シャルマ製法、トランスファー製法、炭酸ガス注入法 スパークリングワインの醸造方法その2
シャルマ方式
圧搾(プレシュラージュ)
シャルマ方式も、途中まではシャンパーニュ方式と同じ工程をたどります。
収穫した果実から果梗(かこう)を取り除いて果粒をばらしたあと(エグラパージュ)、白ワインと同じようにすぐに圧搾して果汁を絞り、一次発酵にかかります。
白ブドウも黒ブドウもすぐに圧搾してしまうため、基本的には果汁は白ワインと同じ金色で透明な水色になります。
アルコール発酵(一次発酵)(フェルマンタシオン・アルコリック)
絞ったブドウ果汁に、通常は純粋培養した酵母を加えて、アルコール発酵をさせます。
シャンパーニュ方式と同じように2回の発酵工程を経るため、シャルマ方式でもこちらを一次発酵と呼びます。
二次発酵とは違い、開放型のタンクで発酵させますので、この時点ではガスは全て大気中に抜けていきます。
発酵は1~2週間、白ワインと同じく15度前後でゆっくりと行われます。
マロラクティック発酵(フェルマンタシオン・マロラクティック)
発酵が終了したら他のタンクや樽へ移していったん休ませます。
この際に、目立った液内浮遊物を沈殿させて取り除いたり、リンゴ酸が乳酸菌によって分解される「マロラクティック発酵」を行う場合もあります。
最終的な仕上がりが甘口から辛口か、熟成期間をどれくらいに想定するかなど、仕上がりの味わいに応じて調整を行います。
調合(アサンブラージュ)
原酒の状態が落ち着いたら、二次発酵の前に調合(アサンブラージュ)を行います。
シャンパーニュ製法と同じように、品種別、生産者別の原酒だけでなく、別の年代のワイン(リザーブワイン)も用いて、味や香りのバランス、品質を整えます。
この工程によって、その年のブドウの出来不出来に関わらず一定以上の品質のワインを造ることができます。
酵母、蔗糖の追加
シャンパーニュ製法の場合はここで瓶に詰めますが、シャルマ製法の場合は瓶詰めせずに原酒に酵母と蔗糖を溶かした物(リキュール・ド・ティラージュ)を加えます。
この糖分と酵母によって二次発酵のための準備が整います。
タンク内二次発酵、熟成(ドゥジエム・フェルマンタシオン・アン・リゼーブア、ヴィエイスマン/Deuxième fermentation en Réservoir、Vieillissement)
糖分と酵母を溶かした原酒をタンクに移し、シャルマ方式の最大の特徴である「タンク内二次発酵」を行います。
加圧した密閉状態のタンク内で発酵が起こるため、発生した二酸化炭素は瓶内と同じように空気中に発散せず、液内に溶け込んでいきます。
発酵終了後の熟成もタンク内でそのまま行うため、動瓶(ルミュアージュ)や抜滓(デゴルジュマン)を行う必要はありません。
滓はタンクの底部に沈んでいき、ワインはこれと接触したまま旨みなどを引き継ぎながら熟成します。
発酵工程は6~8週間、熟成期間も含めると、終了まで短くて1年弱、長ければ数年かけてゆっくりと進められます。
補酒(ドサージュ)
熟成が終了したら、「門出のリキュール(リキュール・デスクペディシオン)」を注ぎ入れ、仕上がりのワインの甘さを決定します。
抜滓(デゴルジュマン)後に瓶一本一本にリキュールを注ぎいれなければいけないシャンパーニュ方式に比べ、労力や時間がかからず微調整も容易です。
どれくらいの甘さなのかはラベルなどの表記で確認でき、甘い方から順に、ドゥー(残留糖分量50g/リットル以上)、ドゥミ・セック(残留糖分量32~50g/リットル)、セック(残留糖分量17~32g/リットル)、エクストラドライ(残留糖分量12~17g/リットル)、ブリュット(残留糖分量6~12g/リットル)、エクストラ・ブリュット(残留糖分量0~6g/リットル)、ノン・ドゼ(残留糖分量3g/リットル未満、もしくはリキュール・デスクペディシオンに糖類無添加)の6段階に分類されています。
