サルディーニャ州 南イタリア3

目次

サルデーニャ州(Sardegna)とは

 サルデーニャ州は、イタリア半島の西、フランス領コルシカ島の南に位置するサルデーニャ島と、その周辺の島からなる州です。
イタリアの州の中ではかなり広いほうにはいり、シチリア州、ピエモンテ州に次いで第3位の面積を誇ります。
しかし、古くから様々な勢力の支配を受けてきたことや、農耕に向かない土地が多いこと、位置的に海岸沿いは海賊などの被害を受けやすいことなどから、南イタリアのなかでも特に豊かとはいえない期間の長い地域です。
ブドウ栽培が伝えられたのは非常に早く、紀元前20世紀ころであると言われていますが、ワイン生産が現在のように本格化したのは19世紀にはいってから、近代化によって品質が向上したのはごく最近のことです。
他の南イタリアの地域と同じようにスペインの圧政によって疲弊した歴史を持ちますが、主要なDOPワインに使用されるブドウ品種はその多くがスペイン産、というところからもワイン産業の優先順位の低さが分かります。
ただ、今世紀に入ってからは醸造技術や設備の近代化が急ピッチで進行。
生産量はシチリア州の1/8程度と少ないものの、DOPワインの割合は25%以上とかなり高い水準になっています。
サルデーニャ州の土地は丘陵地が7割近くを占める斜面がちの地形で、農業にはあまり向かない不毛の土地の割合が高くなっています。
海岸近くの平地にはブドウ栽培に適した土地が多く、近年品質が向上しつつあるのも主にそれらの産地です。
気候は地中海性の温暖な気候で、夏場の乾燥が良質なブドウを育ててくれます。

サルデーニャ州のワイン造りに関する歴史

 サルデーニャ島にワイン造りが伝わったのは紀元前20世紀頃、当時地中海を舞台とする海洋交易で栄えたフェニキア人によるとされています。
しかしその後はワイン生産地としてよりも周辺地域に対する貿易や攻防の要として開発され、紀元前3世紀にローマ帝国領となったあとは穀倉地帯として活用されました。
ローマ帝国崩壊後は様々な勢力の支配権争いによって荒廃し、特に沿岸部では歴史ある都市やブドウ畑がいくつも放棄され消滅しています。
居住地の中心は内陸部になり、ワイン生産も発展しないどころか縮小していくことになりました。
西のアラゴン王国が影響力を強めるようになってくると、中央集権的な支配が行われ、文化や産業の発展のスピードはさらに鈍りましたが、沿岸部には見張りの塔が建てられブドウの栽培も再開されます。
現在主要なDOPワインに使用されている品種のうちいくつかはこの時代にスペインから持ち込まれたものです。
歴代の支配勢力の文化とスペインの文化が交じり合い、イタリアの中でも特殊なサルデーニャ風の文化が作り上げられていきました。
18世紀にはいると、短期間のオーストリア時代を経て、将来イタリアを統一することとなるサヴォイア家領となり、サルデーニャ王国が成立します。
しかし、国名こそ「サルデーニャ」とついたものの中心地は大陸側の大都市トリノでした。
結局、イタリア統一の前後ともサルデーニャ島が重視されることはほとんどなく、南イタリアの他の州と同じように近代化の流れから取り残されてしまいます。
しかも、シチリア島やプーリア州のような大量生産的なワイン造りすら行われなかったため、ワイン産業面でも長い間前時代的な状態のままでした。

 サルデーニャ州のワイン造りが他の州と同じ水準まで近代化するのは、第二次世界大戦後しばらく経ってからのことで、イタリアのなかでも特に遅い出発となりました。
しかしその分、「質より量」のワイン造りという悪しき習慣もなく、先行する産地よりも大きな伸びしろを持っているともいえます。
近年はサルデーニャ島の工業化も進んでいるためなにもかも順調とは言えませんが、今後の発展次第では大きく成長する可能性を秘めている地域であると言えるでしょう。

サルデーニャ州のワイン造り

 サルデーニャ州のワイン生産量は、シチリア州の1/7~1/8程度とかなり少なくなっており、あまり存在感があるとは言えません。
しかし、その分DOPワインの比率は25%以上と高くなっています。
これは、他の州でこぞって「質より量」のワイン造りが行われた19~20世紀の間、ワインの生産地としてはほとんど省みられることがなかったためではありますが、生産者の低品質なワインの生産への依存が無いため「量より質」のワイン造りがスムーズに浸透したとされています。
DOPワインのうちDOCG級は1つだけですが、DOC級ワインの数はけして少なくはなく、辛口から甘口、スプマンテ、リクオローソ(アルコール度数が高めのリキュール系ワイン)などバラエティも豊かです。
近年は観光客向けに飲みやすく改良したものも増えてきていますが、独特の風味や香りを持つものが多いとされています。
シチリア州と同じように海産物の豊富な土地柄ではありますが、中東の影響を受け羊肉を良く食べる文化があることから赤ワインの需要も多く、赤ワインと白ワインの生産量はほぼ半々となっています。