ヴァッレ・ダオスタ州  北イタリア4

 ヴァッレ・ダオスタ州(Valle d'Aosta)はイタリアの北西部、アルプス山脈のふもとから中腹に位置する州です。
ピエモンテ州(Piemonte)に州境を、フランス、スイスと国境を接しています。
「アオスタの谷」という州名の通り、アルプス山脈に属するいくつもの高山の合間にあり、主なブドウ畑もイタリアではもっとも高い1200m付近に作られています。
イタリア全州中、面積が最小で人口もワインの生産量ももっとも少ない州ですが、古代からアルプス越えの要所として栄えていたため文化的には豊かで、ワインの品質も平均して高めになっています。
フランスとの国境に位置しており、他の北イタリア各州と同じように複数の勢力によって支配された歴史を持ちますが、立地の特殊さから強力な支配を受けることはあまりなく、独自性の高い文化を残してきました。
ワイン造りにおいてはイタリアとフランス両方の特徴を持ち、栽培品種もフランス南部のものが少なくありません。
生産量は少ないものの、高品質でバラエティ豊かなワインを生産しており、固定的なファンのついている産地として知られています。

 ヴァッレ・ダオスタのブドウ畑はイタリアでも高標高の土地にあり、平均1000~1100mの斜面に作られています。
そのため冬季の積雪量が多く、ヨーロッパのワイン用ブドウ栽培では珍しく棚仕立てが主流となっています。
逆に冬季以外の降水量は少なくなっており、水はけと日当たりの良い斜面、高地の気候特有の昼夜の寒暖差が良質なブドウ作りを助けてくれます。

 ヴァッレ・ダオスタ州にはDOCG認定を受けたワインはなく、DOCも2017年現在でひとつだけです。
総生産量のうちDOPワインが占める割合も1%未満と非常に少ないのですが、IGP以下のワインが全体的に高水準なのが特徴となっています。
全生産量でみると赤ワインが65%、白ワインが35%ですが、DOPワインに限ると90%以上が赤ワイン。
こうしてみると画一的なイメージを受けるかもしれませんが、唯一のDOCで認められるブドウ品種が20種類以上あり、ワインタイプもバラエティ豊かです。
公用語としてイタリア語に加えてフランス語が使用され、古代から高地の街道として様々な文化が交錯してきた地域であったため、ワインの文化にもその影響が強く出ているのです。
そのため、優良な産地で造られるDOPワインには地域名を名乗ることを許されているものもあり、指定品種を90%以上使用していればそれをラベルに表示することも可能で、同一DOP内で異なる特徴を持つもの同士を見分けられるように工夫がなされています。