ファルツ ドイツのワイン産地7

目次

位置

 ドイツの南西部、ラインヘッセン(Rheinhessen)の南側に位置する地域です。
東側でライン川に接しており、ライン川左岸に位置する産地のうちもっとも南側のアンバウゲビート(Anbaugebiete)となっています。
南側はフランス国境となり、アルザス地方(Alsace)に面しています。

テロワール

 ファルツ地方の南東、フェルツァーヴァルト山地の斜面とライン川の間に細長く広がるファルツは、その地形の関係から非常に温暖な地域で、ラインヘッセンと同様ドイツ国内でももっとも温暖な気候に恵まれた地域のひとつです。
地質は北部と南部で大きく異なっており、北部は石灰質を多く含む粘土質や砂岩質、黄土などがメインで、南部では密度の高い粘土や泥岩が多くなっています。
両方に共通する地質としては、花崗岩、ムッシェルカルク(Muschelkalk)と呼ばれる貝殻を主成分とする石灰岩、グラファイト(黒鉛)、斑岩、粘板岩(ロートリーゲント)などがあげられます。
いずれにしても、南北に細長い分バラエティに富んだ土壌が広がっており、畑によって大きく異なる特徴を有しているのは間違いありません。
年間日照時間は1800時間を越えており、ラインヘッセンやアルザス地方と同じように雨の少ない地域ですが、粘度や泥岩など保水力の高い地層が水分を確保するため、ブドウの栽培に適した絶妙なバランスを保てています。

ワイン造り

 ファルツは、ラインヘッセンに次いでドイツ国内で二番目にブドウとワインの生産量が多い地域です。
ブドウの栽培面積は23489ヘクタール(約234.9平方キロメートル)、ワイン生産量は約17.7万キロリットルです。
ベライヒ(Bereich)は2つあり、グロースラーゲ(Groslage)は25、アインツェルラーゲ(Einzellage)は323となっています。
主なブドウ品種は、白ブドウはリースリング(Riesling)、黒ブドウはドルンフェンダー(Dornfelder)。
そのほか、ミュラー・トゥルガウ(Muller Thurgau)、ポルトギーザー(Portugieser)、シュペートブルグンダー(Spätburgunder、=ピノ・ノワール)、グラウブルグンダー(Grauburgunder=ピノ・グリ)、ケルナー(Kerner)、ヴァイスブルグンダー(Weißburgunder=ピノ・ブラン)なども栽培されています。
リースリングの栽培面積が広く、全体の1/4近くを占めており、ドイツで最大のリースリング産地となっています。
また、黒ブドウも多く栽培されていて、黒ブドウの栽培面積及び赤ワインの生産量(生産比率ではない)もドイツ国内第一位です。
現在の割合的には白ワインの方が多く、赤ワイン:白ワインの比率は約38:62となっていますが、近年赤ワインの生産量が増加してきています。

ベライヒ(Bereich)

ミッテルハールト/ドイツチェ・ヴァインシュトラーセ(Mittelhaardt/Deutsche Weinstrasse)

 ファルツの2つのベライヒのうち、北側に位置する地区です。
ノイシュタット(Neustadt)の町から北の地域で、北側でラインヘッセンに接します。
ファルツの生産者や畑のうち著名なものが南部よりもかなり多く存在しています。
特にリースリングを使用したミネラル感たっぷりの白ワインでよく知られています。
また、ファルツを南北に貫くワイン街道沿いはドイツの主要な観光地のひとつとなっており、地区の中央付近にあるバート・デュルクハイム(Bad Dürkheim)の「170万リットルの大樽」など有名なスポットも多いようです。

ズュードリッヒ・ヴァインシュトラーセ(Suedliche Weinstrasse)

 ファルツの2つのベライヒのうち、南側に位置する地区です。
南側はフランスのアルザス地方に接しており、文化的にもフランスの影響を色濃く受けた地域のひとつとなっています。
北部と同じくリースリングの栽培がメインですが、近年では赤ワインの生産が増えてきており、特にドルンフェンダーの栽培面積が広がりつつあります。
品質や生産者の知名度では北部に劣りますが、赤ワインの中にはドイツ内でも上位に入る高評価を得ているものもあります。
粘土質の地層の割合が比較的多いことや温暖な気候から、どっしりとしたワインが多そうなイメージを抱きますが、実際には雨の少なさと(ドイツ内では比較的暖かいとはいえ)他国のブドウ産地に比べると寒冷な気候のため、すっきりとしたタイプのものが多いようです。