基本はブドウの収穫年 ヴィンテージワインの価値その1
ヴィンテージワインとは
ヴィンテージワインとは、高品質のブドウが収穫できたいわゆる「当たり年」のワインのことです。
ワインのヴィンテージは、日本語で「収穫年」と訳されます。
そのワインの原料となるブドウの収穫年を記したもので、複数年の原料ワインをブレンドして造る場合など表記がない場合もあります。
ブドウは花が咲いてから収穫までに経験した天候などの自然環境で果実の品質が大きく変わり、特にワイン法で灌漑などの人為的な介入を厳しく制限される旧世界の各生産地では、その年の気温や降雨量を強く反映した結果になります。
そのため、ワインの品質や特徴も年によって大きく異なるのが普通で、同じ生産者、同じ銘柄のワインでも、良い年と悪い年ではまったく違うワインのようになってしまうことも少なくありません。
新芽の季節に霜が降りたり収穫直前に大雨が降ったりといった悪い条件がその年のワインを残念な出来にしてしまう一方で、昼夜の寒暖差が大きかったり十分な日照と必要最小限の降雨があったりといった気候的な良い条件は、素晴らしいワインをさらに上のランクに引き上げてくれます。
そして、良い条件がいくつも重なることで、稀に見るような良質のブドウとそこから生まれる最高品質のワイン、つまりヴィンテージワインが生まれるのです。
ヴィンテージチャート
あるヴィンテージのワインが良いか悪いかは主に天候が左右しますので、同じ年でも国や地域によって評価が異なるのが普通です。
逆に言えば、ヴィンテージとブドウの生産地が分かれば、そのワインの出来不出来が大まかにわかることになります。
(実際には、同じ地域でもさらに区域や畑によって微気候(ミクロクリマ)による違いが発生しますし、生産者の醸造技術によって仕上がりが変わることもあるので、地域の評価と必ずしも一致しないワインもあります)
この、ある国や地域におけるヴィンテージごとの評価(もしくは、あるヴィンテージにおける国や地域ごとの評価)をまとめた表を「ヴィンテージチャート」と呼びます。
チャートは通常5段階評価で、「良くない」「やや良くない」「平均的」「良い」「非常に良い」という形でなされます。(ランクごとの名称はチャートごとに異なる)
例えば「1993年のボルドーは平均的だが2005年は非常に良い」「2009年以降のシャンパーニュは平均的かやや良くない年が連続している」という感じです。
現在ではワインの小売をしている店のHPやボルドーワインの紹介をしているサイトなどで、かなり使いやすいチャートを閲覧することが可能になっています。
ワインの生産量の少ない国では全体の評価になりますが、有名地域の多い国、特にフランスについては地域や地区ごとに評価されることも少なくありません。
これは、ヴィンテージチャートを参照するのが主に資産としてワインを購入する投資家で、彼らの投資対象の多くがフランスやイタリアの著名な高級ワインだからです。
なかでも数十年の熟成期間を必要とするワインが多く、古いヴィンテージに高い価値のつきやすいボルドー地方については、川の右岸と左岸を分けて評価するなどかなり細かい分類のチャートが作成されることも珍しくありません。
ちなみに、アメリカやオーストラリアなどの「新世界」については、ヴィンテージチャートは作られないか、あったとしてもあまり重視されない傾向がありました。
これは、「旧世界」の国と違って灌漑を積極的に行うなどブドウの品質に対する介入が行われており、気象の良し悪しだけで地域全体の品質が決まることが少なかったからです。
しかし、近年ではそれらの地域でも手法の多様化が進んでおり、気候を反映するワインも増えてきているため、詳細なチャートが作られるケースも出てきています。
ヴィンテージチャートを使用してワインを選んでみる
ヴィンテージチャートを利用してワインを選ぶ場合、それが投資目的なのか自分で飲むためなのかで見るべきポイントは大きく変わります。
投資目的の場合は、当然ながら評価の高いヴィンテージ、評価の高い国や地域のものを選びます。
高評価のワインは平均的に調達コストも高くなりますが、将来そのワインを欲しがる人の数も多くなるため、売却価格も通常より上がることが期待できるからです。
自分で飲むためのワインも、コストの問題が無視できるならできるだけ良いものを選ぶのでも良いのでしょうが、現実にはそこまで高価なワインばかりを買うことは難しいのではないでしょうか。
その場合は、あえて評価の低いヴィンテージのものを狙ってみるのも一つの手といえます。
低評価のヴィンテージは投資目的の購入が少なく、価格も控えめになっているものが多いのですが、ヴィンテージチャートはあくまでその国や地域の平均的なブドウの品質の評価なので、例外的によい出来だったブドウもあるはずです。
また、腕の良い醸造家はたとえ原料が質の悪いブドウであっても、技術と経験でカバーすることでワインの質を保つ術を持っているもの。
高評価のヴィンテージでは手が出ないような価格になっているワインも、低評価のヴィンテージであれば試すチャンスがあるかもしれません。