メルロー 世界的に主要な赤ワイン用ブドウその3

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メルローとは

 カベルネ・ソーヴィニヨンと並んで、ボルドーの偉大なワインの原料となる品種です。
性質も性格も相方のカベルネ・ソーヴィニヨンとは真逆で、粘土質などの保水力のある土地を好み、ふくよかな果実味となめらかな酒質を特徴とします。
カベルネ・ソーヴィニヨンとは互いの欠点を補い合うような相性のよさで、多くの畑では斜面上部の砂利質の土地でカベルネ・ソーヴィニヨンを、その下の粘土質気味な土地でメルローを栽培する、合理的な方式を取っています。
しかし、大きな川沿いに存在するボルドー地区では、メルローの栽培に適した粘土質の土地のほうが豊富にあるため、地区全体の作付け面積でいえばメルローはカベルネ・ソーヴィニヨンの倍以上になっており、フランス全土で見ても黒ブドウの中でメルローが最も多く栽培されています。

 単体で使用すると長期熟成には比較的向かないため、実はかつてはあまり注目される品種ではありませんでした。
しかし、アメリカの一流レストランのシェフが、メルロー100%で造られたあるワインを大いに気に入り、顧客である著名人に熱心に勧めたことからブームになり、一躍脚光を浴びるようになったのです。
現在は、適合する畑の面積が圧倒的に広いこともあり、メルロー主体のワインも数多く造られています。
果皮が薄くて大粒の果粒をつけるため、タンニンの少ない、若いうちから楽しめるワインになります。

世界のメルロー

フランス

 単体ではあまり目立たないメルローですが、実はフランス全土ではカベルネ・ソーヴィニヨンの倍以上の面積で栽培されている、もっともメジャーな品種です。
基本的に早熟型で長期熟成に向かないため、話題には上りづらいようです。
ただ実際には、ボルドー地方を中心に、骨太でがっしりとした力強さはあるものの肉付きに欠けるカベルネ・ソーヴィニヨンに、柔らかくたっぷりとした果実味を添える名補助役として、なくてはならない存在として重宝されています。
また、数は少ないのですがメルローを100%使用した超高級ワインも造られてはいます。
10年以内の早飲み系が多いメルローにしては珍しく20~30年以上の熟成に耐えるものもあり、しかし熟成が進んでも若いワインのようなフレッシュな果実味を失わないという、素晴らしい特性を見せてくれます。

イタリア

 国内全体で栽培されていますが、特にヴェーネト地方やフリウリ地方でよく見られます。
高級路線というよりは、カベルネ・フランとブレンドしてコストパフォーマンスの良いワインの原料として利用されることが多いようです。
ただし、しっかりと注力して高品質なワインを造っている生産者ももちろんいて、メルロー100%で造られたワインとしては世界レベルでトップクラスであると評価されるものも。
これら、外来種をあえて使って高品質なワインを造ることに成功した製品は、カベルネ・ソーヴィニヨンと同じように「スーパー・タスカン(スーペル・トスカーナ)」と呼ばれています。

日本

 降水量が多く水はけもあまりよくない土地が多い日本では、カベルネ・ソーヴィニヨンよりもメルローの栽培のほうが適しているとされています。
メルローはもともと粘土質のような保水力に富む地質を好み、比較的耐候性も高いとされているからです。
もっとも、それでも限度があるため、日本でのワイン用ブドウ作りはチャレンジに勇気が必要なものであることは間違いありません。
現在、冬場の長くて厳しい寒さを克服した長野県で良質な果実が収穫されるようになってきており、日本を代表する赤ワインのひとつとなっています。
他の品種と同じように、ヨーロッパで栽培されたものよりもやや肉感の薄い、場合によっては少し陰を感じさせるほどの繊細さが特徴です。