カリフォルニアの地域データ 位置、歴史、気候など

目次

カリフォルニア州

 カリフォルニア州はアメリカ合衆国の太平洋側、いわゆる「西海岸」に位置します。
南北の長さは約1250kmで、日本の本州の直線距離での長さとほぼ同じ。
緯度も日本とおよそ同じ範囲にあるので、北部と南部では北海道と四国ほどの気候の差が発生します。
また、海から吹き込む冷たい風や強い日差し、内陸側の起伏なども複雑に影響し合うため、地図上では近く見えても地域によってまったく異なる気候条件を持っているのが特徴です。
カリフォルニアの主要なワイン産地は、ナパやソノマといった有力産地が固まる北部の「ノース・コースト(North Coast)」、中部海側の「セントラル・コースト(Central Coast)」、中部内陸寄りの「セントラル・ヴァレー(Central Valley)」、やや北寄りでシエラネバダ山脈にかかる「シエラ・フットヒル(Sierra Foothills)」、そして南部に広がる「サウス・コースト(South Coast)」の5地域に分類されます。
ワイン法によるラベルへの表示や基本的な醸造に関する規定はありますが、「伝統的なワイン造り」が定められるほどの歴史が存在しないため、ヨーロッパのような製法や原料に関する呼称統制はまだありません。

カリフォルニア州の歴史

 カリフォルニアにワイン用のブドウ畑が作られたのは18世紀。
ヨーロッパの植民地の例に漏れず、キリスト教の宣教師がミサ用のワインを造るためだったとされています。
東海岸ではヨーロッパブドウは(潜んでいたフィロキセラのため)そのままではうまく育ちませんでしたが、西海岸には当時フィロキセラがいなかったため、問題なく葡萄園とワイナリーを広げていくことができました。
19世紀中頃までには宗教的な目的を離れ商業としてのワイナリーを営む人も現れ、アメリカ西海岸のワイン文化は着実に育っていきます。
同時期にスタートしたゴールドラッシュによる人口の激増も、ワインの需要を大きく伸ばしていきました。
1870年代にはヨーロッパから飛び火したフィロキセラ災害が一部で被害をもたらしましたが、すでに接木による解決策が知られていたため軽微なうちに克服。
シャープ・シューターと呼ばれる害虫によるピアス病というカリフォルニア独特の病害や南北戦争の問題などはありつつも、1900年頃まではカリフォルニアワインにとっての黄金期であったといえます。

 転機が訪れたのは1906年。
北部の大都市サンフランシスコでマグニチュード7.8といわれる巨大な地震が発生。
周辺地に甚大な被害をもたらすと共に、醸造中、貯蔵中のワインの樽や瓶が破損し、年間生産量相当の1億リットル以上の大量のワインを流失させてしまいます。
さらに1919年に施行された悪名高き禁酒法が、ダメージをおったカリフォルニアのワイン業界に致命的な追い討ちをかけました。
ミサ用のワインやブドウの栽培自体は禁止されず、家庭では年間700リットル強までなら醸造が許されるなどの抜け道もありましたが、禁酒法が撤廃されるまでのわずか13年ほどの間に多くのワイナリーが撤退し、スティルワインを飲んでいた顧客層が(闇酒に多かった)蒸留酒などに奪われ、ブドウの樹が食用や低品質な物に植え替えられるなど、西海岸のワイン業界は瀕死の状態にまで陥ってしまいます。

 カリフォルニアワインに回復の兆しが見えるようになったのは、第二次世界大戦後、多くの兵士たちがヨーロッパから帰還した後でした。
それまでも、カリフォルニア大学デービス校にワイン醸造研究所ができたり、ヨーロッパのワイン造りを輸入しようと努力する人々はいましたが、なによりもヨーロッパのワインに慣れた帰還兵たちによる需要の拡大が、再びワイン業界に息を吹き込んだのです。
1960年代には「ブティック・ワイナリー(Boutique Winery)」と呼ばれる小規模で高品質なワイン造りを行うワイナリーがいくつもでき、1970年代にはヨーロッパの複数の有名醸造家やアドバイザー達がカリフォルニアでのワイン造りをサポートしました。
1976年には、パリで開かれた大規模なブラインドでの試飲会で、赤、白ともに(ある記録によれば「冗談で加えていた」はずの)カリフォルニアワインが1位を獲得。
フランスやイタリアの有名ワインも多く参加していた中での快挙だったため、世界的に大きな驚きを与えると共に偏見を拭い去る助けとなりました。
1990年までにはワイン用ブドウの栽培面積も30000haを超え、ここにようやく復興を果たしたのです。
近年では高品質なワイン産地の知名度も高まり、ブランド力や需要の面でも存在感を増してきました。
また、歴史が浅い反面伝統などによる制限がないため、新しい栽培方法や醸造方法にチャレンジしたいヨーロッパの若い生産者が海を渡ってくるようにもなってきています。
西海岸の多様なテロワールの中、現在進行形で世界的な嗜好の変化に対応したワイン造りが行われているのです。

カリフォルニア州の気候環境

 日本と同じくらいの緯度にあることからも分かるように、カリフォルニア州、特にその南部は本来、ヨーロッパよりもかなり厳しい暑さに見舞われる地域です。
しかし、太平洋からの冷たい海風が、激しい気温の上昇を和らげてくれています。
この海風の強弱や緯度、標高の高低差が、カリフォルニア全域のテロワールをバラエティ豊かなものにし、ひとつの州の中でありながらヨーロッパ各国の特徴をそれぞれ持つような個性的なワインを生み出しているのです。
実際、赤、白、ロゼのスティルワインはもちろん、フォーティファイドワインや貴腐ワイン、スパークリングワインなど、およそ見当たらない種類はないほど、様々なワインが造られています。