モーゼル ドイツのワイン産地11

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位置

 ドイツでもっとも西側にあたる地域、ライン川支流のモーゼル川両岸に広がる産地です。
ナーエ(Nahe)の北西、アール(Ahr)の南に位置し、東側はミッテルライン(Mittelrhein)、西端はフランス国境をわずかにはずしてルクセンブルク国境に接しています。

テロワール

 北東へ流れる間にひたすら複雑な蛇行を繰り返すモーゼル川の斜面を利用して畑が作られており、地理的に近い畑でも大きく異なるミクロクリマを持つ地域です。
優良とされる畑の多くは南向きの斜面に作られていますが、川の蛇行や流れ込む支流のおかげでその数も通常より多くなります。
南西から北東まで150km近くのびる細長い地域であるため、地質も一定ではなくバラエティに富んでいますが、特にムッシェルカルク(Muschelkalk=貝殻石灰)やコイパー(Keuper=泥土岩)、そしてシーファー(Schiefer)と呼ばれる粘板岩が特徴的です。
川沿いの畑はどの地域でも斜面になるものですが、モーゼルの斜面は特に急勾配になっていることで有名で、中部にあるブレマー・カルモントという畑は勾配率67%という世界でももっとも勾配のきついブドウ畑となっています。
平均気温は南のアンバウゲビート(Anbaugebiete)に比べるとそれ程高くはありませんが、高緯度地域なので日照時間が長いこと、川からの照り返しや熱の放射によって冷え込みが抑制されることなどから、ブドウを十分熟成させることができます。

ワイン造り

 ドイツでも最も古いワイン造りの歴史を持つ地域のひとつで、南西の都市トリーア(Trier)はローマ帝国時代から大いに栄えたと言われています。
ブドウ栽培面積は8765ヘクタール(約87.7平方キロメートル)で、ワイン生産量は約12.8万キロリットルです。
ベライヒ(Bereich)は6つで、グロースラーゲ(Groslage)は19、アインツェルラーゲ(Einzellage)はなんと524を数えます。
主なブドウ品種は、白ブドウはリースリング(Riesling)、黒ブドウはシュペートブルグンダー(Spätburgunder、=ピノ・ノワール)。
そのほか、ミュラー・トゥルガウ(Muller Thurgau)、エルプリング、ケルナー(Kerner)なども栽培されています。
特にリースリングの栽培面積が非常に大きく、全体の60%を超えています。
国際的にも著名な生産者やワインがいくつもあり、知名度的にも本質的にもドイツを代表する白ワインの産地です。
実際、赤ワインの生産が盛んになってきている近年でも圧倒的に白ワインの方が多く、赤ワイン:白ワインの比率は、約10:90となっています。
全体的にはっきりとした酸と強いミネラル感が特徴で、同じく重要な白ワイン産地であるラインガウ(Rheingau)と対比されることも少なくありません。
スパークリングワインや遅摘みブドウを使用したワインも有名です。

ベライヒ(Bereich)

ブルク・コッヘム(Burg Cohem)

 モーゼルのベライヒの中でもっとも北側、モーゼル川とライン川が合流するあたりからモーゼルに含まれる地域の1/3くらいまでの地区です。
石英や石灰を含む粘土質の土壌で、どちらかというと平凡な産地とみなされることが多いのですが、フレッシュで気取らない、日常使いのワインとして親しまれてもいます。
黒猫が飛び乗った樽のワインが一番おいしかったというエピソードをもとに名付けられ、ラベルやボトルに黒猫をあしらったワインとして有名な「ツェラー・シュヴァルツ・カッツ(Zeller Sckwarze Katz)」を生み出す畑もこのベライヒに属しています。

ベルンカステル(Bernkastel)

 ブルク・コッヘムより上流、モーゼルのほぼ中央1/3ほどを占める地区です。
位置的な意味だけでなく、生産者の多さや知名度から見てもモーゼルの中心的地域で、古くからその名の知られた著名な畑や生産者が多く属しています。
シーファーの土壌は痩せていて雨水を浸透させづらいため、ブドウの樹の根を深くまで伸ばさせる効果があり、この地区のワインに強いミネラル感を与えています。
白ワインが圧倒的に多く、リースリングの主要産地のひとつとして数えられます。
勾配率67%という、世界でもっともきつい斜面のブドウ畑、ブレマー・カルモントもこのベライヒにあります。

ルーヴァータール(Ruwertal)

 ベルンカステルの南端から南側、トーリアの東に位置する地区です。
ルーヴァー川の流域に広がる産地で、この周辺ではめずらしくどっしりと無骨な雰囲気のあるワインを生み出します。
著名な醸造所も多い、主要地域のひとつです。

ザール(Saar)

 モーゼル川の支流、ザール川の流域に広がる地区です。
主要都市トーリアの南に位置し、シーファーの風化土壌を持つ急斜面の畑が川沿いに連なっています。
モーゼルのベライヒの中でも特にバランスの取れた優良なワインが多く産出される地域で、果実味と酸が印象的なきりっと引き締まった味わいがすばらしく、「白ワインの女王」と賞賛されるものもあります。
使用品種は主にリースリングですが、ケルナーなど他の白ブドウ品種を使用する生産者も増えてきているようです。

オーバーモーゼル(Obermosel)

 モーゼル川の上流に位置し、ザール川との合流地点辺りから上流の町ネニング(Nenning)周辺までの地区です。
他のベライヒと異なり、この地域で主流となるブドウ品種はローマ帝国時代からの古い歴史を持つ土着品種エルプリング(Elbling)です。
早熟で寒冷地での栽培に適しており、かなり強い酸味を有したブドウです。
そのまま辛口の白ワインに使用されることもありますが、どちらかというとドイツのスパークリングワインであるゼクト(Sekt)の原料としてのほうが有名です。

モーゼルトール(Moseltor)

 モーゼル川に沿って展開する6つのベライヒの中でもっとも上流に位置する地区です。
その分標高も高く気候もかなり寒冷寄りになるため、伝統的にはスティルワインよりもスパークリングワインやアイスヴァインの生産で知られた地域でした。
近年では栽培面積も縮小され、全体的に影が薄くなってきています。