ワイン対清涼飲料水 他の飲み物との比較その6

目次

清涼飲料水とは

 清涼飲料水は、アルコールを含まない、味や香りを楽しむための飲み物全般を指します。
人工的に風味付けをしたものはもちろん、果汁ジュースやコーヒー飲料、茶系飲料、さらには缶やペットボトル詰めの炭酸水なども含みます。
(一般的には、牛乳やスープなどは含みません)
あらゆる種類の飲み物を含むため単純な数値化は難しく、この大きなくくりでの生産量や消費量の比較などはほぼ不可能です。
そこで、ここでは嗜好品として楽しむ場合のリスクについて、アルコール飲料であるワインとの比較を見てみることにしましょう。

含有成分のリスク

 単純に水分補給が目的なのであれば、もっとも理想的な飲み物は水です。
それ以外はお茶であれ炭酸水であれ、溶けている成分によって何らかの影響を受けることは避けられません。
もちろん、そのなかには人体にとって有益な影響もありますが、特に過剰に摂取した場合には望ましくない影響が出る可能性も少なくありません。
例えば、コーヒー飲料やエナジードリンクに含まれているカフェインは、一度に大量摂取したり一定以上の量を常習的に摂っていると、中毒症状を引き起こす可能性があります。
特に一度に大量に摂取した場合の中毒は重大な健康被害に繋がる恐れがあり、場合によっては死に至ることもあります。
コーヒー豆から淹れたコーヒーの場合は、カフェインよりも水分量が致死的なレベルになるほど飲まない限りは問題ありませんが、意図的にカフェイン量を増加させている製品の場合は摂取量によっては危険な水準を超えてしまう可能性もあり、飲用に節度が求められます。
また、お茶に含まれるカテキンも、摂りすぎに注意が必要な物質のひとつです。
海外では意図的に濃度を高めた茶カテキン入り飲料によって肝機能障害が起こりうるとして、清涼飲料水への添加が禁止されたケースもあります。
これも茶葉から自分で淹れたお茶は常識的な量なら問題ありませんが、日本の場合はまだ規制されていない高濃度茶カテキン入り飲料がありますので、常飲する場合は気を付けましょう。
しかし、健康面でのリスクにおいては、これら以上に注目されている成分として、人口甘味料や着色料などの添加物、そして大量の糖分があるといえるのではないでしょうか。

添加物のリスク

 第二次世界大戦前後の大量生産大量消費文化の揺り戻しのように、20世紀末頃から日本や欧米の一部など先進国を中心として脱添加物の動きがメジャーになっています。
清涼飲料水でも、「着色料無添加」「香料無添加」などの文字が大きく表示されている製品も多く、消費者の添加物の有無に対する関心をうかがわせます。
しかし、実際のところ「添加物」はできるだけ避けなければいけないような危険な物質なのでしょうか。
日本国内に限って言えば、現在飲食物に添加が許可されている着色料や香料などは、かなり厳しい基準が設けられており、常識的な量の範疇であればたとえ毎日摂取していても明確な健康リスクはないとされています。
また、一言に「添加物」と言ってもその内容は様々で、例えば酸化防止剤として添加されているのがビタミンCであったり、着色料と表示されているものがカラメルであるなど、一般的な食品に含まれている物質や成分であることも少なくありません。
もちろん、こうした微量の物質に対して敏感に反応してしまう体質の方は避ける必要があるかもしれませんが、そうでなければ目くじらを立てるほどの必要はない、というのが実情のようです。
ただ、この基準は国や地域によって大きく異なることも多く、カテキンのようにある国では禁止されている物質でも他の国では普通に流通しているということもありえますので、海外製品については一応確認してみたほうがいいかもしれません。
ちなみに、ワインの酸化防止剤として添加されている亜硫酸塩も、安全性が確認されている物質です。
ワインに使用されている量で健康被害が起こりうるレベルまで摂取するとしたら、1日で4~6リットルは飲まなければならず、明らかにアルコールの害の方が上回ります。
それでも、「酸化防止剤が入っていると二日酔いになりやすい」「頭痛を起こしてしまう」という人も少なからずいるため、近年では酸化防止剤無添加、さらには自然農法で栽培したブドウを使用するビオワインなどもその数を増やしつつあるようです。

