ブルゴーニュの地域データ 位置、歴史、気候など

目次

「ブルゴーニュ」とは

 ワインの歴史は古く、現在フランスと呼ばれている地域でもローマ帝国時代からブドウ栽培とワインの醸造が行われてきました。
そのため、ワインの生産地と現在の行政上の区分が微妙に異なっていることも珍しくはありません。
ブルゴーニュも例に漏れず、地域圏としてとワイン産地としての区分けが異なる名称のひとつです。

 行政区分上のブルゴーニュとは、2017年現在では「ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏」のことを指します。
これは、2016年までのブルゴーニュ地域圏とフランシュ=コンテ地域圏が統合して生まれたもので、コート=ドール県、ニエーヴル県、ソーヌ=エ=ロワール県、ヨンヌ県、ドゥー県、ジュラ県、オート=ソーヌ県、テリトワール・ド・ベルフォール県の8県を含む、かなり大きい区分となります。
では、その地域圏全てが「ブルゴーニュワイン」の生産地として認められるかというと、そうではありません。
ワインの生産地としてのブルゴーニュは、上記に上げた県のうち、コート=ドール県、ソーヌ=エ=ロワール県、ヨンヌ県、そして上記の地域圏からはずれたローヌ県の4県、しかもそのうちの限られた村からなる地区だけです。
それぞれの生産地区名は、ヨンヌ県の「シャブリ/グラン・オーセロワ地区(Chablis/Grand Auxerrois)」、コート=ドール県の「コート・ド・ニュイ地区(Côte de Nuits)」「コート・ド・ボーヌ地区(Côte de Beaune)」、ソーヌ=エ=ロワール県の「コート・シャロネーズ地区(Côte Chalonnaise)」「マコネ地区(Mâconnais)」、そしてローヌ県の「ボジョレー地区(Beaujolais)」です。
シャブリ/グラン・オーセロワ地区だけは北に大きくはずれたところにありますが、他の5地区はほぼ隣接して縦一列に並んでいます。
ブドウの栽培面積は約475平方キロメートル、生産者数は約3800軒という非常に密度の高い一大名醸地です。

ブルゴーニュの歴史

 現在、ブルゴーニュと呼ばれている地域は、5世紀頃には「ブルグンド人」が支配していた地域でした。
このブルグンドという言葉が長い時をかけて変化し、ブルゴーニュという知名になったといわれています。
実際、現代でもドイツ語ではブルゴーニュを「ブルクント(Burgund)」と呼びます。
この土地は古くからブドウの栽培に適した土地として知られ、6~9世紀頃にはキリスト教の修道士たちによってどんどんと開墾されていきました。
特に「シトー派」と呼ばれる宗派の修道士たちは、できうる限り良質な土地を探してブドウを植えるため、時には土をなめて適性を確かめたと伝えられており、これによって人が歩いて回れるような非常に狭いレベルで畑の良し悪しの区分けが進みます。
11世紀頃には、同一の性質・レベルの畑を「クリマ(Climats)」、その中でも特に良質な部分を「クロ(Clos)」という単位で管理するようになりました。
(クリマは本来「天候」「気候」という意味ですが、ブルゴーニュのワインに関してだけは畑の区画の単位として使用されています)
その後、14世紀のブルゴーニュ公国の支配から百年戦争を経て15世紀にフランス領となります。

 17世紀にはいり、ある宮廷医師がルイ14世にブルゴーニュのワインを処方したことから、フランス貴族の間でブルゴーニュワインのブームが起こり、良質なクリマの争奪戦が起こります。
その中でも最も有名なものは、ルイ15世の公妾として権力を振るったポンパドゥール夫人と、コンティ公ルイ・フランソワ1世の争いでしょう。
それ以前から政治的な対立のあった2人の争奪戦は熾烈を極めましたが、最終的にはルイ・フランソワの勝利に終わります。
その最上級の畑は彼の名をつけられ、現在でも「ロマネ・コンティ」と呼ばれています。

 18世紀末、フランスでは市民革命がおこり、貴族やキリスト教会の所有している土地や建物はそのほとんどが没収されてしまいました。
修道院が開墾し貴族が所有していたブルゴーニュの畑も例外ではありませんでしたが、その頃にはブルゴーニュの詳細な区分けやそれによって生み出される素晴らしいワインについてよく知られていたため、新政府はクリマが台無しになってしまわないよう、できるだけ大きな単位で競売にかけるという方法をとります。
これは一先ずうまくいき、一般市民がその財力に応じたサイズまで細分化した畑を買うのではなく、銀行や実業家などがある程度もとの区分けのまま新しい所有者としてブドウ畑を運営することになりました。
しかしその後、経営の悪化から土地を切り売りしたり、相続によって所有権を分割するケースが多発。
現在では10haそこそこのクリマを20~30人で分割所有していることも珍しくありません。
ただ、幸いにもそれまでの間にブルゴーニュワインの名声が広く知れ渡ったことにより、現在でもほとんどの所有者が秩序を乱すことなく、畑を尊重した「ブルゴーニュらしい」ワイン造りを行っています。

ブルゴーニュを取り巻く自然環境

 ブルゴーニュは南北に長い地域で、北と南では微妙に異なる気候を持っています。
北のはずれに飛び地のように存在するシャブリ/グラン・オーセロワ地区はやや湿気が多く、南の端にありブルゴーニュ全体の1/2を占めるボジョレー地区(Beaujolais)は気温の高い地域です。
しかし、全体的に見れば、日照時間が長い割に平均気温は高すぎず、収穫期には降水量が少なくなり乾燥した風の吹くブルゴーニュ地方は、ブドウ栽培のための良い気候条件が揃っている地域であるといえるでしょう。
修道士たちが文字通りなめるようにして吟味した地質については言うまでもありません。
優れた醸造家たちがこうした素晴らしいテロワールの特徴を写しとることに全力を注いでいるのですから、ブルゴーニュのワインが「ワインの王」と呼ばれているのも不思議なことではないと言えるでしょう。