バジリカータ州 南イタリア5
バジリカータ州(Basilicata)とは
バジリカータ州はイタリア半島の南、ブーツ型の半島のくるぶしに当たる部分に位置する州です。
カンパーニャ州(Campagna)、プーリア州(Puglia)、カラブリア州(Calabria)と州境を接し、イオニア海に面しています。
ギリシャ人がイタリア半島に最初にブドウ栽培を持ち込んだ土地であると言われており、ワイン造りの歴史も南イタリアの中で1,2を争うほど古い地域です。
しかし、アペニン山脈の南端が面積の大半を占めることや、火山岩の多い農業に向かない地質の関係で、農地としての開発はほとんど行われてきませんでした。
伝統的にオリーブの栽培と放牧が生計を立てる手段で、現在でもワインの生産量は極小。
さらにDOPワインの比率は全体の約0.2%で、20州中19位となっています。
20世紀末の農地改革でブドウを含む農作物の生産が増加していますが、いまのところ大幅な改善には至っていないようです。
バジリカータ州のワイン造りに関する歴史
バジリカータ州にあたる地域は、ギリシャ人がイタリア半島に初めてブドウ栽培・ワイン造りを持ち込んだ地域であると言われています。
紀元前8世紀頃、人口が増えすぎたギリシャ人が地中海・黒海沿岸に進出し、多くの殖民都市を築いていきました。
特にギリシャに近いイタリア半島にはたくさんのギリシャ人が住んだことから、後に古代ローマ人はこの時期のギリシャ人の勢力範囲を「マグナ・グラエキア」と呼びましたが、バジリカータ州周辺はその中心地となっていました。
ただ、平地が全体の1割にも満たないうえ、火山岩の多い豊かとは言えない土壌と乾燥した気候のため土地の利用が難しく、ローマ帝国領となったとはあまり重視されなくなってしまいます。
シチリア王国(ナポリ王国)領となったあとは、農業よりも牧畜がメインとなり、その傾向はイタリア統一後まで続きました。
結局、バジリカータ州のワイン産業が再び上向き始めたのは、20世紀末の大規模な南イタリアの農地改革の後でした。
現在ではブドウをはじめとしてオリーブなども植えられ、農業全体の規模も大きくなってきており、ワイン造りも規模を拡大しつつありますが、その効果が顕著に現れるまではまだ時間がかかりそうです。
バジリカータ州のワイン造り
バジリカータ州では現在ブドウの産地が拡大し始めているところで、各地でDOP認定を受けるワインも出始めていますが、古くから続く主要なブドウ産地は北部の山岳地・丘陵地に限定されています。
ここはローマ帝国が支配権を広げるずっと前のギリシャ時代から続く産地で、州内で唯一のDOCG級DOPワイン、「アリアニコ・デル・ヴルトゥレ・スペリオーレ(Aglianico del Vulture Superiore)」が造られています。
このワインはイタリア有数のDOPワインであるバローロなどと比較されるほど品質が高く、古くは王族や貴族の食卓に並ぶほどの評判を得ていました。
まだ再興に向かい始めたばかりの同州のワイン産業ですが、秘められた可能性がけして小さくないことを、このワインが示してくれていると言えるでしょう。