その他の国の主要なブドウ品種 白ワイン用ブドウその7

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オーストリア

グリューナー・ヴェルトリーナー(Gruner Veltliner)

 オーストリア固有の品種のうち、最も重要な白ワイン用ブドウ品種です。
オーストリアのワイン用ブドウ作付け面積の1/3以上を占め、基本的には辛口の白ワインになります。
黒こしょうとパイナップルの香りを特徴とし、早飲み用から長期熟成用まで幅広く利用されています。
樹勢が強く、自然に任せるとどんどん枝葉を伸ばして実をつけるので、収穫量は増えますが品質が低下してしまいます。
そのため、特に長期熟成を前提にしたワイン原料とする場合には、しっかりと剪定を行って収穫量を制限する必要があります。

ハンガリー

フルミント(Furmint)

 ハンガリーでもっとも重要な白ワイン用ブドウ品種のひとつです。
フルボディの辛口白ワインの原料となる品種ですが、ボトリティス・シネレア菌におかされやすいため、世界三大貴腐ワインのひとつであるトカイの原料としても有名です。
比較的病害に弱く、急激な低温や霜でも弱ってしまうため、栽培には労力を要する品種でもあるといえます。
蜂蜜や熟したリンゴと表現される独特の香りを持ち、高い酸度と糖度を持つことから、長期熟成に適しています。
樽香との相性もよく、蜂蜜、アーモンド、バターの風味を持った濃厚な味わいに仕上がります。

ハーシュレヴェリュ(Hárslevelű)

 フルミントと同じく、世界三大貴腐ワインのひとつであるトカイの原料となる白ワイン用ブドウ品種です。
最大の生産地もトカイ地方で、貴腐ワインだけでなく上質な白ワインにも使用されます。
フルミントのような強烈な酸はありませんが、上品で繊細な香味を持ち、栽培量の少なさから貴重なブドウとして扱われています。

スイス

シャスラ(Chasselas)

 スイスを代表する白ワイン用ブドウ品種です。
全世界の80%以上がスイスで栽培されており、スイスのワイン用ブドウ作付け面積の15%以上を占めています。
5000年前からナイル川流域で栽培されていたと見られる、「古代種」と呼べるほど古い品種で、スイスでは17世紀にはすでに文献にその名が見られます。
繊細で柔らかい香味を持ち、豊かなミネラル感や複雑ながらストレスにならないやさしい香りが特徴です。
残念ながら、そのほとんどがスイス国内で消費され、輸出されているのはほんのわずかということですが、その滋味あふれる繊細な味わいが和食にぴったりだということで、日本への輸入量は増加しつつあるとのこと。
会席料理やお寿司の席でシャスラを楽しむ、なんて未来もありえるのかもしれませんね。

ルーマニア

バベアスカ・グリ(Babeasca Gri)

 ルーマニアで最も貴重な白ワイン用ブドウ品種とされています。
西暦前から栽培されているとされ、ルーマニア以外では作られていません。
栽培面積が非常に少なく、輸出用はほとんどないのですが、なぜか日本では昔から隠れた人気を持つロングセラー商品がいくつか出回っているようです。
すっきりとした酸味とハーブや柑橘系の香り、複雑な印象が長い余韻を残す個性的な白ワインになります。
てんぷらや川魚の塩焼きなど、日本食にも良く合う品種です。
名前の意味は「灰色の貴婦人」。

タマヨアサ・ロマネアスカ(Tamaioasa Romaneasca)

 含有糖分量が非常に多いことが特徴の白ワイン用ブドウ品種です。
甘口ワインか、もしくは貴腐ワインの原料となります。
熟した洋ナシやジャスミンなどを思わせる深くて複雑な香りを持ち、たっぷりとした果実味と酸味が強い甘さとバランスするため、甘口でもくどくないワインになります。
丁寧に作られた貴腐ワインは十分な糖度と複雑な香味があいまって、長期熟成に耐えるポテンシャルを持ちます。