フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州 北イタリア3

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エミリア・ロマーニャ州(Emilia Romagna)とは

 フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州(Friuli Venezia Giulia)は、北イタリアのもっとも東に位置する州です。
ヴェネト州(Veneto)と州境を、スロベニア、オーストリアと国境を接します。
アドリア海に面していますが、州名に反してヴェネツィアは属していません。
比較的小さな州ですが、南部にはアドリア海、北部にはアルプス山脈の東端があり、西部には大河が流れるという北イタリアの縮図のようなバラエティ豊かな地形になっています。
テロワールもそれに合わせて多彩なものになっていますが、特に北部の山地の斜面が優良な白ワインの産地として近年注目を集めつつあります。

フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の歴史

 アルプス山脈の切れ目とアドリア海の北端の位置するこの地域は、古代から中世初期にかけては交通や政治の要所として発展しました。
ワイン造りも古くから行われ、ローマ時代から続く産地も少なくありません。
ローマ帝国が分裂した後は各勢力の支配権争奪の戦争によってダメージを受けることも少なくありませんでしたが、沿岸地のアクイレイアに大司教座がおかれるなど一定の保護と開発が続き、10世紀前後にはこの周辺の中心地となりました。
テロワール的にブドウの栽培に非常に適した環境を持つため、その頃からワインの生産は盛んで、海洋交易の中心であったヴェネト州から輸出入されるブドウとワインの影響も強く受けたワイン文化が発展していきます。
15世紀からはヴェネツィア共和国の領土となりましたが、19世紀のイタリア統一の流れの中ではオーストリア・ハンガリー帝国に占領され、20世紀の世界大戦の際にはユーゴスラビアとの領土問題が発生するなど、近年まで支配権の移動が激しい地域でした。
1975年のオージモ条約によってようやく現在の国境線が確定し、ワイン文化も本格的に近代化を急いでいます。

フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のテロワール

 フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州は、海から平地を経て山脈に至る地形変化が比較的コンパクトな範囲に収まっており、海洋性気候と大陸性気候両方の特性が交じり合う地域の割合が高いのが特徴です。
面積は小さめですが、そのほぼ全域がブドウ栽培に適しています。
特に北部の標高数百mの丘陵地帯、山岳地帯の斜面はイタリアでも有数の白ワインに適したテロワールとなっており、近年は「イタリア白ワインの聖地」として注目を集めつつあります。
夏の日照時間は長くなっているものの、6月、そして9、10月の降水量が多く、年間降水量では北イタリアでほぼ唯一1000mmを越えるため、収穫時期や病害対策の重要性の高い地域でもあります。

フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のワイン造り

 フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の、特に中部から南部にかけての地域では赤ワインも造られていますが、やはり注目すべきは白ワインです。
この州のDOP(DOCG)ワインは二つだけで、どちらも白ワイン。
それも、遅摘みや陰干しによって糖度を高めた上でバリック(Barrique)で長期間の熟成を経る濃厚なタイプとなっています。
どちらもイタリア土着の非常に古いブドウ品種を使用し、中世以前から高い評価で知られた伝統あるワインです。

 もうひとつの特徴として、この州では栽培されているブドウの品種がバラエティ豊かであることが挙げられます。
もともとヨーロッパ東部との陸路やアドリア海の要所として栄えていた地域だけあって、ブドウも多種多様な品種が植えられており、方向性やタイプも様々。
海外から入ってきた、イタリア土着ではないブドウも珍しくなく、DOPワインの産地でも10以上、なかには30以上の品種が栽培されている地域もあるほどです。
オーストリアやドイツ、中東風の料理に合ったワインが多いのも、地理的な要因や歴史的な背景を良く表しているといえるでしょう。