ピエモンテのワイン造り 特徴、製法など
高級・高品質ワイン
近代イタリア王国の基礎となったサヴォワ家の領土であり、一時は首都にもなっていたトリノを有するピエモンテ州は、現在でも商業、工業などの盛んな地であり、平均所得の高い地域です。
また、フランスの文化的影響を強く受けていることもあり、イタリアでもっとも美食に対する追求の姿勢の強い州のひとつでもあります。
そのため、まだ他の地域が低品質な大量生産ワインしか造っていなかった頃から、例外的に品質の高いワインを生み出してきました。
現在、その姿勢はさらに顕著になっており、ピエモンテ州で生産されるワインのうち、DOPワインの占める割合は実に80%以上。
しかも、ひとつ格の下がるIGPは2017年現在存在していません。
バローロやバルバレスコなど、イタリアワインの中では珍しく古くから良質ワインとして知られ、現在世界的にも有名な銘柄が多く存在しているのも当然といえるかもしれません。
生産者ごとの個性と主張が強い
イタリア北部全体に言えることですが、ピエモンテ州では生産地ごと、州ごとよりももっと小さい都市(コムーネ/comune)単位で異なる文化を持っているケースが多く、同じデノミナツィオーネ内でも地区ごとの差が大きいとされています。
さらに、同じ地区でも生産者による調整の触れ幅が大きく、個性的なワインが少なくありません。
これは、ローマ帝国の崩壊からイタリアの統一までの間、都市や小国による統治が行われていたことに関係しています。
中央集権的な統治形式の期間が長かった南部と異なり、11世紀以降単一の強大な支配者が不在だった北部では、ギリシャのような比較的小規模な単位での共和制が一般的でした。
特に商業や農業そして金融などが早くから発達した都市は、都市国家、もしくはそれらが集まった小国の形で地域をまとめ、他国の干渉を拒否するだけの力を持っていました。
これらの独立した都市や国は、基本的に近隣に併合されないよう、逆に弱者を吸収して支配範囲と権力を広げようと牽制しあっていましたので、ワインなどの文化も当然統一はされておらず、それぞれ独自性を持ったものになっていったのです。
現在では国や州といったまとまりがありますし、原産地呼称制度の規定もあるため一定の共通性はありますが、それでも「周囲にあわせるのではなく自分のやり方を貫く」という価値観が根強く、生産者ごとの個性として表れています。
伝統的な品種
これもイタリア全体に言えることですが、古くから地域に伝わる伝統的な品種を使用したワインが多く造られています。
イタリア全土の統一から二度の世界大戦の前までは、どちらかというと大量生産的な品質を考慮しないワインが多く、フランスなどで使用される原料ワインもかなりの割合にのぼっていたため、需要の多いメジャーな品種が栽培されていました。
しかし、1963年にワイン法が制定されて以降は、基本的に「伝統的に栽培、使用されている品種」でのワイン造りが求められるようになっています。
その中でも、ピエモンテ州ではDOPワインが生産量の8割を超えているため、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなどの栽培面積が他の州に比べて極端に少なくなっているのです。
醸造技術の発展に伴って品種改良も進められたフランスに比べると、非常に古くからそのまま使用され続けている品種も多く、他の国や産地とは違う特徴を持ったワインが生み出されています。
整然と並んだ区画と畑
北部のワイン産地はフランスなどに比べると開発が進んでいるとは言いがたく、畑も比較的分散しているケースが多いとされています。
しかし、バローロ(Barolo)やバルバレスコ(Barbaresco)の産地は、例外的にしっかり整備され、フランスのブルゴーニュ地方のように、テロワールごとに「クリュ(Cru)」と呼ばれる区画に分けられています。
当然、どの区画のブドウを使用したかが品質に大きく関わってくるため、同じ名称を持つワインの中でも差の大きいイタリアの中では、比較的選びやすいものになっています。
(ただし、複数のクリュのブドウをブレンドするものもあり、ラベル情報として大きく載るものでもないため、事前に調べるかやはり生産者名で選んだ方が間違いは少ない)