ワイン現物取引のメリット・デメリット 資産としてのワインその2

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古典的で堅実な手法 ワイン現物投資

 ワインの現物投資とは、すでに販売されている(主にボルドー地区などの高級な)ワインのうち、評判が高くて将来も買い手がつきそうなものを自分で買い付けるか専門業者に購入してもらい、その業者か保管業者に保管料を支払って管理してもらうという投資の手法です。
保管しておいたワインは、将来価格が上がった時点で販売し、その差益から経費を引いたものが利益になります。
古くから存在する投資方法の一種で、ヨーロッパでは(投資の世界でメジャーとはいえないものの)確立したシステムの上で取引が行われています。
近年、中国富裕層が市場に多数参戦したことで価格が高騰、一時過熱状態になりましたが、ここ数年はまた落ち着きを取り戻してきているようです。

他の手法にはない確実性 ワイン現物取資のメリット

 非常に古くからある投資手法なので、選定や購入を代行する業者やしっかりとした設備を持ったレンタルセラー、販売するためのマーケットやオークションなど、仕組みも市場も確立されています。
購入した後は、多少の手数料はかかるものの、基本的に値上がりを待っているだけでよいので、ファンドなどに比べて手間も経費もかかりづらいと言えます。
購入の代行をしてくれる業者は価値の増減に関するデータも把握していますし、保管場所を貸しているセラーは長年のノウハウと実績を持っています。
一度評価が決まってしまえばあとは基本的に価値が下がることがほとんどないワインの取引では、正しく商品を選び、信用された場所で保管し、売る時期を待つことさえできれば(額の多少はあるにせよ)ほぼ確実に儲けを出すことができます。
また、ちゃんとした業者を選べば、万一天災や事故などでワインがダメになってしまっても、保険が利いているので大きな損失にはならないケースが多いようです。
万が一売っても利益が出ない状態まで価格が下がってしまった場合は、あえて売らずに自分で楽しむという手もあります。
しっかりと管理されたワインは熟成を重ねて、すばらしい味わいになっているでしょう。
株価の下落や会社の倒産によって価値が一切なくなってしまうこともある有価証券に比べて、無駄になりにくいというメリットがあるといえます。
もちろん絶対に損が出ないというわけではありませんが、現物投資はワインに関する投資の中では、もっとも安全な手法であるといえるでしょう。

どちらかというと富裕層向け? ワイン現物投資のデメリット

 利益を出しやすく損をしづらいという点で確立された投資先と思われるワイン現物ですが、デメリットがないわけではありません。
一番大きな問題は、利益を得るまでの期間の長さです。
ワインの価格が大きく上昇し始めるのは、よい評価が固まって市場から本数が減っていき、需要と供給のバランスが大きく崩れてきてからです。
できるだけ安価な時期に仕入れるために、販売されはじめてすぐ購入したとすると、十分価格が上昇するまでには十年以上、場合によっては数十年待たねばなりません。
逆に、すでにある程度熟成して価格も上昇しているものを、今後の更なる高騰を期待して購入する場合は、条件さえ合えば短期間で利益を出せるようになるかもしれませんが、一本あたりの差益は小さくなってしまいます。
また、利益を得られるまでにかかる費用も問題です。
将来しっかりと高値で売るためには、確実に買い手がつくものでなければいけませんので、当然ながら適当な安いワインを購入するわけには行きません。
いかに早い段階で仕入れるとはいえ、資産として扱うためには高級なワインをまとまった本数買い入れる必要があります。
保管している間は利益が出ませんが、セラーを継続的に利用する代金は毎年発生します。
そして、実際に売買が成立して利益が出た場合、購入を代行した業者などに手数料を払わねばならなのが普通です。
最終的にはそれでもしっかり利益が出るものですが、こうした諸費用を支えられる資金的な余裕が必要になるのです。

 ワインの現物投資が行われるのはヨーロッパ、それもほとんどがフランスになります。
当然、取引はユーロで行われますので、日本から参加する場合は為替リスクが発生します。
購入時よりも円高が進んでしまうと、ユーロベースでは十分利益が出ていても、円に両替した際に相殺されてしまったり、ひどい場合はマイナスになる可能性もあるのです。
上で述べた手数料のほか、利益分には税金もかかります。
さらに、現代は新しい国や地域で今までにない技術を使用したワイン作りも行われ始めており、古い評価基準に縛られない新しい消費者も増えてきています。
ワインに関する世界情勢が今までにないほど急激に変化しつつあり、専門家でも予想できない動きを見せることもあります。
今後さらに急激な価値観の変動があると、市場の評価基準が変わって価格が下落するリスクも完全には否定できないといえます。