瓶詰め
シャルマ方式の場合は、ここでようやく瓶詰めの工程です。
沈殿した滓や微細な浮遊物が取り除かれたあと、加圧したまま瓶へと注ぎ込まれます。
そして、シャンパーニュ方式と同じように内圧で飛んでしまわないように裾が広がった形のコルクで打栓され、針金(ミュズレ)で固定されて出荷されるのです。
トランスファー方式
写真の説明とか
圧搾(プレシュラージュ)
トランスファー方式は、シャルマ方式よりもさらにシャンパーニュ方式に近くなります。
収穫した果実から果梗(かこう)を取り除いて果粒をばらしたあと(エグラパージュ)、白ワインと同じようにすぐに圧搾して果汁を絞り、アルコール発酵へ進みます。
アルコール発酵(一次発酵)(フェルマンタシオン・アルコリック)
瓶内二次発酵の工程がありますので、シャンパーニュ製法と同じくこちらを一次発酵と呼びます。
開放状態での発酵なので、ここで発生する炭酸ガスが大気中へ抜けて知ってしまうのも同じです。
発酵は1~2週間、白ワインと同じく15度前後でゆっくりと行われます。
マロラクティック発酵(フェルマンタシオン・マロラクティック)
発酵が終了したら他のタンクや樽へ移していったん休ませます。
この際に、目立った液内浮遊物を沈殿させて取り除いたり、リンゴ酸が乳酸菌によって分解される「マロラクティック発酵」を行う場合もあります。
調合(アサンブラージュ)
瓶詰めの前に、他の品種や畑、別の年代の原酒を使用して調合(アサンブラージュ)を行います。
この工程によって、年度が変わっても一定の品質を保つ事ができるようになります。
しかし、当然手持ちの原酒にちょうどいい特徴を持つものがなければ思った味わいに仕上げる事が難しくなるため、いかにバリエーション豊富な原酒をストックできるかが生産者の腕の見せ所ともなります。
瓶詰め、酵母・蔗糖の追加
調合がすんだら、原酒に酵母と蔗糖を溶かした物(リキュール・ド・ティラージュ)を加えて瓶詰めを行います。
ここで加える蔗糖は甘さをもたせるためではなく、一次発酵で大半が消費されてしまう糖分を補って、瓶内での二次発酵を促進するための処置です。
瓶内二次発酵(ドゥジエム・フェルマンタシオン・アン・ブテイユ/Deumixieme Fermentation en Bouteille)
瓶に詰めて仮栓を打ったら、棚に寝かせて瓶内二次発酵を行います。
追加された酵母が糖分を分解し、それによって発生した二酸化炭素が密閉された空間の中でワイン液中に溶け込んでいくのです。
二次発酵と熟成をタンク内で行うシャルマ方式に比べて、瓶内でこの工程を経たほうがよりきめの細かい炭酸を得られるといわれています。
発酵は6~8週間続き、その後数ヶ月から数年に渡って滓が残ったままの状態で熟成させ、滓から旨みやコクを移します。
シャンパーニュ製法の場合は、この滓を最終的に排出するために熟成期間中に瓶を転がすようにしながら少しずつ倒立させていく「動瓶(ルミュアージュ)」を行いますが、トランスファー方式ではこの作業は必要ないため、熟成終了まで静置した状態で進めます。
現在では機械による自動化が進んでいますが、かつてはルミュアージュもすべて人の手で行っていたため、シャンパーニュ方式で造るワインの価格を上昇させトランスファー方式との価格差が生まれる要因となる作業のひとつでした。
加圧タンクへ一時的に移動
熟成が終了したら、瓶の中身を加圧状態のタンクにあけて集めます。
液中のガス圧以上の気圧をかけた状態で作業するため、ワインから炭酸が抜けてしまう事はありません。
固まった滓の大半は瓶内に残るため、抜滓(デゴルジュマン)の工程を省く事ができます。
シャンパーニュ方式の場合、デゴルジュマンの際にワインやガスを出来るだけ逃さず行うには熟練した職人技が必要になるため、この工程がないだけでもかなりの節約になるのです。
