スクリューキャップ、代用コルク・・・ その他の栓の種類と特徴

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 長い間、ワインの栓といえばコルクのことを指しました。
しかし近年、コルクに変わる新しい素材や技術による栓が生まれ、普及し始めています。
それらのうち、代表的なものを3つ確認してみましょう。

スクリューキャップ

 コルク以外の栓では、恐らくもっとも多く普及しているワインの栓です。
瓶の口にねじ状の刻みをつけ、それと対応する形の刻みをつけたキャップをねじってつけることで密封します。
キャップの内部底面に、ゴムや耐水性の紙などを貼り付けることで気密性をあげています。
ガラスのワインボトルの場合はほとんどが金属製ですが、まれにプラスチック製のものも存在します。
工業製品としての加工精度があがったことから、昔よりもしっかりと気密を保てるようになってきたため、近年では早飲み系のワインのうち、多くがこの方式を採用しています。
また、ペットボトルや缶入りワインなど、最近増えてきたガラス以外のボトルでは主要な方式となっています。

代用コルク

 ゴムやビニールなど人工樹脂性の栓で、コルクと同じ形状に作ってあります。
他の製品と同じように、型に流し込んで作るものがほとんどで、天然素材であるコルクに比べて均一な製品を大量生産することが可能です。
素材によって多少の違いはあるものの、基本的に完璧に近い密封状態を作り出すことができます。
コルクに比べてもっとも優れた点としては、コルク栓の欠点である「ブショネ」が起らないことがあげられます。
細菌による汚染も不必要な化学物質による避けられない汚染も心配しなくて良いのは、完全に管理して製造できる工業製品の強みといえるでしょう。
ただし、冷えると非常に固くなって抜栓に大きな力が必要になる、一度抜くと人の力では再栓が難しいなどの問題点もあるため、スクリューキャップに比べてまだ改良の余地のある方式といえます。

人工コルク

 コルクとゴムやビニールなど人工樹脂を合わせて作られた栓です。
コルクを人工樹脂で包むか、逆に人工樹脂の表面(瓶とふれる部分)に薄くスライスしたコルクが貼ってあります。
コルク栓と代用コルクの中間の特徴を持ち、樹脂でコーティングされているものはコルクの柔らかさを持ちつつブショネの恐れがないことを、表面にコルクが巻いてあるほうはブショネの恐れを最小限にしつつコルクの抜きやすさを持つことを利点とします。
理想通りであればかなり優秀なのですが、かなり精密に作られたものでない限り気密性の点で他の方式に一歩劣ると言わざるをえません。
また、製造に余分なコストがかかってしまうのもデメリットといえるでしょう。
そのため、現時点ではさほどメジャーな方式とはいえませんが、今後の改良によっては大きな注目を集めるものが出てくる可能性もあります。

なぜ普及しないのか

 見てきたように、いずれも(多少の問題点はあるとはいえ)コルクの欠点を補うような新しい方式といえます。
実際、スクリューキャップ方式は、近年ではかなり多くのメーカーで採用されるようになってきているといえるでしょう。
しかし、それにもかかわらず、今でもワインの栓といえばやはりコルクのイメージが揺らいでいません。
なぜ他の方式はあまり普及しないのでしょうか。

 その最大の理由は、長期間の熟成に向かないことです。
ご存知のようにワイン、特に高級なワインは、数十年という非常に長い期間を瓶の中で過ごし、その間熟成を続けます。
熟成中はごく少量の換気が起こる密封状態でなければならず、その調整は非常に繊細です。
スクリューキャップや人工コルクの場合は、この完全に近い気密性を長期間保つことができません。
何年たっても液体が漏れ出すような状態にはなりませんが、気体をしっかり密閉し続けるのは難しいのです。
代用コルクの場合は、樹脂の種類にもよりますが逆に気密性が高くなりすぎ、ワインの熟成に必要な酸素の供給が立たれてしまう可能性があります。
そして、金属や樹脂は経年劣化を起こします。
特に樹脂は硬化・収縮はどうしても避けられないため、いずれ気密性が低下していってしまうのです。

 また、これらの技術がまだ新しいものであるというのも問題です。
スクリューキャップや代用コルクの栓をした状態で、ワインを何十年という期間置いておくことでどんな変化が起るのか、リスクの割合はどれくらいか、といったデータがまだほとんど存在していません。
特に高級なワインについては、何十年と待った挙句にひどい劣化状態になってしまったなんてことになっては、甚大な損害が発生してしまいます。
そのため、わざわざリスクをとってまで実験を行う生産者はほとんどおらず、結果としていつまで経ってもデータが集まらない、というのが現状なのです。

 イメージの問題もあります。
技術が出始めの頃はどの方式も質が今ほど高くなく、コルク栓のものに比べて劣化してしまっている製品が少なくありませんでした。
栓としての品質が向上したあと、上で述べたとおり長期熟成用のワインに使用するにはリスクが大きすぎるため、もっぱら早飲み用の安ワインにばかり使用されてきました。
その結果、スクリューキャップや代用コルクなどのワインは質が悪く、おいしくないというイメージがついてしまったのです。
当然、生産者がわざわざイメージの悪い方式を取ることはありませんので、ますます敬遠されるようになってしまっています。

 もちろん、スクリューキャップのようにその利便性から、最近ようやく少しずつ普及しつつある方式もあります。
コンビニエンスストアやスーパーなどの早飲み用のワインコーナーをのぞくと、ほとんどがスクリューキャップ、なんてことも少なくありません。
しかしそれでも、ワインボトルの栓のイメージがコルク以外のものになるのには、まだまだ時間がかかりそうだといえるでしょう。