白ワインの醸造方法 ブドウ果汁が白ワインになるまで

目次

 白ワインはブドウの果汁だけをシンプルにワインにしたものです。
そのため、搾ったブドウの酸味や香り、フレッシュ感をいかにワインに引き継いでいくかが醸造のポイントとなります。
工程が少ない分、ひとつひとつの作業がより重要な意味を持つため、求める香味に合わせていく敏感な感覚と技術が必要です。
単純明快で、でも奥の深い、白ワインのできるまでを見てみましょう。

果実の圧搾(プレシュラージュ)

 白ワイン造りでは、ブドウの果皮や種は使用しません。
収穫したブドウから果梗(かこう)を取り除いてばらしたら、すぐに圧搾機にかけて果汁を絞ります。
ブドウの果汁は黒ブドウでも透明なライトイエローで、果皮や種との接触時間をほとんど取らずに分けてしまうことで、あの白ワイン独特の水色のまま流れ出してきます。

不純物の沈殿(デブルバージュ)

 白ワインの場合は、さらに発酵を始める前に不純物を沈殿させて取り除きます。
圧搾の際に混ざった微細な果肉や果皮のかけらからも不必要な成分が溶出してしまうので、発酵後ではなく発酵前にこの作業を行います。
ただし、この段階では清澄剤までは使用しません。

アルコール発酵(フェルマンタシオン・アルコリック)

 準備が整ったら、果汁を大きなタンクに集めて酵母を添加して発酵を始めます。
ブドウの果皮には天然の酵母がついていて、圧搾した際に果汁内に混ざっているためそのまま置いておいても発酵しますが、品質が不安定になったり腐造の危険性もあるため、現代では純粋培養した酵母が使用されることがほとんどです。
発酵期間は1~2週間。
赤ワインのように果皮や種から成分を溶出させる必要がないので、発酵温度は15度前後と低めです。
低温で発酵させることで、より繊細できめの細かい味わいのワインに育てることができます。

熟成

 圧搾は既に終了しているので、発酵終了後はすぐに熟成に入ります。
早飲み用のフレッシュなものはステンレスのタンクで落ち着かせる程度、しっかりとしたコクを与えたいものは赤ワインと同じように樽での熟成を行います。
樽で寝かせることで、樽由来のタンニンがワインに溶出してよりどっしりとした味わいになり、また定期的にかき混ぜて滓とよく接触させることで、複雑な味わいを獲得します。
赤ワインと違ってブドウ由来のタンニンをあまり持たない白ワインでは、この工程がボディの質に大きな差を与えるのです。
また、リンゴ酸を乳酸菌が分解するマロラクティック発酵も起こり、フレッシュな酸味から落ち着いたまろやかな酸味へと変化します。

二酸化硫黄の添加(シルフィタージュ)

 熟成が終了したら、酸化防止剤である二酸化硫黄(亜硫酸塩)を添加します。
火入れを行わないワインにとって、二酸化硫黄の添加は発酵を完全に止めたり雑菌の繁殖を防ぐという点でも重要で、ヨーロッパを中心に義務化されている国や地域も多く、ほとんどのワインに施されています。
ただ、近年では殺菌や濾過の技術の向上から酸化防止剤無添加のワインも販売されており、通常は人体に影響がない量でも反応して頭痛を引き起こしてしまう体質の人などから支持を受けています。
また、もともと日本酒という発酵終了後に火入れを行うお酒があった日本では、酸化防止剤の添加に否定的な消費者も多く、安全上輸入ワインに対しては本国以上の添加を求めるものの、国産ワインについては無添加ワインが多く造られています。

調合(アサンブラージュ)

 味わいが完全に決まった時点で、生産地や生産者によっては許可された範囲で調合を行います。
同じ地域の別の畑、あるいは別の品種のワインとのブレンドが多く、味や香りのバランスをとり、ロットごとのばらつきをなくすことができます。
ただし、その年、その土地の特徴を反映させることが重要である、と考えるフランスなどヨーロッパの「旧世界」諸国では、高級なワインになるほど使用できるワインの選択の幅は狭まっていき、場合によってはブレンドが許されていないケースも少なくありません。

清澄、濾過(コラージュ、フィルトラシオン)

 ここまでの工程で除去しきれていない微細な浮遊物などを、清澄剤を使用して取り除きます。
白ワインは発酵前に一度沈殿物の除去を行っていますが、そのままだと沈殿してこないような非常に細かいものや、発酵中に発生した滓などが残っているため、ここでもう一度仕上げを行う必要があるのです。
使用する清澄剤はワインの種類によって異なり、白ワインの場合は卵白や牛乳から抽出されるカゼイン、ベントナイトと呼ばれる粘土などが使用されることが多いようです。
赤ワインに比べて、タンニンや色素などの有効な成分を除去しすぎることをそれほど警戒しなくていいので、一般的にやや吸着力の強い清澄剤が使用されている傾向があります。
ただしもちろん、やりすぎるとせっかくの味わいや香りが薄まってしまったり、自然の色味が消えてしまうため、使用量や作業方法には注意が必要です。
こうして、透明に輝く金色の水色に磨きをかけたところで、ようやく私たちが普段飲んでいるあの白ワインが完成します。

瓶詰め

 完成した白ワインは、すぐにパッケージに詰められます。
一般的には瓶が使用されますが、近年は安価な早飲みワインはペットボトルや缶、紙製のパックなどで売られることも多くなってきています。
これらのパッケージは瓶よりも軽く丈夫でコストもかかりませんが、出荷後の熟成は期待できないため、はやく飲んでしまわねばなりません。
一方高級なワインは遮光能力の高い瓶に詰められ、長めの質の良いコルクで打栓されて販売店、もしくは熟成用のセラーへと送られます。
白ワインは赤ワインに比べてタンニンの含有量が少なく長期保存には向かないとされていますが、ていねいに造られた力のあるワインであれば瓶詰め後も熟成が可能です。