滓引き、濾過
ワイン内に混入した微細な滓を、沈殿させたり吸着剤を利用して省きます。
かつてはより透明度を高めるために念入りに行うケースが多かったようですが、近年では自然な風味を残すためあえてこの工程を省く生産者も多くなってきています。
また、出荷後にも長く熟成されることの多い高級なワインの場合は、結局その間に澱が再発生してしまうため、完全な滓引きをする意味が薄いともいえるでしょう。
酵母・蔗糖の追加(リキュール・デスクペディシオン)
瓶詰めの前に、門出のリキュール(リキュール・デスクペディシオン)を添加して甘さを調整します。
シャルマ方式と同じように小分けにする前に添加できるため、シャンパーニュ方式に比べて微調整が効きやすいというメリットがあります。
ここで追加される糖分の量によって、最終的な甘口・辛口が決まります。
表記は他の方式と同様です。
新しい瓶へ詰める(プシャージュ)
瓶内二次発酵をさせたときとは別の綺麗な瓶に詰め、スパークリングワイン用の栓で打栓します。
コルクに脱落防止の針金(ミュズレ)をかけて完成です。
メトード・リュラル方式
圧搾(プレシュラージュ)
メトード・リュラル方式は、シャンパンの父とも呼ばれるドン・ピエール・ペリニョン修道士が偶然発見した手法を元に確立された作り方といわれています。
後天的に盲目だったペリニョンは、ブドウ果汁のブレンドにおいてきわめて優れた才能を発揮し、いくつかの決まった品種のブドウ、それも品質の高いものを選りすぐってブレンドすることで、ワインの質を高める方法を模索したのです。
現在でも、AOCで規定されるスパークリングワインについては、原料として使用できる品種が限定されているケースが多いようです。
メトード・リュラル方式でも、定められた品種のブドウを収穫し、速やかに果梗(かこう)を取り除いて果粒をばらしたあと(エグラパージュ)、白ワインと同じようにすぐに圧搾して果汁を絞ります。
アルコール発酵(フェルマンタシオン・アルコリック)
絞ったブドウ果汁に速やかに純粋培養した酵母を加えて、アルコール発酵を始めます。
通常は15度前後で進めますが、発酵スピードを抑えるためにさらに低い温度に置く場合もあります。
酵母が増え、しかしまだ糖分が多く残っている状態まで進んだら、一端温度を下げて発酵をストップします。
瓶詰め
まだワインになりきっていない、発酵途中のブドウ果汁を瓶詰めし、コルクで打栓します。
メトード・リュラル方式の場合はこの後に抜栓する必要がないため、この時点で仮栓ではなく出荷用の栓を使用し、固定用の針金(ミュズレ)をかけてしまいます。
瓶内一次発酵
保管用のラックへ移されワインの温度が上がってくると、止まっていた発酵が再開します。
瓶内発酵ではありますが、ここで起こるのは二次発酵ではなく、途中で止まっていた一次発酵の後半です。
密閉状態で発酵し炭酸ガスがワインに溶け込みますが、他の手法と違って糖分や酵母を追加しないため、ガス圧も最終的なアルコール度数も低めに仕上がります。
微炭酸でほんのり甘いスパークリングワインは、強い刺激に慣れた現代人ではちょっと物足りないかもしれませんが、当時の人々はスティルワインとは違うさわやかなおいしさに魅了され、「まるで星空を飲んでいるようだ」と表現した人もいたそうです。
炭酸ガス注入方式
炭酸ガス注入方式の場合は、スティルワインなどを密閉したタンクに入れ、炭酸ガスを吹き込むだけでスパークリング状態にする事ができます。
非常に簡単ですし安価に製造する事ができますが、当然風味は劣ります。
また、ワインじゃなくてもアルコールや味わいを整える事でなんでも原料として使用することが出来るため、あまりに低価格なものは注意が必要な事も。
手軽に気分を味わいたいパーティなどでは良いかもしれません。