ワインの飲み頃はいつなの? タイプ別おいしいタイミングの見分け方

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近所の酒屋さんやスーパーで買ったお気軽なテーブルワインならともかく、ちょっと奮発して専門店で買ってきた有名シャトーのワインや、自分では買わないレベルの本格的な頂き物ワイン、すでに数十年の瓶熟成を経ているヴィンテージワインなどは、「このワインはいつ開けたらいいのだろう」と悩んでしまうケースもあるのではないでしょうか。
記念日やお祝いなどワインの状態によらないケースは除くとして、ワインを開けるべきタイミングとはいつなのか。
ここでは、ワインのおいしいタイミングについて考えてみましょう。

過半数のワインはすぐに飲むべき

バブル期にワインブームを経験している日本では、どんなワインでも寝かせておくもの、という認識が一般的になっていますが、これは誤解です。
むしろ、ある調査によればワインの7割以上が購入後すぐに飲まれているというデータもあり、寝かせておくワインのほうが少数派であるともいえます。

スクリューキャップのワイン

実際、スーパーやコンビニはもちろん、専門店などでも数千円で手に入るような安価なワインの場合、そもそも長期間の熟成を想定してないものが多いようです。
その代表格が「スクリューキャップのワイン」です。
近年のスクリューキャップは一般的なコルクよりも機密性が高く、熟成に必要な微量の酸素の供給が行われません。
そのため、10年を超えるような熟成を想定しているワインボトルの栓としては使用されないのです。
逆に、ワインと栓が触れ合っていなくても気密性を保つことができるため、数年以内に開けてしまうワインの栓としては優秀で、近年では特にテーブルワインを中心に普及が進んでいます。
栓を確認してスクリューキャップになっていたら、冷暗所に立てて保管し、あまり寝かせずに飲んでしまったほうがいいでしょう。

早飲み系ワイン

また、使用されているブドウ品種的に、長期間の熟成に向かないものもあります。
一般的には、フルーティなタイプ、酸味が強くて渋味の少ないタイプ、コクのあまりないすっきり系のワインは、早飲み系ワインに属するとされています。
果実味は若いうちに強く、年を追うごとにゆっくりと減衰していくため、フルーティさが特徴のワインを楽しむには若いうちに開けなければなりません。
渋味の元となるポリフェノールは酸化防止の役割を持っているので、渋味の少ないワインを長期間寝かせておくと熟成が進みすぎてしまうことも コクの少ないすっきりタイプのワインは、熟成によってバランスをとるべき複雑味をそもそも持っていないため、長期間熟成するメリットがないともいえます。
これらは製法によっても多少差の出るポイントですが、基本的には造りたいワインの系統に合わせてそれにあった品種のブドウを使用するのが一般的なため、どの品種のブドウを使用しているかで熟成に向くかどうかをある程度見分けることができるのです。
メルローやサンジョヴェーゼ・ピッコロ、ソーヴィニヨン・ブランなどがメインで使用されている場合は、早めに飲んでしまったほうがいいでしょう。
また、マセラシオン・カルボニックなど、熟成にまったく向いていない手法も存在します。
主にこの手法で造られるボジョレー(ボージョレー)・ヌーボーなどは、基本的に数ヶ月以内に飲むことが推奨されています。

長期熟成ワインをチェックするポイント

では、どんなワインでもとりあえず購入直後に飲んでおけば安心なのでしょうか。 いいえ、そうではありません。 数が少なく、平均的に高級なものにはなってきますが、長期間の熟成によってよりおいしくなるワインも確かに存在します。 見分けるためのポイントをチェックしてみましょう。

熟成向きのブドウ品種から造られたワイン

ブドウは品種自体に長期熟成に対する向き不向きがあるため、品種からある程度飲み頃を推定することが可能です。
例えばカベルネ・ソーヴィニヨンやネッビオーロなどはかなり多くのタンニンを持ち、基本的には若い状態ではあまりおいしく飲むことはできません。
適切な熟成環境を用意できるなら、タンニンやアルコールがまろやかさを獲得し、全体のバランスが取れるまで待ったほうが良いでしょう。 逆に、前述のメルローなどが主体のワインは、早めに飲まないと味や香りが損なわれてしまうこともあります。
ブドウの品種ごとの特性をチェックしておくことで、万全とはいかずとも大きなはずれは避けることができるでしょう。
ただし、ピノ・ノワールやテンプラニーリョなど、醸造方法などで特性の変わる品種の場合はこの手法は使えません。

長期熟成を前提とした醸造方法で造られたワイン

ワインの醸造方法についての情報を得られるなら、それも飲み頃を見分ける助けになる可能性があります。
例えば、マール(固形部分)との接触時間を長く取ったり瓶詰め前の樽熟成期間が長いワインは、より多くのタンニンを含有している可能性が高く、長期間の熟成に向いているといえます。
白ワインについては、樽熟成のほかシュル・リーやバトナージュといった手法でも熟成可能期間が長くなります。
これらの製法は、セールスポイントとしてラベルなどに記されている場合もありますが、より確実性を求めるのであればインターネットなどで調べたほうが確実です。 その製品の販売に力を入れているショップや生産者が情報を発信していることもありますし、ある程度名の知れた製品であれば雑誌や情報系サイトの特集記事のなかに見つけられる可能性もあります。

ワインの飲み頃の見分け方

手元にあるワインが熟成向きなのかそうでないのかを判断するもっとも簡単で確実な手段は、購入時にお店の人に聞くことです。
その場合は、もちろん詳しい店員のいる専門店を選びましょう。
できれば貸しワインセラーサービスのある、ソムリエのいるお店であれば万全です。
そのようなお店が近くにない場合、インターネットで検索することである程度調べることもできます。
フランスを中心とした名醸地、特に有名なワインや生産者については、ヴィンテージごとに飲み頃を解説したサイトなども多数あります。
ラベルが現地語である場合は解読する必要がありますが、そのワインが適切に保管された前提でのかなり詳細なポテンシャルを知ることができるでしょう。

ワイン自体は熟成させることができるものだったとしても、それを適切に長期保存できる設備がない場合は、早めに飲んでしまわねばなりません。
ワインは光や温度変化によって劣化してしまう繊細なお酒です。
熟成させるには高温多湿や直射日光を避けるのはもちろん、適温の範囲内での緩やかな温度変化や極微量の酸素を必要とし、人工のものも含めたあらゆる光を嫌います。
コルク栓は常にボトル内のワインと接していなければならず、寝かせた状態で安定して置けるラックも不可欠です。
専門店などで購入してきた場合は、少なくともそれまでは適切に管理されていたと考えられるため、家庭用ワインセラーや専用の保管庫を用意できないなら、あきらめて早いうちに飲んでしまったほうが良いケースも少なくないようです。
それで飲んでみて、もしまだ未熟だと感じるなら、キャラファージュやスワリング、熟成促進グッズなどを利用して熟成度合いを調整すると良いでしょう。

ワインは非常に繊細なお酒なので、手元で寝かせておく期間が長くなればなるほど劣化してしまう可能性は増していきます。
ちょっとした油断でダメになってしまう可能性もありますし、そもそもすでに劣化している、ブショネなど、現時点で良好な状態にある保証もありません。
それでも、適切なタイミングで開けることのできたワインは、そうでない場合に比べて格段においしく飲むことができます。
手に入れたワインについてよく調べ、考え、手間隙をかけるその追求の熱意こそ、おいしいタイミングを計りおいしく味わうための最大のコツと言えるかもしれません。