerre)」です。
貝殻などが出土する石灰質の土壌に育まれたソーヴィニヨン・ブランが主体のこれらのワインは、火打石に例えられる非常に特徴的なスモーキーな香りを持ちます。
いまや世界的に有名になったアペラシオンであり、日本でもかなり広く知られているもののひとつと言えるでしょう。
また、その陰に隠れてしまってあまり知られていないとはいえ、赤ワインやロゼワインも造られています。
ピノ・ノワールやピノ・グリ、ガメイなどで造られる赤は早飲み系の軽やかなタイプで、セニエ法で造られるロゼは白ワインと同じく印象的な風味を持つとして、近年特に高い評価を得るようになっています。