ロワール地方のワイン造り 特徴、製法など

目次

石灰質の土壌が育む白ワイン

 ロワール地方のブドウ産地となっている地域の土壌は、基本的に豊富な石灰質に恵まれています。
西側のペイナンテ(Pays Nantais)地区とアンジュー&ソーミュール(Anjou&Saumur)地区では、白亜質石灰岩というチョーク質の石灰岩が豊富に存在し、古くはこの石材だけを使用した家や城も建てられていたほど。
また、南東のサントル&ニヴェルネ(Centre&Nivernais)地区では、貝殻などを主成分とする石灰質土壌が広がっています。
そのため、全体的に白ワインの評価が高くなっており、ペイナンテ地区では「ミュスカデ(Muscadet)」、サントル&ニヴェルネ地区ではソーヴィニヨン・ブランを使用したワインがそれぞれ地域を代表するワインとなっています。

類を見ないレベルの多様性

 ひとつの地方の中でいろいろなワインが造られるのは別に珍しいことではありませんが、ロワール地方の多様性は明らかに他の地域とは一線を画すものとなっています。
ブドウには品種ごとに適するテロワールが決まっているため、通常は同一の地域で栽培品種が似通っていき、タイプも偏りが出てくるものです。
実際、東西に広いロワール地方でも土壌は基本的に石灰質を特徴としており、白ワインの評価が高くなっています。
しかし赤・ロゼワインと白ワインの比率は約45:55でほぼ拮抗しています。
さらに、同タイプのワインで甘口から辛口までの異なる風味を持つものが造られ、同一の地区内でスパークリングワインや貴腐ワインも生産、スパークリングワインのタイプは複数がAOCに認定されているケースがあります。
これは、テロワールごとの適性ももちろんですが、それ以上に多様性に対する需要が高かったことが理由であると考えられます。
ロワール地方、特に中流域のトゥーレーヌ(Touraine)地区周辺は、古くからフランス王室の公領となるなど貴族社会とのかかわりの深い地域でした。
国内外の情勢から他のワイン産地まで十分な支配権が及ばなかった時代には、貴族達からもっとも愛された産地でもあったのです。
そのため、近隣の地区内だけでいろいろな種類のワインを調達したい、という需要も多くなり、もっとも適性のあるタイプだけではなく、色もタイプも風味も異なるバラエティ豊かなワイン造りが行われるようになったと言われています。