伝統的なものから先進的なものまで ラベルにこめる意味と情熱
ワインの様々な情報が記されているラベル。
「エチケット」とも呼ばれ、そのワインがどんなワインであるかを知るための最大の手がかりとされています。
そこに書かれている内容は別の項目でご説明するとして、ここではラベルの種類について色々な角度から調べてみましょう。
ラベルの種類
ラベルのデザインはそのワインの顔であり、試飲して決めるような特殊な状況でない限り、どのワインを購入するか決めるためのほとんど唯一の手がかりです。
そのためラベルを適当に作っている生産者などほとんどなく、ワインそのものと同じくらいの思いをこめてデザインされているケースも少なくありません。
逆にどんなタイプのラベルかを見れば、どんな人に向けて何に重点を置いて造られたワインかがある程度推測できるともいえます。
様々あるタイプの中から、特に良くある4タイプについて見てみましょう。
伝統的なタイプ
単色のラベルに一色から二色で文字が入っているタイプです。
銘柄や産地などがやや大きく表示され、他に使用されているブドウの品種や生産者名、産地の等級、ヴィンテージなどがデザイン性のあるフォントで表示されています。
また、農場の写実的なイラストが入っている場合もあります。
ブドウ品種や生産地などからどんなワインか推測できるレベルの知識があると、情報量の多い選びやすいラベルなのですが、知識がない状態で見るとほとんど意味がわからないどころか、どれも同じものに見えてしまうことも。
こうしたラベルを使用する生産者は、長い歴史に誇りを持つ格式高いワイナリーであることが多く、ワイン自体も上級者向けのものであるケースが少なくありません。
POPなタイプ
伝統的なものとは逆に、たくさんの色やかわいらしいイラストを使用しているタイプです。
堅苦しくならないようあまりたくさん情報をつめこまず、大きく表示された商品名とブドウ品種、さらに法律上の義務が関係する場合は産地名くらいがわかりやすく書かれているようなものが多いようです。
(等級が低くて法律上あまり色々な情報を載せられないものも多い)
伝統的なラベルのワインは敬遠してしまう人でも、つい手にとってしまうような親しみ安さがありますが、ラベルからはどんなワインであるかがほとんど読み取れないため、飲んでみるまでわからないというデメリットもあります。
ただ、こうしたラベルはもともとあまりワインに詳しくない人向けであることが多いため、あまり大きな問題とはならないようです。
アーティスティックなタイプ
デザイン性を重視したタイプです。
抽象的な図形や複雑で工夫を凝らしたデザインになっており、そもそもラベルの形が四角くないことも少なくありません。
POPなタイプよりは平均的に情報量が多いのですが、それらの情報もデザインの中に組み込まれていてぱっと見では判読できないケースも。
ラベルをじっくり読んで判断するというよりは、眺めていてなんとなく気になるとか、棚の中で目があったとか、フィーリングで決めたい方にぴったりのタイプと言えるでしょう。
ラベルだけでなくワイン自体についても芸術作品のように考えている生産者である可能性が高いため、一筋縄ではいかないちょっと意外性のあるワインに出会えるかもしれません。
売れ行き重視
より多く売ることを主目的としたラベルです。
生産者の意向というよりは、卸業者や小売業者の手で一本でも多く売るための様々な工夫がなされていることが多く、ラベルデザインからどんな思想で造られているワインなのかを推測するのは困難なケースが多いのが特徴です。
ただ、ターゲットを非常に広く取っているため、他のラベルよりも情報は読み取りやすく、ぱっと見の印象も良いものが少なくありません。
スーパーやコンビニエンスストアなど専門店以外のお店では、もっとも目立つタイプのワインといえるかもしれません。
のりの種類
とてもおいしかったワインや思い出のボトルは、飲み終わった後の瓶を捨てるのさえ惜しいと感じることがあります。
また、ラベルのデザインが気に入って買ったワインの場合は、飲んだ後も手元にとっておきたいと思うかもしれません。
しかし、瓶そのものを残しておくと、かなりのスペースを取ってしまううえに、飾るのも分類するのも一苦労です。
そんな時は、ラベルだけをはがして専用のノートなどに貼っておくのはいかがでしょうか。
スペースもかなり節約できますし、ワインの情報も一緒に書き込んでおけば、あとからどんなワインだったかをチェックする資料にもなります。
気に入ったワインのラベルを破ったりせずにはがすため、ワインのラベルに使用されているのりの種類と、そのはがし方についてチェックしましょう。
紙+水溶性ののり
水分を通す紙のラベルが、水溶性ののりで貼られているケースです。
これはようは切手のようなものなので、瓶ごとぬるま湯につけておけば簡単にはがすことができるようになります。
ただし、あまり長いことつけておくとラベルもふにゃふにゃになってしまい、はがすときにぼろぼろになる可能性もありますので注意しましょう。
金属箔(もしくは樹脂)+紙+水溶性ののり
紙の上に金属の薄い層やフィルムのような樹脂が乗っているタイプです。
のりは水で溶けるのですが、紙の表面に耐水性の層があるため、普通にぬるま湯などにつけておいてものりまで水分が届かずうまく溶かすことができません。
この場合は、まずラベルの端に水を含ませた布やティッシュなどを当ててしばらくおき、端の部分だけのりを溶かします。
そして水が染みこんだ部分だけをスクレーパーなどではがし、まだ水が染みていないのりの層に、ラベルの裏側から少しずつ水を当てていきます。
これを繰り返すことで、時間はかかりますがきれいにラベルをはがすことができます。
ラベルをめくった際に折り目をつけてしまったり、ひっぱりすぎて破ってしまうことがないよう気をつけましょう。
紙+非水溶性ののり
表面は普通の紙ですが、水に溶けない種類の接着剤が使用されているタイプです。
これはいくら水につけておいてもはがれることはなく、ラベルがふやけてぼろぼろになってしまう危険性が高まるだけです。
使用されている接着剤が熱で溶けるタイプの場合は、表面からドライヤーやアイロンを当ててあげるだけできれいに剥がし取ることができます。
熱を加える前に、ラベル表面に熱に弱い素材が使われていないかを確認しておきましょう。
ゴム系やシリコン系などの合成接着剤が使用されていたら、簡単に剥がすのはあきらめ、スクレーパーなどで端からこつこつと剥がしていくしかありません。
熱で溶けるタイプの接着剤でも、ラベル表面に熱に弱い素材が使われている場合は同様です。
端から少しずつスクレーパーをもぐりこませ、ラベルと本体を分離していきます。
ラベルに穴を開けてしまったり、引っ張りすぎて破らないよう、慎重に作業を進めるのがコツです。
接着剤の種類によっては、除光液やペンキの薄め液など有機溶剤で溶かすことができるケースもありますが、ラベル表面に悪影響が出る可能性があり、うまくいっても溶剤のにおいが残ってしまうため、使うのは最後の手段と考えた方が良いでしょう。