自分のワイン経験の履歴書 ワインノートはなぜ必要か
ワインノート(もしくはテイスティングノート)とは、飲んだワインを記録していく専用のノートのことです。
自分で情報を書き込んでいくのはもちろん、ラベルそのものを剥がしてコレクションすることも多いため、専用のノートも販売されています。
専用のノートをつける、と言われるとなんだか相当気合の入ったワイン好きのためのもののように感じるかもしれませんが、実際にはワインについて学び始めた初心者にこそおすすめの習慣なのです。
ここでは、ワインノートを付ける意義についていくつか調べてみましょう。
日記のように「ただ記録する」ことの意味
ワインに限らず、人の感じた「印象」というものは、それがたとえどれだけ強烈なものだったとしても、意外なほどあっけなく消えていってしまうものです。
最初のひと口を含んだときに感じた驚きや感動、飲み進めるなかで気付いた意外性や変化など、その時はずっと覚えていられると思った感覚も、時間が経過するごとに不確かになり、同じようなワインの感想と混ざっていってしまいます。
その儚い印象を繋ぎ止めておく意味で、ワインを飲んで感じたことをすぐに記録していくのは重要なことであるといえます。
ワインの情報や感想だけをまとめることで、あとでどこに書いたかわからなくなってしまうという事態も避けられます。
五感に紐づいた記憶は、ひとつの情報をもとにまとめて引き出されるもの。
ページをめくって過去に飲んだワインを思い出すたびに、その日の出来事や思い出も一緒に思い返すことができるでしょう。
レストランなどで飲んで気に入ったワインを、後で自分で購入したくなったときに探しやすいという利点もあります。
勉強のため
ソムリエなどの資格取得を目指しているのか、単に詳しくなりたいだけかに関わらず、ワインについて学ぶなら自分で飲んだワインの情報を蓄積していくことは非常に重要です。
「百聞は一見にしかず」のことわざどおり、ほとんどの人にとって知識として見聞きしただけよりも実際に飲んだほうが圧倒的に多くの情報を得られ、その記憶も強固なものとなります。
テイスティングや保存、熟成に関する技術も、体験してみることで納得度が増すことでしょう。
そして、何度も反復して確認することは学習するうえで不可欠な作業ですが、他者が示した情報よりも自分が経験し納得した事柄の方がはるかに覚えやすいため、優秀な自分だけの参考書として活用できるのです。
また、参考書に名前の挙がるような著名なワインを飲んだ際の感想は、一般的な評価や感覚と自分の感想をすり合わせる際の指標にもなります。
例えば、いくつものテイスティングコメントで「アタックが強い」「刺激的な酸味」と書かれているのに自分ではさほど印象に残らなかったり、逆にコメントに登場しない味や香りの成分を強く感じたとします。
これはどちらが正しいというわけではなく感覚や嗜好の問題なのですが、他者と自分との感覚の違いを認識することで、自分の感じ方とは別に一般的な評価の指標を手に入れられるのです。
これは他者のテイスティングコメントを参照したときに、それを自分の感覚に置き換える際の重要な基準となります。
自分の嗜好を把握
飲んだワインの情報と感想を一緒に書いていくことで、自分の好みの傾向が分かるようになってきます。
自分が好きな国や銘柄くらいは記録しなくても認識しやすいのですが、ボディタイプやブドウ品種ごとの特徴などは生産地や醸造方法によっても変わってきやすいものです。
ブドウの特徴くらいはある程度知識だけでもカバーできますが、ボディのような明確な指標のない部分については自分で評価する以外確実な方法はありません。
ある国のワインの場合はフルボディが一番好みに合うのに、他の国のものだとミディアムボディと表記されているほうがおいしく感じる、というようなことは往々にしてあり、この判断基準は、何十本、何百本ものワインを飲んでその傾向を調べていかなければなかなか認識できません。
自分の好みの傾向を把握しておくことで、まだ飲んだことのない新しいワインにチャレンジする際に、自分にとってのはずれを引く可能性を低くすることができます。
コレクションとして
特に重大な理由がなかったとしても、今までに飲んだワインの記録をつけたりそのラベルを集めるのは楽しい趣味になり得ます。
日を追うごとにページが増えてくのを楽しんでもいいですし、色とりどりで美しいラベルを眺めるのも良いでしょう。
世界には様々なワインが紹介されている本がありますが、自分のワイン暦を振り返ることのできるノートは他にはありません。
習慣として続ければ続けるほど、かけがえのない宝物になっていくはずです。
ワインのコレクションとしては、ラベルのほかにもコルクやミュズレトップなどが一般的です。
これらはノートに貼って保管、とはいきませんので、特に気に入っているものをコレクションボックスなどに入れて飾ります。
本格的にやる場合には、ワインショップなどで専用のものを手に入れてもいいでしょう。