その他のフォーティファイドワイン 熟成方法と飲み頃その8

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ヴァン・ド・リキュール(リクール)

 ヴァン・ド・リキュール(リクール)は、発酵前のブドウ果汁にブランデーを添加して作るフォーティファイドワインです。
代表的なものとしては、コニャックを添加するシャラント地方の「ピノー」、アルマニャックを添加するガスコーニュ地方の「フロック」、マールを添加するジュラ地方の「マックヴァン」などがあります。
お酒とブドウのジュースを混ぜて作る、という意味ではカクテルであるとも考えられそうですが、明確に違うものとして扱われています。
ブランデーベースのカクテルとヴァン・ド・リキュールを決定的に隔てているのは、熟成期間の違いです。
カクテルは基本的にその場で混ぜ合わせて提供されます。
それに対して、ヴァン・ド・リキュールはAOCによって規定された熟成期間を経なければいけません。
例えば、コニャックを使用するピノー・デ・シャラントの場合、赤とロゼは最低14ヶ月、白は最低18ヶ月(かつ、いずれも期間中8ヶ月はオーク樽での)熟成が義務付けられます。
さらに長期間樽熟成させると特別な表記が許され、5年以上でVieux(ヴィユー)、10年以上でTres Vieux(トレヴィユー)またはExtra Vieux(エクストラヴィユー)とラベルに入れることができます。
長期間熟成させることで、ブドウ果汁とアルコールがしっかりと馴染み、高いアルコール度数を感じさせないなめらかで柔らかな口当たりのフォーティファイドワインになるのです。

樽熟成をしっかり行った製品は酸化も瓶詰め前に経験しており、フォーティファイドワインの特徴である高アルコールと糖分によって劣化しにくくなっているため、開栓後も長く楽しむことができます。
瓶の空気を抜いて再密栓できるタイプの器具を使用し冷蔵庫などに保管すれば、1年近く楽しめると言われているものさえあるそうです。
ただし、フレッシュな味わいや香りを残すために熟成期間を短めに取っているものもあり(それでも1年以上は熟成させてはありますが)、フォーティファイドワインだからと油断していると、あっという間に風味が劣化してしまう可能性もあるので、同じヴァン・ド・リキュールでもどんなタイプのものか、どれくらいの熟成期間を経ているのかなどはしっかりチェックしたほうが良いでしょう。

マルサラワイン

 イタリアのシチリア島西部で造られるマルサラワインは、ポート、マディラ、シェリーと合わせて世界四大フォーティファイドワインと呼ばれることもある主要なフォーティファイドワインの一種です。
そのまま飲むのはもちろん、ティラミスなどの製菓や料理などにも使用されます。
もともとイギリス商人が自国へ持ち帰るために保存性を高める目的で作ったとされています。
樽での熟成期間によって呼び名が変わり、1年でフィーネ(fine)、2年はスペリオーレ(speriore)、4年がスペリオーレ・レゼルヴァ(speriore riserva)、5年はヴェルジオ(versio)、10年はヴェルジネ・ストラヴェッキオ(vergine stravacchio)となります。
当然、長期間の熟成を経たものの方が劣化は起こりにくくなります。
調理用としても使用されるくらいなので、開栓後も急いで飲む必要はありませんが、特徴でもある複雑な香りを楽しむのであれば、あまり何ヶ月も放置はしないほうが良いでしょう。