産地によって形が違う! ワイン瓶の種類と意味

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 一本だけでみるとあまり気になることはありませんが、お店などで並んでいるところを見ると、ワインのボトルにも様々な形状があることに気付きます。
ぱっと見た形や背の高さ、見えないところの形状、さらに色や栓の仕方まで見ていくと、もう千差万別と言ってよいほど。
でも、輸送や販売などで流通させる際には、できるだけ同じ形状のほうが合理的なはずです。
なぜ、こんなに色々な特徴を持った瓶があるのでしょうか。
ここでは、ワインボトルの種類と、その特徴を持つ意味について確認してみましょう。

ガラスのワインボトルの歴史

 ガラス瓶の歴史そのものは非常に古く、古代エジプトでは紀元前4000年頃からガラスを使用していたという記録があるそうです。
ただ、この頃のガラスは今のような作りかたではなく、「コア・テクニック」という非常に手間のかかる方式で作られており、宝石のように高価なものでした。
これが長い歴史の間に洗練され、新しい技術開発が進んだ結果安価に量産することができるようになっていきます。
ガラス瓶がワインのボトルとして利用されるようになったのは、17世紀頃。
はじめは今よりも重心の低い、どっしりとしたフォルムのものだったとされています。
しかし、やがてボトルの栓としてコルクが使用されるようになり、長期間の熟成や長距離の輸送が行われるようになってくると、より機能的な形状を求めて、次第に変化していきます。
さらに、各地のワインが出回るようになったことで、ボトルの形状によってどこのワインかがわかるようにあえて特徴的なボトルを使用する地域もでてきました。
いろいろな形が試されながら、数百年という時間をかけて進化、淘汰が進み、現在の形状バリエーションが残ったのです。

代表的なガラスボトルの形状

ボルドー型

 フランス、ボルドー地方で利用されていた形状で、現在最もメジャーなタイプの一つ。
底からまっすぐに本体が立ち上がり、傾斜のきつい肩がついています。
これは長期熟成によってボトル内にたまった澱を肩の部分で止め、グラスに入らないように注ぐための形状です。
また、底部には大きなパントと呼ばれる凹みがあり、これも澱がワイン内に舞い上がってしまうのを防ぐ役割があります。
ボルドー地方以外でもこの形状を採用している生産者も多く、全体的な平均として複雑な香味やしっかりとしたタンニンを特徴とする、長期熟成型のワインに用いられることが多いようです。

ブルゴーニュ型

 フランス、ブルゴーニュ地方で利用されていた形状で、こちらも世界的にメジャーなタイプの一つです。
ボルドータイプよりも肩のスタート位置が低く、なだらかななで肩の形状をしています。
これはボルドー地方のワインと比べてブルゴーニュ地方のワインに澱が少ないからで、底部のパントも小さめになっています。
ボルドー地方のボトルよりも箱詰めした際に空間を埋めやすく、輸送に有利な特徴を持った瓶とされています。
他の地域で採用されている場合も、ブルゴーニュのように果実身の豊かなタイプのワインに使用されることが多く、澱の多くなりがちなタンニンのしっかりしたタイプはあまりないようです。

ライン型(モーゼル型)

 ドイツ、ライン・モーゼル地方で利用されている形状です。
フランスのタイプよりもスリムで背が高いのが特徴で、ブルゴーニュ型よりもさらに肩がなだらかになっています。
ドイツの伝統的な形状ということで白ワインに使用され、パントはないことが多いようです。
どちらかというとすっきりとした、酸味の際立った辛口ワインに使用されます。
色が茶色系だとライン型、薄い緑や青系だとモーゼル型です。

シャンパン型

 フランスのシャンパーニュ地方を中心として、各地のスパークリングワインに使用される形状です。
ボトルの基本の形としてはブルゴーニュ型に近くなっていますが、炭酸の内圧に耐えられるように全体的にガラスが厚く、特殊な形状のコルクを使用し針金でとめておけるように口の部分が膨らんだ形になっています。
多少の形やサイズの差こそあれ、今現在のスパークリングワインは世界のどこでもほとんど同じような形をしていることからも、このタイプの完成度の高さが伺えます。

ボックスボイテル

 ドイツのフランケン地方独特の形状です。
厚みのある円盤に首をつけ、円周の一部を平らにしたような形状をしており、他のボトルタイプとはかなり違った特殊なボトルといえます。
瓶が登場する前にワインを入れるのに使用されていた皮袋を模しているとされ、名称の意味も「山羊の陰嚢」です。
すっきりした辛口のものが多く、日本では「マテウス」のロゼが比較的メジャー。

ペッシェ

 イタリア、マルケ州などで見られる独特の形状です。
底部が広く、そのすぐ上でぎゅっとすぼまり、肩に向けてだんだんと広がっていって、肩から瓶の口までまたすぼまっていくという特殊な形状をしています。
実はマルケ州で広く栽培されているヴェルディッキオという品種のブドウから造られる白ワインが、魚料理にぴったりのワインとして知られており、ボトルも魚をイメージした形状になっているとのこと。
この「魚のように見える」伝統的なフォルムからさらに一歩進めて、本当に魚の形に作ってあるボトルを使用する銘柄も存在するという、遊び心たっぷりのタイプです。

フィアスコ

 イタリア、トスカーナ州のキャンティ地方で使用されている形状。
理科の実験で使用するフラスコのような形をしています。
どっしりとして重心の低いフォルムは、伝統的なワインボトルに近いといえるでしょう。
そのままだと注いだりしづらいため、藁で編んだ持ち手がついています。
生産に手間がかかる上、輸送には向かない形状なので、他の国や地域ではあまりみかけません。

ボトルの色について

 ワインボトル、特に赤ワイン用のボトルにはたいてい黒に近い緑色や茶色などの色がついています。
これは光による劣化を避けるためについている色で、より長期間の熟成を想定しているものほど濃い色がついている瓶を採用する傾向があります。
逆に、あまり長期間熟成させない早飲み系のワインでは、中のワインの色を強調することのできる無色透明な瓶が採用されることが多いようです。
ロゼワインなど、色に特徴のあるワインについても同様です。
また、中には伝統的に使用する色が決まっている地方もあり、例えばブルゴーニュ地方は濃い緑色、ボルドー地方は「赤は濃い緑、辛口の白は薄い緑、甘口の白は無色透明」と種類によって使い分け、ライン地方では琥珀色の瓶を使用することになっています。