ワインを開栓する際に気をつけたいマナー

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 ワインはただの嗜好品ではなく、長い歴史に育まれてきた文化のひとつです。
ひとりで楽しむだけであればともかく、誰かと一緒に、もしくは公共の場で飲むのであれば、それが誰かの気分を害してしまうことのないようにマナーには気を付けておくべきといえます。
ここでは、ワインにまつわるマナーのうち、ワインの開栓に関するマナーをチェックしてみましょう。

スパークリングワインの開栓マナー

 ワインの開栓に関するマナーのうち、最も有名なのはやはり「スパークリングワインの開栓」についてでしょう。
スパークリングワインの栓は、大きな音をさせないように静かに抜くのがマナーです。

スパークリングワインは液中に炭酸ガスが溶け込んだワインで、ガス圧は通常2~5気圧ほどになっています。
これに対処するため、スパークリングワイン用のコルクは裾に向かって広がった特殊な形状をしていますし、さらにミュズレと呼ばれる針金でしっかりと止めてありますが、開栓時には当然これを解除せねばなりません。
瓶の内側からコルクを押しのけようとする圧力は非常に強いため、失敗するとコルクがすごい勢いで飛び出し危険です。
音をさせないというマナーは、周囲のくつろいでいる人々にいらぬ不安や緊張を与えたり危害を加えないための必然であるともいえます。

 スパークリングワインを抜栓する場合は、事前にしっかりと冷やしながら静置しておきます。
温度が高いと内部のガス圧も高まりますし、振動が加わっていると最悪の場合中身が噴出してきてしまう恐れがあるからです。
中のガスの状態が落ち着いたら、万一中身が噴き出したり栓が飛んでしまっても大丈夫なようにタオルかナプキンをかけ、その上からしっかり押さえながらミュズレを緩めます。
そして左右の手でそれぞれコルクとボトルを持ち、ボトルの方を回すように動かしながらゆっくりと栓を抜いていきます。
この時、コルクが動き始めれば瓶内のガス圧で自然にコルクが押し出されてきますので、コルク自体を引いたりボトルを意識して下げる必要は基本的にありません。
コルクが半分以上抜けてきたら、ボトルを(人のいないほうに)傾けるようにしてほんの少しだけ隙間を作り、そっとガスを抜きます。
うまくいくと、ガスの抜ける「シュー」という音が控えめに鳴るだけで、「ポンッ!」という大きな音はなりません。
(この小さな音は「天使のため息」とも呼ばれています)
ガスが抜けたら今度はコルクの方を斜めに倒すようにして引っ張り、完全に抜栓します。
慣れないとなかなかうまくいかないかもしれませんので、できれば自室などで何度か練習しておくといいでしょう。

一度に飲める以上のワインを開栓しない

 開栓に関するマナーでもうひとつ重要なのが、一度にたくさんのワインを開けてしまわないことです。
パーティなどで、その都度ワインオープナーを使用するのが面倒に感じる場合など、最初に全て開けてしまいたくなるかもしれません。
また、気分が盛り上がって普段以上にお酒を飲める気になったり、いろいろなワインを味見してみたくなることもあるかもしれません。
しかし、ワインは基本的に非常に酸化に弱いお酒です。
一度抜栓したあとは、たとえコルクを戻したとしても一気に酸化が進み味も香りもどんどん変わっていってしまいます。
せっかくのワインなのですから、どうせ飲むのであれば最良の状態で楽しむのがマナーであるといえるでしょう。
ただし、熟成が十分進んでいなくて酸化によって調整を行わねばならないワインはもちろん別です。
他のボトルを味見してコンディションが分かっている場合などに、飲み始める数時間前に抜栓して熟成度を調整するのは理にかなっているといえます。

 その他、マナーではありませんが「澱が沈んでいる可能性のあるワインは静かに扱う」「抜いたコルクを無造作にテーブルなどに置かない」なども気をつけたいポイントです。
誰かの用意したワインを開栓前に触るケースはあまり多くはないでしょうが、もし不用意に持ち上げたりするとせっかく時間をかけて準備してあったものを台無しにしてしまうかもしれません。
また、ワインを一度に注ぎきれなかった場合にコルクを戻すのはよくあることなので、自分だけで飲んでいるのでなければコルクは清潔に保つ(あるいは少なくともそのように見えるよう扱う)べきでしょう。