ボルドーのワイン造り 特徴、地名、製法など

目次

アッサンブラージュ(調合)

 ボルドーワインのもっとも大きな特徴のひとつは、2種類以上のブドウを使用し望む特徴を持つように「アッサンブラージュ/調合」を行うことです。
ブルゴーニュやアメリカなどの新世界では、単一のブドウ品種を使用した品種名を冠したワインが主流ですが、ボルドーではほとんど造られていません。
タンニンを多く含むカベルネ・ソーヴィニヨンなどの長期熟成型のブドウに、果実味を添えるメルローなど早飲み型の品種をあわせるのが基本ですが、目指す方向性や特徴はもちろんヴィンテージごとの違いによっても品種やその割合を様々に調整する必要があり、仕上がりは千差万別です。
主要品種の欠点を補う品種を選んだり長所を増幅する組み合わせにするなど、味わいや特徴をデザインできるアッサンブラージュは、テロワールには極力人工的な手を加えないという厳しいルールのあるボルドーワインの造り手にとって、まさに腕の見せ所といえるでしょう。
使用するブドウ品種もAOCによって制限されていることが多いのですが、その制限も「ある品種の割合を最も多くする」「指定された品種から選んで使用する(割合は自由)」など様々。
基本的には(呼称統制制度の本来の目的と同じように)その地域の伝統的なワインの特徴を持つように定められていますが、その中でもクオリティを高めるのはもちろん、他の生産者と差別化を行ったり現代のニーズに沿ったワインとなるよう試行錯誤が行われているのです。

長期間の熟成が前提

 イギリスを中心とした上流社会で愛されてきたボルドーワインは、その資産としての側面もあって基本的に長期間熟成させるようにできています。
瓶詰め後10年で飲み頃になるものはまだ早いほうで、長いものでは何十年、何百年も熟成させて楽しむように設計されているのです。
そのため、他の国や地域に比べてタンニンなどポリフェノールの含有量を多くする傾向があり、カベルネ・ソーヴィニヨンなどタンニン量の多い品種を使用するのはもちろん、皮や種からより多くのポリフェノールを抽出する技術も多数導入されています。
白ワインにおいても、熟成中に滓との接触を多くするシュル・リーやバトナージュを行ったり、ポリフェノールなどが多く移る新樽の比率を高めるなど、保存性や熟成性を持たせる手法が取られています。
タンニン量が多く、香りや味わいの成分がしっかり感じられるようになるまで長い時間がかかるため、ボルドーの特に高級なワインは、若いうちはむしろおいしく感じられないものも多いようです。

シャトーシステム

 ボルドーでは、ブドウの栽培からワインの醸造、熟成、瓶詰めまでを一貫して行う「シャトー」スタイルのワイン造りが主流です。
シャトーは形式的にはブルゴーニュなどの「ドメーヌ」に近いとされていますが、「シャトー(城)」の名前からも分かるように古くからの地主が元となっていることが多く、広大な敷地を持つケースが多いのが特徴です。
ワインの評価や管理もシャトー単位で行われるのですが、建物としての城と同様、所有者や生産者が代わることは珍しくなく、それに合わせてワイン造りの方針や技術も大きく変更になることが少なくありません。
さらに、所有している畑が増減したり、他のシャトーとの間でやり取りされたりすることも多く、使用するブドウの品質が変わってしまうこともあります。
そのため同じシャトー、同じ銘柄のワインでも、時代によってまったく違うワインのようになってしまうこともあり、古い格付けで高評価をつけられたシャトーがそれにふさわしいだけのクオリティを保っていないと批判されたり、逆に十分な品質を持っているにもかかわらず実力で劣るところより「格下」扱いになっているシャトーもあります。
シンプルで分かりやすい反面、「現状どんなワインを造っているか」をチェックしていなければいけない点は、シャトーシステムのデメリットといえるかもしれません。

テロワールを重視

 フランス、ひいてはヨーロッパのワイン造り全体についていえるように、ボルドーでもテロワールを尊重したワイン造りが行われています。
工業的に考えるとできるだけ品質を安定させて、毎年極力同じ品質のワインを造るほうが良いように思えてしまいますが、ヨーロッパ、特にキリスト教圏の人々にとっては、ワインとは土地や気候、その年の気象変化などを正しく写したものであるべきという考えが一般的です。
もちろん、ブドウの果汁からワインへ醸造する過程では、少しでも品質を上げるために様々な工夫がなされていますが、それでもテロワールの特徴を「捻じ曲げて」まで調整するべきではないとされています。
(近年では国や地域、生産者によって手を加えることの是非や程度について考え方が異なるケースもあります)
実際、上位のAOCでは畑に水をまいたり逆にシートなどで雨の影響を調整することは認められないのが一般的で、それらの手法が発覚して格付けやAOCの認定を取り消されるシャトーも珍しくはありません。
特に、時にただの嗜好品を越えて資産として扱われることも少なくないボルドーのワインにとって、ヴィンテージの良し悪しが正しくワインに反映されていることは、地域や生産者によるクオリティの保証と同じく信用を得る上で重要なことであるといえます。