アブルッツォ州 中央イタリア4

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アブルッツォ州(Abruzzo)とは

 アブルッツォ州はイタリア半島の中央部やや南寄り、東側に位置する州です。
マルケ州(Marche)、ラツィオ州(Lazio)、モリーゼ州(Molise)に州境を接し、アドリア海に面しています。
地理的には中央イタリアに分類されますが、長くナポリ王国領だったことなど文化面から南イタリアに含むケースもあります。
西側にアペニン山脈、それも特に険しい部分が張り出してきており、これが他の地域との行き来や産業の発達を阻んできたことから「美と貧困」と形容されることもありました。
山岳地が地形の約65%、丘陵地が35%近くを占めており、平野はほとんどありません。
DOPワインの数が少なく、平均的な品質もあまり高くありませんが、価格が品質を考慮してもかなり手頃で生産量も非常に多いことから、日本での知名度は比較的高いほうであると言えます。

アブルッツォ州のワイン造りに関する歴史

 アブルッツォ州は他のアドリア海に面した州と同じように温暖な気候に恵まれた土地で、ローマが拡大を始めるよりも前、エトルリア人の時代からワイン造りが盛んだった地域のひとつです。
西暦前にはすでにローマによって道路が整備されるなど、重要な地域として扱われていたことがわかっています。
しかし、ローマ帝国が分裂したあとはいくつもの勢力の侵略にあい、大きく衰退していくことになりました。
12世紀にはシチリア王国の支配地域となり、それ以降はイタリアの統一が実現する19世紀まで、中央集権的な体制が続きます。
14世紀頃からはナポリ王国の影響を受けて毛織物産業が発達。
放牧と半年ごとの移住が主流になったため、ブドウ栽培をはじめ農業や漁業なども発展が遅れてしまいます。
ワイン造りが再び熱を取り戻すのは、イタリア統一後、フランスを中心とした大量需要が生じた後です。
もともとテロワールとしてはブドウ栽培に適した土地であった同州では、「質より量」のワイン造りが行われるようになりました。
第二次世界大戦後には他の地域と同じように品質向上が行われるようになりつつありますが、現在でもどちらかというと生産量の面で語られることが多いようです。

アブルッツォ州のワイン造りとテロワール

 アブルッツォ州には、DOCGレベルのDOPワインは2017年現在で「モンテプルチャーノ・ダブルッツォ・コッリーネ・テラマーネ(Montepulciano d'Abruzzo Colline Teramane)」ひとつだけで、赤ワインとなっています。
しかし、DOC級の「モンテプルチャーノ・ダブルッツォ(Montepulciano d'Abruzzo)」と「トレッビアーノ・ダブルッツォ(Trebbiano d'Abruzzo)」の生産量が非常に多いため、DOPワインの生産量ではイタリアの州のうちで第五位となっており、赤ワインと白ワインの比率もおよそ6:4と拮抗しています。
州内のワイン生産地域ほぼ全域を含むこの2つのDOPワインは、その範囲の広さや生産量の多さからも分かるように品質の差が大きく、平均的に見ればあまり良質なワインではないとみなされることが多い銘柄です。
しかし価格面で見ると品質に比べてなお割安なため、気軽に楽しめるDOPワインとして親しまれており、日本でも比較的良く知られたワインとなっています。
また、近年では醸造技術や設備の改良・近代化により品質も上向いてきているとされており、生産者などできちんと選べば価格以上の品に出会える可能性も高くなってきています。