イタリアの主要な黒ブドウ品種 赤ワイン用ブドウその2

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サンジョヴェーゼ(Sangiovese)

 現在イタリアで最も多く生産されている、赤ワイン用ブドウ品種です。
トスカーナ州とエミリア・ロマーニャ州を中心に、イタリア全土で栽培されており、「イタリアを代表する品種」と表現されることの多い品種です。
チリエジョーロとカラブレーゼ・モンテヌオヴォを親(もしくは先祖)に持つとされ、少なくとも18世紀より前からトスカーナ州で広く知られるブドウでした。
現在は多数の亜種が知られており、イタリアだけでも15以上の種類が認められています。
有名なものとしては、トスカーナ州のブルネッロ・ディ・モンタルチーノ地区で栽培されている「サンジョヴェーゼ・グロッソ」と、同じくトスカーナ州キャンティ地区の「サンジョヴェーゼ・ピッコロ」があげられます。
サンジョヴェーゼ・グロッソは、大粒で皮が厚く、タンニンも酸味も濃厚なフルボディのワインに仕上がります。
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを名乗る場合は、このサンジョヴェーゼ・グロッソを100%使用している必要があります。
それに対してサンジョヴェーゼ・ピッコロは小粒で、輪郭のはっきりとした酸味とやや青っぽい香りを持っており、味わいはしっかりとしつつもするすると飲めてしまうような飲みやすさが特徴です。
さらに面白いことに、キャンティでは長年サンジョヴェーゼを100%使用してはいけないことになっていて、少なくとも10%以上、別の品種をブレンドしなければいけませんでした。 (現在は法律が改正されて100%も認められるようになりました)
基本的にはイタリアの伝統的品種をブレンドしますが、近年の法律改正でカベルネ・ソーヴィニヨンを一定割合ブレンドしてもよいということになり、また新しい味わいが生み出されつつあります。
テーブルワインから最高級品まで様々に利用されているサンジョヴェーゼですが、どんな土地でも適応する順応性と醸造によって印象を大きく変える性質から、イタリア以外でも広く栽培されるようになっており、イタリア土着の品種の中ではほぼ唯一国際的な品種とされています。

バルベーラ(Barbera)

 ピエモンテ州モンフェッラートを原産とする、赤ワイン用ブドウ品種です。
イタリア全土で広く栽培されており、黒ブドウとしてはサンジョヴェーゼに次いで第2位の生産量を誇ります。
はっきりとした酸味が特徴で、完熟させてから収穫できれば軽めから重厚タイプまで様々なタイプのワインに適応することができます。
タンニンが少なめなので、普通に醸造するとフルボディを好む人にとってはちょっと物足りない感じになりますが、水をしっかり切って収穫量を制限し、かつ樽熟成の期間を長く取ることでたっぷりとしたボディに仕立てることも可能です。
ある種のウイルス系の病害で「紅く」紅葉することが知られており、そうなると光合成が必要な段階まで続かないことから熟成が止まってしまい、薄くぼんやりした印象の果汁になってしまいます。
ピエモンテ州のアルバ地区やアスティ地区が有名ですが、現在はアメリカやアルゼンチンでも盛んに栽培されています。

ネッビオーロ(Nebbiolo)

 イタリアの最高級ワインといわれるバローロとバルバレスコの原料となる、非常に重要な赤ワイン用ブドウ品種です。
しかし、栽培方法や環境条件が非常に厳しく、どの産地でも大量生産のできない品種としても有名です。
強い酸味とタンニンを特徴としており、若いうちはバランスが取れていないものが多く、相応の熟成を待たねばなりませんが、時間の経過とともに複雑で繊細な数々のニュアンスを獲得して深い味わいを見せるようになります。
品種名は、「ネッビオ(霧)」に由来しているとされ、遅熟で霧が立ち込める10月頃にようやく完熟すること、もしくは果皮表面につく多量の蝋粉が霧のように見えることから名づけられたといわれています。
フランスやアメリカ、オーストラリアなどに移植しようという試みが長年続けられていますが、いまのところ目覚しい成果は出ておらず、まだしばらくはピエモンテ州の一部でだけ作られる貴重な品種であり続けるとおもわれます。

ブラケット(Brachetto)

 古くはローマ時代から利用されていたとされる、非常に長い歴史を持つ赤ワイン用ブドウ品種です。
主にピエモンテ州で栽培されており、「赤いスパークリングワイン」であるブラケット・ダックィの原料として使用されます。
水はけのよい土地を好み、バラやスミレのような華やかな香りが特徴となっています。

モンテプルチャーノ(Montepulciano)

 トスカーナ州の同名の町が原産地とされている、赤ワイン用ブドウ品種です。
現在は主にイタリア中央部のアブルッツォ州で生産されており、水のように飲める超軽口のものから、長期間の熟成にも耐えうる高級品まで、様々な性質・ランクのワインになります。
タンニンは柔らかで刺激的な当たりはなく、ミディアムボディの名品では、アーモンドや桑の実、アンズのニュアンスを感じられる、優しくてたっぷりした旨みが楽しめます。