ザーレ・ウンストルート ドイツのワイン産地3

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位置

 ドイツの北東部、ザーレ川の流域に点在する産地です。
ドイツの主要なワイン産地が固まっている南西の地域から大きくはずれており、かつては旧東ドイツに属していました。
13のアンバウゲビート(Anbaugebiete)の中で、もっとも北(北緯51度)に位置する地域となっています。

テロワール

 大陸性の寒暖差の激しい気候帯に属し、霜害や厳しい冬に対処する必要のある地域です。
ただ、高緯度地域であり年間降水量も少ないため、日照時間は年間1600時間と比較的長く、川面からの照り返しや明け方の霧などによってブドウの栽培が可能になっています。
土壌は雑色砂岩やムッシェルカルク(Muschelkalk)と呼ばれる貝殻を主成分とする石灰岩がメインで、少ない降水量でもブドウの樹をしっかり育む保水性を持っています。
また、銅を含有した粘板岩地質の珍しい畑もあり、こちらは保水性のほかに蓄熱性にも優れています。

ワイン造り

 厳しい気候条件を持つため、ブドウが育つ土地が限られてしまい、栽培面積もそう多くはありません。
栽培面積は765ヘクタール(約7.6平方キロメートル)、ワイン生産量は約0.3万キロリットルほどです。
ベライヒ(Bereich)は3つで、グロースラーゲ(Groslage)は4、アインツェルラーゲ(Einzellage)は39とかなり少なくなっています。
主なブドウ品種は、白ブドウはミュラー・トゥルガウ(Muller Thurgau)、黒ブドウはドルンフェンダー(Dornfelder)。
そのほか、ヴァイスブルグンダー(Weißburgunder=ピノ・ブラン)、リースリング(Riesling)、シルヴァーナー(Silvaner)、ポルトギーザー(Portugieser)なども栽培されています。
テロワール的に赤ワインにはあまり適しておらず、赤ワイン:白ワインの比率は、約26:74となっています。
ワイン造りの歴史は非常に古く、11世紀にシトー派の修道士によって始められたとされています。
伝統的に辛口の白ワインが造られていますが、東西ドイツ統一以降は市場のニーズに合わせたワイン造りも行われるようになり、現在は30種類以上の品種が栽培されています。
厳しい気候も醸造技術や設備の近代化によって克服できるようになってきており、温暖化の影響もあって栽培面積自体は拡大傾向にあります。
スパークリングワインのゼクト(Sekt)も良く知られた名物のひとつです。

ベライヒ(Bereich)

チューリンゲン(Thüringen)

 主要都市のひとつであるワイマール(Weimar)の東側、ザーレ川上流域に位置する地区です。
ザーレ・ウンストルートの三つのベライヒのうち、もっとも南側でもっとも栽培面積が少ない地域となっています。
黄土や石灰質土壌がメインで、軽い飲み口の白ワインが生産されています。

シュロス・ノイエンブルク(Schloss Neuenburg)

 ザーレ川の下流、ハレ(Halle)の西側の地区です。
ザーレ・ウンストルートの三つのベライヒのうち、もっとも北に飛び地のように位置しています。
川沿いではなく湖の恩恵を受けてブドウが栽培されていますが、生産量の少なさから日本ではほぼ見ることはありません。

マンスフェルダー・ゼーン(Mansfeder Seen)

 ザーレ川とその支流であるウンストルート川の流域に広がる地区です。
三つのベライヒのうち、もっとも広い栽培面積を持つため、生産量も多くなっています。
全体的に軽口のワインが主流ですが、ミクロクリマに恵まれ熟成度を上げられる畑ではコクのあるタイプのワインが見られることも。
二つの川の合流地点付近にあるナウムブルク(Naumburg)では、旧東ドイツ時代からスパークリングワインのゼクト(Sekt)が有名で、この地域ではもっとも知名度の高いワインのひとつとなっています。