アルコールを添加する意味 フォーティファイドワインとはその2

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甘さを引き出すため、だけではない アルコールを添加する二つの意味

 通常のワイン造りでは、酵母が生み出したアルコールによってブドウ果汁内のアルコール濃度が上がり、それによって自然と発酵が止まります。
それに対してフォーティファイドワインは、まだ発酵が終わっていない(製品によっては始まってもいない)タイミングで、40度を超える高い度数のアルコールを加えて強制的に発酵を止めることが最大の特徴となっています。
これにより、果汁内に含まれる糖分が消費しつくされる前に発酵が止まり、糖類添加を伴わない自然な甘さを残したワインになるのです。

 でも、単に甘くしたいだけなら他にいくらでも方法はありますよね。
実はアルコール添加を行う理由は、甘くするため、ではなく、大きく分けて次の二つとされています。

保存性を高める

 フォーティファイドワイン造りで添加されるアルコールは国によって多少の違いがありますが、主にブドウを原料とした中性アルコールや蒸留酒が使用されます。
これはアルコール度数の低いものでも40度前後、高いものではほとんど純粋アルコールに近い95度前後のものが使用され、発酵途中の酵母を一気に死滅させてしまいます。
そのため、できあがりは通常のスティルワインの度数(11~14度)よりもかなり高い度数(18~22度)になり、腐敗や酸化による劣化が起こりにくくなるのです。

 実際、フォーティファイドワインの技術が広まったのは、大きな帆船での航海や貿易が盛んになった大航海時代、数十日にも及ぶ移動とそれに伴う振動や、赤道近くの高温多湿な環境にも耐える、劣化しにくいワインが求められたためだといわれています。
現在では輸送技術や保冷技術、殺菌・密閉に関する技術も大幅に進歩しており、船便で何十日も劣悪な環境化に耐える必要はなくなりましたが、封を切ってもしばらくは酸化も心配せずに置いておける保存性の高さは、いまでもバーやパブ、そして家庭のキッチンで効力を発揮し続けています。

独特のコクや香りを付加する

 発酵を止めるために添加されるアルコールは、ウォッカのようにアルコール度数を高めた中性アルコールが使用されるケースもありますが、ブランデーやマールなどの蒸留酒が使用されることが多くなっています。
これらは、元の蒸留酒が持っていたコクや香りを引き継ぐことになります。

 また、高いアルコール度数を獲得することで、より長期間の熟成に耐えられるようにもなります。
産地によって熟成方法も期間も様々ですが、樽で寝かされたり高温で熟成を行ったり、瓶詰めされてからも何年も寝かされることで、元のワインにはない独特のコクや香りを獲得するようになります。

 これらは通常のスティルワインとして造った場合には得られない、フォーティファイドワイン独自の香味として楽しまれています。