糖分のリスク

 清涼飲料水の持つ一般的な成分の中で、恐らく現時点で最も危険視されているのが「容量に対して多量の糖分」であるといえるのではないでしょうか。
もちろん、「清涼飲料水」というくくりでいえば、お茶や炭酸水など糖分を含まない飲み物も含まれていますし、前述の「無添加」系飲料のように「微糖」「糖類なし」が売りの製品も少なくありません。
しかし逆に、いまでも重量で示すとびっくりするほどの糖分を含有している製品のほうが主流であり、甘いものを好む消費者にとってはなくてはならないものともなっています。
お茶やコーヒーの一部を除くと清涼飲料水は基本的に低温で飲むことを前提としており、炭酸や酸味で心地よい刺激を得られるようになっている製品が多くなっています。
甘味は温度が低いほど感じにくくなり、酸味が加わることで味のバランスが取れ、甘さの許容量の限界値が引き上げられます。
その結果、そのままの状態では絶対摂取できない量の糖分が、むしろちょうど良く感じてごくごく飲めてしまうようになるのです。
もちろん糖分そのものは悪い成分ではなく、むしろ脳の活動をサポートするなど効率の良いエネルギー源として歓迎される栄養素ですが、摂りすぎると体に負担がかかり、様々な問題に発展する可能性もあります。
例えば、糖分の一時的な多量摂取は血液の粘度を上げ、心血管系の突発的な問題を引き起こすことがあります。
また、効率的なカロリー源になる反面、カロリーオーバーによる肥満にもつながります。
そして日常的に過剰摂取を続けると、体内の糖分量の調整機能の不具合やそれにともなう精神的な不安定、骨粗しょう症、虫歯、さらには糖尿病などを引き起こす可能性もあるのです。
アルコールの摂り過ぎによる肝臓へのダメージも十分怖いのですが、糖尿病は他の致命的な病気へと繋がる点でさらに警戒すべき疾患であるといえます。
その上、アルコールは酔いによってある程度飲める量が制限されますが、糖分を多く含む飲み物は基本的に際限なく飲めてしまうため、知らないうちに糖分を摂りすぎていることも少なくありません。

 では、糖質を含まないいわゆる人口甘味料であれば安全かといえば、そうとも言い切れません。
これも摂取量によるところが多いのですが、日常的に人口甘味料を摂り続けた場合も、糖尿病や低血糖障害などを引き起こす可能性があるのです。
体内に糖分が入ってきた際には、通常血糖値を調整するためにインスリンが分泌されるようになっています。
インスリンの分泌は人口甘味料で「甘み」を感知した場合にも起こりますが、人口甘味料には糖質が含まれていないため、逆に血糖値のバランスが崩れてしまいます。
これを何度も経験すると、体は「甘いと感じること」と「インスリンの分泌」を関連付けなくなり、糖分を摂取してもインスリンが分泌されにくくなるのです。
高血糖状態はそれだけで有害な体内糖化反応を起こしますので、これによって糖尿病が発症してしまいます。
甘い飲み物が好きな方は、含有される糖分量や人口甘味料をチェックして過剰摂取を避けるか、自分で糖分をコントロールできる「家庭で淹れる」お茶やコーヒーをメインにしたほうが、病気のリスクを避けやすいかもしれませんね。

清涼飲料水との比較 まとめ

 清涼飲料水もワインも、そのおいしさで人々を魅了するという点で素晴らしい飲み物であると言えます。
そして同時に、飲みすぎることで何らかの害があるという点も共通しています。
アルコールの摂取を忌避する考え方が強まると、逆に「アルコールが入っていないから大丈夫」という判断をしてしまいがちですが、カフェインやカテキン、大量の糖質、人口甘味料など、量によってはアルコール以上に致命的な成分も少なくありません。
何を飲むにしても、飲みたいという欲求を優先するのではなく、節度を保った付き合い方をするほうが、結果として健康に長く楽しむことができるといえそうです。