ワインのラベルには何が書いてある? 読み取りたい基本情報 ラベルの読み方その1

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 ワインの顔とも言うべきラベル。
消費者からすると棚に並んでいる中から購入するボトルを選ぶための唯一の手がかりであり、生産者からすると人々に向けて直接訴えかけることのできる大切なアピールポイントです。
そのため、少しでも目を引くべくデザインされた美しいラベルや、思わず手にとってしまうような芸術的なデザインのものも多く存在します。
初めの頃は、それらの中から目に付いたものをフィーリングで買い求める、いわゆる「ジャケ買い」方式で問題ないかもしれません。
でも、だんだんとワインの味がわかるようになり、好みの方向性が確立してくると、できるだけ好きなタイプのワインを購入したいと思うようになってくるのではないでしょうか。
棚の中から、一定の特徴を持ったワインを捜すとなると、なんとなくで選ぶわけにはいきません。
ラベルに記された情報を読み取り、そのワインがどんな味、香り、ボディなのかを推測し、候補を絞り込んでいく必要があります。
ここでは、ラベルから読み取れるであろうデータと、そこから推測できる方向性について、基本的な考え方を見てみましょう。

ラベルに書いてあること

 ラベルに記載されている情報は多岐に渡りますが、「法律上記載を義務付けられているもの」と「任意で記載しても(しなくても)よいもの」のどちらかに分類されます。
記載が義務付けられている項目は国や地域によって変わりますが、おおよそ以下のようなものになります。

  • ボトルの内容量
  • アルコール度数
  • 等級
  • 産地
  • 添加物
  • 生産者の住所などの情報

 特に、内容量とアルコール度数はだいたいどの国でも表示義務があるようです。
内容量はボトルを見ればだいたい推測できますが、アルコールがあまり得意でない方にとってはアルコール度数は重要な判断材料になります。
各国のワイン法で定められた等級や特別な名称については別のページで詳しく説明しますが、表示に条件があるなど制限されていることが多く、読むことができるようになればかなり有力な情報となり得ます。
産地も大きなヒントですが、大抵は最終的な地名しか載っていない(国名、地域名、地区名、村名のうち、村名だけが載っていて国名から地区名までは省略される)ため、よほど詳しくなってもマイナーな産地だと分からなくなるという問題も。

さらに国や等級によっては以下の情報も記載義務のあるものになります。

  • ブドウの収穫年(ヴィンテージ)
  • 使用しているブドウの品種

 任意で記載しても良い情報については次のようなものがあります。

  • 商標名
  • ワインの色やタイプ(辛口、フルボディなど)
  • 特別な製法について
  • このワインについての物語(ブドウの栽培法、歴史など)

 国によっては、等級の低いものについては製法や歴史の記載が許されていないところも少なくないようです。
収穫年やヴィンテージが任意情報になっているところもあります。
逆にいえば、表示されている情報が少ないということはそれだけ等級が低いワインである可能性が高い、ということです。
(もちろん、等級が高いほうがおいしいとは限りませんが)

好みに近いワインを絞り込むために

 さて、ではこれらの情報からどうやって好みのワインを絞り込んでいけばよいでしょうか。
基本的な考え方としては、大きく分けて二種類のアプローチがあります。

国や地域を限定する

 ワインは国や地域ごとに良いとされる基準が決まっていることが多く、特に等級の高いワインにおいてはその傾向が顕著に出ます。
そのため、気に入ったワインと同じ国や地域のワインは、他の銘柄でも好みに合う可能性が高いといえるのです。
もちろん、同じ地域でも生産者によって考え方も造り方も異なりますし、そもそもブドウ自体がほんの少しの環境の差でまったく違う特徴を持つ可能性のある植物です。
隣り合ったワイナリーでさえ全然違うワインを生産しているなんてことが珍しくないため、国や地域単位では参考程度にしかならないともいえます。
ただ、別の国、別の地域で生産されているものに比べれば、まだ共通する部分がある可能性が高いといえるのではないでしょうか。

 この方式をとる場合、最低限地域名くらいまでは読めなければなりませんが、初心者の場合これが最も大きな難関となるかもしれません。
ワインを生産している国は世界中にあり、使用されている言語も当然一つや二つではありません。
知らない言語で表示されているラベルから地域名を拾うのは、慣れていなければかなり骨の折れる作業といえるでしょう。
最終的にはひとつひとつ覚えていくしかないのですが、もしすでに好みのワインがいくつかあるのであれば、まずはそのワインに表示されている地域名を覚え、それと同じものを探すところから始めてみましょう。
まったく同じものを探すだけなので、まだ難易度が低いはずです。
そしてその作業を続けているうちに、知らないラベル、知らない言語でも、なんとなくどれが地域名なのかが推測できるようになってきます。

ブドウの品種から見る

 現在、ワイン用に栽培されているブドウ品種は、全世界で3000種とも5000種とも言われています。
しかし、生産量の95%以上はその上位100位以内の品種から造られていますし、最初のうちはもっともメジャーな10~20品種ほどを知っていれば、ワイン売り場や飲食店で知っている品種のワインがない、なんてことにはならないはずです。
もちろん、ブドウはわずかな環境の差で味わいの変わる植物ですし、シャルドネのように気候や土壌によってはまったく違う品種のように思えるものも少なくありません。
しかし、同じブドウ品種を原料とするワインだけをいくつも飲んでいくと、異なる個性の中にも共通する部分があることに気付きます。
変化の少ない品種であればその共通部分も大きくなるため、「基本的に好き」な品種を見つけることさえできれば、好みから大きく外れる可能性を少なくすることができるのです。
ある程度慣れてきたら、この地域のこの品種が好き、という風にさらに細分化していくのも有効でしょう。

 では、単一ではなく複数の品種を使用しているワインはどうでしょうか。
これも実際には一つの品種をメインとして、その欠点を補ったり特色を強調するために他の品種をブレンドしているため、主となっている品種さえ特定できれば単一の場合と同じように考えることができます。
また、ブレンドされる品種の中にはメジャーな組み合わせもあるので、単一だといまいちだけど特定の品種とブレンドされたら好き、という評価も有効かもしれません。

 品種で判断する場合、一番の問題は「シノニム」、つまり別名の存在です。
近年開発されたり発見された品種や、長く同一の地域でしか栽培されていなかった品種はいいのですが、古くから各地で栽培されてきたブドウはそれぞれの国や地域で別の名前を持っていることが多く、スペインのテンプラニーリョのように数十のシノニムがある品種さえあります。
これも最終的には、好みの品種のもっとも代表的な名称を覚えたら、合わせていくつかのシノニムも調べておく、という地道な手法で攻略していくしかありません。
ラベルの表記は当然カタカナなどではなく原語表記になっていますので、大変でもそのシノニムが使用されている土地の言葉で覚えるようにしましょう。
最初に読み方を覚え、その音につづりを紐付けるようにすると、比較的覚えやすいようです。

 これ以外の方法としては、「ヴィンテージから追って絞り込む」「表記が許可されている(もしくは義務付けられている)特殊な名称を探す」というものがあります。
これらは、別のページでそれぞれご紹介いたします。