コート・ド・ニュイ地区 ブルゴーニュの産地と等級付き畑2
コート・ド・ニュイ地区
コート・ド・ニュイ地区は、コート=ドール県のほぼ中央に南北に細長く連なる超優良畑の密集地です。
幅は狭いところで数百mしかなく、N74号線に沿って20kmほど、村や畑が直列に並んでいる状態が続きます。
ほぼ全ての畑が東向きのなだらかな斜面に作られており、冬の厳しい寒さなどの一見ブドウ栽培には不向きな気象条件とは裏腹に、フランスでも類を見ないほど極上のブドウ、そしてワインを生み出しています。
南に続くコート・ド・ボーヌと合わせて、「グラン・クリュ街道」「黄金丘陵」とも呼ばれます。
栽培されているブドウの9割以上が黒ブドウ品種で、さらにそのほとんどがピノ・ノワールです。
ガメイも少量栽培されていますが、14世紀に一度ガメイ禁止令が敷かれた関係で、ピノ・ノワールが主たる品種となったといわれており、ほとんどのAOCで使用が認められていません。
シャルドネ、アリゴテなどから優れた白ワインも造られていますが、全体から見るとかなり少なく、村名アペラシオン8つのうち3つではまったく造られていませんし、グラン・クリュで見ると24のうち認められているのはたったひとつだけです。
コート・ド・ニュイ地区の村名AOC
非常に優れたテロワールに恵まれているコート・ド・ニュイ地区ですが、全ての村が村名アペラシオンを持つわけではありません。
村名AOCは全部で8つで、北から順に
- マルサネ(Marsannay)
- フィサン(Fixin)
- ジュヴレ・シャンベルタン(Gevrey-Chambertin)
- モレ・サン・ドニ(Morey-Saint-Denis)
- シャンボール・ミュジニー(Chambolle-Musigny)
- ヴージョ(Vougeot)
- ヴォーヌ・ロマネ(Vosne Romanée)
- ニュイ・サン・ジョルジュ(Nuits-Saint-Georges)
となっています。
また、以上の区分に含まれない南西の幾つかの村については、ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ(Bourgogne Hautes Côtes de Nuits)という、アペラシオン・リジョナル(地域名アペラシオン)もあります。
マルサネ
マルサネについては等級付き畑はありません。
もともと、フィロキセラ災害で受けたダメージから長い間立ち直ることができず、村名AOCを名乗れるようになったのも1986年に入ってからのことです。
復興には当然地域全体の努力がありましたが、特に「ドメーヌ・クレール・ダユ」によってピノ・ノワールの栽培やロゼワインの生産が広まったことが大きな契機となりました。
現在、同ドメーヌは相続などで分裂、消滅してしまいましたが、地域全体に生産が広まったロゼワインはマルサネの強力な武器となり、「マルサネ・ロゼ」というロゼ用のアペラシオンも認められているほどです。
フィサン
コート・ド・ニュイのなかでは標高が高めで、日照が多く得られる分収穫時期の天候が不安定になりがちなため、ヴィンテージによって品質が大きく変わります。
グラン・クリュはありません
主なプルミエ・クリュ
- クロ・ド・ラ・ペリエール(Clos de La Perriere)
- クロ・デュ・シャピトル(Clos du Chapitre)
- オー・シューゾ/クロ・ナポレオン(Aux Cheusots/Clos Napoleon)
ジュヴレ・シャンベルタン
コート・ド・ニュイ地区でもっとも多くのグラン・クリュを持つ重要な村です。
グラン・クリュは南の比較的低い斜面に集中しており、北の標高の高い部分にはプルミエ・クリュが多くなっています。
9つあるグラン・クリュのうち、シャンベルタン(Chambertin)とシャンベルタン・クロ・ド・ベーズ(Chambertin Clos de Beze)は特に優良な畑として別格扱いされることも多いようです。
グラン・クリュ
- シャンベルタン(Chambertin)
- シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ(Chambertin Clos de Beze)
- シャルム・シャンベルタン(Charmes-Chambertin)
- マゾワイエール・シャンベルタン(Mazoyeres-Chambertin)
- シャペル・シャンベルタン(Chapelle-Chambertin)
- グリオット・シャンベルタン(Griotte-Chambertin)
- ラトシエール・シャンベルタン(Latricieres-Chambertin)
- マジ・シャンベルタン(Mazis-Chambertin)
- ルショット・シャンベルタン(Ruchottes-Chambertin)
このうち、最大の畑はシャルム・シャンベルタン(Charmes-Chambertin)で29.6ha、最小の畑はマゾワイエール・シャンベルタン(Mazoyeres-Chambertin)で1.8haです。
主なプルミエ・クリュ
- エトゥーネル(Etournelles)
- オー・コンボット(Aux Combottes)
- カズティエ(Cazetiers)
- クロ・サン・ジャック(Clos Saint-jacques)
- クロ・デ・ヴァロワイユ(Clos des varroilles)
- クロ・デュ・シャピトル(Cols de Chapitere)
- コンブ・オー・モワンヌ(Combe au Moine)
- シャンポー(Champeaux)
- ベレール(Bel-Air)
- ラ・ペリエール(La Perriere)
- レ・カズティエ(Les Cazetiers)
ジュヴレ・シャンベルタンのプルミエ・クリュは全部で26区画です。
モレ・サン・ドニ
村の半分がグラン・クリュかプルミエ・クリュという、素晴らしいテロワールを持っています。
村の中央を走る街道の西側にグラン・クリュ、東側にプルミエ・クリュとくっきり分かれているのも特徴のひとつ。
生産量は少ないのですが白ワインにも良質なものがあり、プルミエ・クリュの「クロ・デ・モン・リュイザン」では、コート=ドール県の一級畑で唯一アリゴテの使用が許可されています。
グラン・クリュ
- ボンヌ・マール(Bonnes-Mares)
- クロ・デ・ランブレ(Clos des-Lambrays)
- クロ・サン・ドニ(Clos Saint-Denis)
- クロ・ド・ラ・ロッシュ(Clos de la Roche)
- クロ・ド・タール(Clos de Tart)
このうち、最大の畑はクロ・ド・ラ・ロッシュ(Clos de la Roche)で16.6ha、最小の畑はクロ・サン・ドニ(Clos Saint-Denis)で6.2haです。
ボンヌ・マール(Bonnes-Mares)は隣のシャンボール・ミュジニー(Chambolle-Musigny)にまたがっており、モレ・サン・ドニ側は1.5haです。
また、クロ・ド・タール(Clos de Tart)はモノポール(monopole/単独所有畑)となっています。
主なプルミエ・クリュ
- クロ・ソルベ(Clos Sorbes)
- クロ・デ・ゾルム(Clos des Ormes)
- モン・リュイザン(Monts Luisants)
- ラ・ビュシェール(La Bussiere)
- レ・ミランド(Les Millandes)
- レ・リュショット(Les Ruchots)
- レ・シャフォ(Les Chaffots)
- レ・グリュアンシェ(Les Gruenchers)
モレ・サン・ドニのプルミエ・クリュは、20区画あります。
シャンボール・ミュジニー
それぞれまったく違う特徴を持つグラン・クリュが南北に分かれて一箇所ずつあるという珍しい村です。
全体的に石灰質の土壌を持ちますが、そこに混ざる粘土の割合が異なっているために違いが生じるといわれており、方やどっしりとしたタンニンが特徴の重たいワイン、方や華やかな香りが特徴の軽やかなワインとされています。
二つのグラン・クリュは距離にして2~3kmしか離れていないのですが、それでもこうした大きな違いが生じるという、ブルