ヴュルテンベルク ドイツのワイン産地2

目次

位置

 ドイツの主要なワイン産地が固まっている南西部のうち、中央からやや南東へずれたあたり、ライン川の支流のネッカー川沿いに位置する地域です。
また、飛び地としてバーデン湖の東側の小さな地域も含みます。
西側から北部にかけてバーデン(Baden)、北東にフランケン(Franken)があり、境界を接しています。

テロワール

 ネッカー川を中心に多くの中小河川が流れる地域で、その影響で生まれたミクロクリマが川沿いの畑に影響を及ぼします。
南西側のシュヴァルツヴァルト(Schwarzwald)、いわゆる「黒い森」や、南東側のシュヴェービッシェ・アルプ山地などが強風や多すぎる雨を遮ってくれ、年間平均温度も高めの全体的に温暖な気候ですが、ボーデン湖畔の飛び地部分は夏や冬に厳しい気象条件となることも少なくはなく、その場合は生産量が落ち込むことも。
土壌は砂礫や粘土からなる泥土岩(コイパー)や火山岩がメインで、ムッシェルカルク(Muschelkalk)と呼ばれる貝殻を主成分とする石灰岩も多く見られます。
ボーデン湖畔では氷河が作り出した砕石の堆積層が、水はけを向上し日光を吸収して放熱する役割を果たしています。

ワイン造り

 ブドウの栽培面積は11359ヘクタール(約113.6平方キロメートル)、ワイン生産量は約11.3万キロリットルです。
ベライヒ(Bereich)は6つで、グロースラーゲ(Groslage)は17、アインツェルラーゲ(Einzellage)は210となっています。
主なブドウ品種は、白ブドウはリースリング(Riesling)、黒ブドウはトロリンガー(Trollinger)。
そのほか、シュヴァルツリースリング(Schwarzriesling)、レンベルガー(Lemberger)、シュペートブルグンダー(Spätburgunder、=ピノ・ノワール)なども栽培されています。
ドイツの中ではめずらしく赤ワインの方が多く造られている地域で、特にトロリンガーの栽培面積はダントツでドイツ最多。
川沿いの斜面に作られた畑は、川面からの照り返しや日照、水はけの良さなどミクロクリマも含めて黒ブドウの栽培に適した場所が多く、リースリング以外の主なブドウもほぼ黒ブドウが占めています。
そのため、赤ワイン:白ワインの比率は、約71:29と赤ワインの方が非常に多くなっています。
また、アルコール発酵前に黒ブドウと白ブドウの果汁を混合して造るロゼワイン、「シラーワイン(Schiller Wein)」も有名です。
名の通った産地や生産者、ワインなども少なくないのですが、古くから大酒飲みの地として知られるヴュルテンベルクは、現在でも一人当たりの年間ワイン消費量が40リットルオーバーとドイツ全体の平均の2倍以上を誇り、生産されたワインのほとんどが現地で消費されてしまうため、他の国で見かけることは稀だとされています。

ベライヒ(Bereich)

バイエリッシャー・ボーデンゼー(Bayerischer Bodensee)

 ボーデン湖の東側、飛び地になっている部分に位置する地区です。
バーデンやフランケンに属していた時期もあるベライヒですが、再編によってヴュルテムベルギッシャー・ボーデンゼーと共にヴュルテンベルクに編入されました。

レムステール・シュトゥットガルト(Remstal Stuttgart)

 ネッカー川の流域、ヴュルテンベルク全体の中央よりやや南に位置する地区です。
北にヴュルテムベルギッシュ・ウンターラント、南西にオーバラー・ネッカーがあります。
この地域のもっとも重要な都市のひとつであるシュトゥットガルト(Stuttgart)を取り囲むように産地が広がっています。
石灰質の土壌が広がり、乾燥はしているもののあまり暑くならない夏を特徴とする気候を持ちますが、トロリンガーをはじめとする黒ブドウの栽培面積が非常に多く、赤ワイン比率も70%を超えています。
白ワインも含めて全体的にフルーティなワインが多く、地元消費用の気軽なワインから輸出用の高級ワインまで幅広いグレードの生産が行われています。
重工業も発展している地域で、シュトゥットガルトはメルセデス・ベンツやポルシェなど、ドイツの高級自動車メーカーが本社を置いていることでも有名。
また、11月から開催されるクリスマスマーケットはドイツで2番目に古い歴史を持つことで知られており、ここでは気温が低いなか買い物をする客のために、ハーブ入りのホットワインが販売されます。

ヴュルテムベルギッシュ・ウンターラント(Württembergisch Unterland)

 ネッカー川沿い、ヴュルテンベルクの中央付近に位置します。
この地域の6つのベライヒのなかで最大の面積を持ち、ワインの生産量もダントツで多くなっています。
含まれる産地が多いため地質が多種多様で、黄土や粘板岩などの土壌を持つ畑もあります。
周囲を山地に囲まれた盆地が中心で、夏の気温が比較的高くなるため、ボディのしっかりとしたアルコール度の高い赤ワインを産出しています。
古くから伝統的にお酒好きの人が多い地域とされ、ワインに関しては生産量以上に消費量も多くなっており、自家製ワインを振舞う居酒屋の「ベーゼンヴィルトシャフト(Besenwirtshaft)」が軒を連ねています。

コッハー・ヤクスト・タウバー(Kocher Jagst Tauber)

 ヴュルテンベルクでもっとも北、ネッカー川の支流であるコッハー川とヤークト川の流域に点在する地区です。
同地域の他のベライヒ比べると、温暖ではありつつも平均気温は低めなため、栽培されている品種もトロリンガーやレンベルガーなど早熟な品種の比率が高くなっています。
全生産量に対して赤ワインの割合が高いのはもちろんですが、ヴュルテンベルクの特徴的なロゼワインであるシラーワインもこの地区で造られており、高い人気を誇ります。
生産量は多くはなく、ほとんどが現地のベーゼンヴィルトシャフトなどで飲まれてしまうため、この産地のワインを日本で見かけることは稀でしょう。

オーバラー・ネッカー(Oberer Necker)

 ネッカー川沿いの産地のうち、もっとも上流に位置する地区です。
飛び地になっているボーデン湖畔の地区以外では、もっとも南にあるベライヒでもあります。
20世紀中頃に一度廃れかけた産地で、なんとか復活したものの規模はあまり大きくはありません。
その分、他の地域で中心的な役割を果たしている協同組合がほとんど存在せず、自家醸造が主流となっているため、生産者ごとに大きく性格の異なるワインが見られる地区となっています。
トロリンガー主体の赤ワインはもちろん、シラーワインも造られています。

ヴュルテムベルギッシャー・ボーデンゼー(Württembergischer Bodensee)

 ボーデン湖の東側、飛び地になっている部分に位置する地区です。
バーデンやフランケンに属していた時期もあるベライヒですが、再編によってバイエリッシャー・ボーデンゼーと共にヴュルテンベルクに編入されました。