ラインヘッセン ドイツのワイン産地13

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位置

 ドイツ南西部の主要産地が密集する地域のほぼ中央、ライン川が大きく東へ蛇行しまた南東へ向き直るほぼ直角の方向転換によって区切られた四角い地域です。
西側でナーエ(Nahe)、南でファルツ(Pfalz)と接し、北と東側はライン川が境界になっています。

テロワール

 川の流域から離れる中心部は全体的になだらかな丘陵地帯が広がる平地が主な地形となっており、機械化も進んでラインヘッセンのワイン生産量を底上げする役割を持つ地域です。
ライン川流域は水面に向かって下る急な斜面になっている部分が多く、水はけの良さと日照の確保に加えて、水面からの照り返しを利用してより熟成度の高いブドウを育てることのできる畑となっています。
気候にも恵まれており、ドイツ全体の中でも比較的温暖なで、年間の日照時間は1700時間を越えます。
また、降水量も少ないため、果汁の熟成と濃縮が期待できます。
地質は黄土層に石灰岩と砂岩の混じった微粒砂土がメインで、他に珪質岩や斑岩、火山性土壌、鉄分を多く含んだ粘板岩(ロートリーゲント)などもあり、この地質の多彩さがそのままワインのバリエーションの豊富さにも反映されています。

ワイン造り

 ラインヘッセンはドイツの13あるアンバウゲビート(Anbaugebiete)の中でも、栽培面積、生産量共に第一位となっています。
栽培面積は26516ヘクタール(約265.1平方キロメートル)、ワイン生産量は約26.1万キロリットルです。
ベライヒ(Bereich)は3つあり、グロースラーゲ(Groslage)は24、アインツェルラーゲ(Einzellage)は432にものぼります。
栽培されている主なブドウ品種は、白ブドウはミュラー・トゥルガウ(Muller Thurgau)、黒ブドウはドルンフェンダー(Dornfelder)。
そのほか、リースリング(Riesling)、シルヴァーナー(Silvaner)、ポルトギーザー(Portugieser)、シュペートブルグンダー(Spätburgunder、=ピノ・ノワール)も栽培されています。
古くからシルヴァーナーの栽培が盛んで、地域的に見るとその栽培面積は世界最大となっています。
ただ、すでに主なブドウ品種がミュラー・トゥルガウになっていることからも分かるように、近年ではあまり重視されなくなってきており、栽培面積も(まだ約24平方キロメートルもの面積がありますが、それでも)縮小傾向にあるようです。
赤ワイン:白ワインの比率は、約31:69です。
赤ワイン比率がドイツ全体の平均からすると高いほうで、ドルンフェンダーの栽培面積はドイツ最大となっています。

ベライヒ(Bereich)

ビンゲン(Bingen)

 ラインヘッセンの西側に当たる地区です。
北側がライン川に接し、西でナーエ川に接近しています。
ライン川付近の産地は「ラインフロント(ラインテラス)」と呼ばれ、高品質なワインの生産地として国内のみならず海外でも良く知られています。
赤ワイン、白ワイン共に生産されていますが、カール大帝の居城があったことでも知られる北東のインゲルハイム(Ingelheim)はドイツでも有数の赤ワインの産地で、「赤ワインの街」と呼ばれることもあります。

ニーアシュタイン(Nierstein)

 ラインヘッセンの北東部に当たる地区です。
南から流れてきたライン川が西に90度流れを変えるあたり、流れの左岸側を指します。
ビンゲンと同じくラインフロントと呼ばれるライン川付近の名産地をいくつも抱えており、著名なものには、オッペンハイム(Oppenheim)、ニーアシュタイン(Nierstein)、ナッケンハイム(Nackenheim)、ディーンハイム(Dienheim)などがあります。
ライン川沿いの斜面は赤い粘板岩(ロートリーゲント)と呼ばれる土壌が広がっている地域が多く、鉄分とミネラルを含んだしっかりとした白ブドウの産地となっています。

ヴォンネガウ(Wonnegau)

 ラインヘッセンの南東部にあたる地域です。
東側でライン川に接しますが、どちらかというと川から離れた地域の方が大きくなっており、南側でファルツに接しています。
ライン川近くには古代ローマ時代から栄えたヴォルムス(Worms)の街があり、ここは現在ラインヘッセンだけでなくファルツやナーエ、ラインガウといった周辺地域でも広く造られているドイツでもっとも有名な甘口白ワインのひとつ、「リープフラウミルヒ(Liebfrauenmilch/聖母の乳)」の発祥の地とされています。
それ以外のワインも繊細な白ワインが多く、「ダーメン・ヴァイン(淑女のワイン)」と称されることもあります。