北海道 日本のワイン産地1

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北海道とは

 北海道は、日本列島の最北端に位置する島です。
道庁所在地である札幌市で北緯43度、最北端では北緯45度にもなる高緯度地域で、フランス南部とほぼ同緯度になります。
周辺の島を除く本島のみでも約80,000平方キロメートルという広大な面積を持ちますが、気候条件が非常に厳しいため人口は札幌など一部の都市に集中しており、総人口は約535万人と東京の半分程度。
その低い人口密度を生かして、日本の食料自給率を大きく引き上げる大規模な農業が行われています。

北海道のワイン造り

 北海道ワインの歴史は日本のそれよりもさらに浅く、はじまりは1960年代のこととされています。
しかし、ちょうど日本のワイン造りがようやく本格化しだした頃と重なったこともあり、短期間で急速に拡大していきます。
現在では、ブドウの生産量や栽培地全体で見ると他の主要産地には及ばないものの、ヨーロッパ系ブドウ品種の生産量だけで見れば日本で一番の産地となっています。

ブドウ品種

 北海道は緯度で見るとフランスの南部やコルシカ島と同じ程度に位置していますが、それらヨーロッパの地域よりもかなり冷涼で、ブドウの栽培ができる北限と同程度の厳しい気候を持っています。
そのため、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどのメジャーな品種よりも、ケルナーやミュラートゥルガウ、ツヴァイゲルトレーベなど、ドイツのような寒冷な国を原産とする品種が栽培されています。
特にケルナーの生産量は日本全体の約9割に届くほど。
寒冷地独特のきりりと澄んだ口当たりや酸、それとは裏腹にどこかやさしい味わいが日本人の味覚にもよくマッチしています。
また、アメリカ系品種も多く栽培されており、生産量で見ればナイアガラやキャンベル・アーリーなど独特の香りを持つ品種の方が多くなっています。
これらフォクシー・フレイバーを持つブドウのワインはヨーロッパではあまり見られないため、日本らしい特徴を持つワインとして海外での人気も高く、競争相手の少なさもあって輸出用の主力品種として力を入れて栽培している生産者が増えてきているようです。

北海道のワイン造りにおける強み

 テロワールの面で言えば、北海道の最大の長所はやはり「梅雨がないこと」でしょう。
花芽が出始める初夏にしとしとと降る梅雨の雨は、ブドウ畑全体の湿度を高い状態に保つことで病害虫を呼び込んでしまいます。
雨が多いとカビ系の病気が発生しやすくなるだけでなく、土壌から跳ね返る雫が土に含まれる菌を媒介してしまいますし、枝先に感染するウイルスも活動が活発になります。
そのため、日本では他国のワイン産地のような密植えを行うことができず、湿気や飛まつを嫌って枝を頭上に広く這わせる「棚仕立て」になっていることが多いのですが、梅雨のない北海道ではその心配も少ないため、ヨーロッパのような「垣根仕立て」で栽培している生産者が多いようです。
(それでも湿気はあるため、密度は低めになっているようですが)

北海道のワイン造りにおける問題

 気温の面では、寒冷地向けの品種の栽培に向いているのは良いのですが、冬に大きく下がる気温や大量に降る雪、遅い春などはやや問題です。
ブドウの栽培には冬季の冷え込みも必要ですが、北海道のように度を越えて寒くなれば当然ダメージを受けてしまいます。
大雪はうまく積もれば厳しい寒さから気を守ってくれますが、同時に重みで枝を折ってしまう危険もあります。
芽が出た後に度々冷え込むと霜害の発生確率が上がるうえ、全体的な成長も遅くなって果実がしっかり熟さない可能性も。
こうした理由から北海道のブドウ畑は、広大な土地の中でも特に東部や南部の比較的暖かで雪の少ない地域に集中しています。
特に十勝地方や小樽周辺などでは、近年良質なブドウが生産されるようになってきており、他地域の生産者からも注目を集めています。

 地質の面では、北海道も日本の他の産地と同じように「過剰な保水力」という問題を抱えています。
特に、冬場に雪が積もる北海道では、水はけの悪さは一般的な例よりさらに影響力を増してしまいます。
そのため、ブドウを植える前に十分な高さまで砂利などの水はけの良い材料を混ぜ込んだり、樹脂の管を埋めて排水力を高める必要があります。
場合によっては近隣の農家から出る農業廃棄物、籾殻や野菜のかす、処理をした家畜の骨などを使用することもあるようです。

 北海道ならではの問題としては、野生動物の多さがあげられます。
小動物による若葉や果実の食害は、どの土地でも多かれ少なかれ抱える問題ですが、北海道の場合は動物の数の桁が違います。
さらに、生産者あたりの土地の広さ自体も日本の他の産地とは比べ物にならないほど広いため、どれほど対策を立てても追いつかない状況になってしまうのです。
近年ではハンターの数も減ってきているため、鹿やきつねなどの被害も加速度的に増えてきており、本格的な対策が必要になりつつあります。