シャンパーニュのワイン造り 特徴、製法など

目次

シャンパンがほとんど

 現在、シャンパーニュ地方で造られているワインは、99%以上が白、そしてそのほとんどがシャンパンです。
シャンパーニュ地方はローマ帝国時代からワイン造りで有名な土地でしたし、シャンパン(というよりスパークリングワイン)が発明されたのは17世紀のことなので、本来はスティルワインを造っていた期間のほうが長いのですが、もはやすっかり追いやられてしまっています。
これは、シャンパンがイギリスやフランスの貴族界で人気を博してから需要が増え続けていること、19世紀には外交や外貨獲得の手段として高級ワインが良く利用されていたこと、スティルワインに比べてブランドが確立しており販売に有利であることなどが理由としてあげられます。
シャンパンは瓶内二次発酵に関する行程でどうしても手間がかかり、ワインが大量生産される時代にはいってもなかなか生産量が上がりませんでした。
それがボトル一本ごとの希少価値を高め、高級ワインとして認識されることでまた需要が伸びるというサイクルで現在の地位を得ていきました。
とはいえ、政治にも利用されるのであればあまりにも手にはいりにくくても困ります。
村や地域(もしかしたら国そのもの)の方針として、スティルワインを造るよりもシャンパンを、となっていったと考えられます。
現在は動瓶(ルミュアージュ)や澱抜き(デゴルジュマン)を自動化する機械もありますし、そもそもシャンパン以外のスパークリングワインもあちこちで造られるようになってきていますが、それでもシャンパンのイメージや需要が下落することはなく、シャンパーニュのワイン醸造を独占し続けています。

ブドウ農家と醸造家が分離している

 ボルドー地方やブルゴーニュ地方では、ブドウ栽培から収穫、醸造、熟成、瓶詰めまでを一貫して行うのが高級銘柄の基本となっていますが、シャンパーニュ地方ではブドウ栽培とワイン醸造は別々の生産者が行うのが一般的です。
そして、「誰が」「どこから買ったブドウで」造るのかによって、以下のように分類されます。

コーペラティヴ・ド・マニピュラン(Cooperative de Manipulant/C.M.)
ブドウ生産者の協同組合で生産し、組合名で販売する。
小規模で自家製造ができない農家などが利用している。
レコルタン・コペラトゥール(Recoltant-Cooperateurt/R.C.)
ブドウ生産者の協同組合で生産し、生産者名で販売する。
いわゆる委託醸造のシャンパン。
件数としてはかなり多いとされる。
ネゴシアン・マニピュラン(Negociant-Manipulant/N.M.)
原料とするブドウの一部、または全部を外部から購入する。
ブドウ栽培を行っていない醸造家や、大規模な企業がこの形態をとることが多い。
低品質な大量生産品、というイメージもなくはないが、歴史あるネゴシアンも多く、特にアッサンブラージュが重要なシャンパン醸造においては逆にアドバンテージとなることも少なくない。
ソシエテ・ド・レコルタン(Societe de Recoltant/S.R.)
ブドウの生産者と醸造家が別ではあるが同系列である場合。
ブドウ農家と醸造家が親族同士だったり、同一企業の系列会社同士というケースが該当する。
一貫生産に近い形で計画や設計を立てやすい。
レコルタン・マニピュラン(Recoltant-Manipulant/R.M.)
自家栽培したブドウを使用して醸造する。
いわゆるドメーヌにかなり近い。
村や畑、区域などを限定した、こだわりのワイン造りを行うケースが多いとされる。
マルク・ダシュトゥール(Marque d’Acheteur/M.A.)
ワインを購入する顧客の要望で醸造される、いわゆるプライベートブランド品。
味わいの設計やラベルデザインなどまで注文されるケースが多く、ラベルには顧客名がはいる。
生産者名は基本的にラベルには載らない。

 以上の情報は、必ずラベルに記載されることになっています。
(ただし、一般的には隅のほうに小さく、アルファベット2文字のほうで書いてあるケースが多いようです)

アッサンブラージュ(調合)

 シャンパン造りにおける重要な特徴のひとつとして、複数の果汁や原酒ワインをブレンドする、アッサンブラージュ(調合)があげられます。
味や香りのデザインはもちろん、天候などによって質の変わるワインを自分のイメージする形に近くなるようにブレンドすることで均質化し、ヴィンテージごと、ボトルごとのブレをなくすための技法で、高名なドン・ペリニョン師が類稀な才能を発揮したとされる分野でもあります。
ブルゴーニュ地方では基本的に単一品種からの醸造を行いますし、ボルドーをはじめとする他の産地でも同じヴィンテージの「果汁」をブレンドするのが一般的な方式です。
他の畑、他の村、貯蔵しておいた他のヴィンテージの原酒ワインまでが調合対象となるシャンパンは、フランスのワインの中でもかなり独特なものであるといえるでしょう。
また、ロゼ・シャンパーニュを造る際にも、このアッサンブラージュ法が使用できます。
より良い色や香りを確認しながら調整できるため、他の地域で造られるスティルワインのロゼよりも有利であるとされています。

 「シャンパン」を名乗る場合、使用するブドウ品種はシャルドネとピノ系のブドウのうち定められた7品種(一般的に使用されるのは3品種)から選ばねばなりません。
基本的にはシャルドネとピノ系のなかから一種類を選んでブレンドすることになりますが、中にはシャルドネだけ、ピノ系だけで造られるものもあります。
白ブドウ、つまりシャルドネだけで造られたものを「ブラン・ド・ブラン(Blanc de Blancs)」、黒ブドウのピノ系品種一種、もしくはブレンドで造られたものを「ブラン・ド・ノワール(Blanc de Noirs)」と言います。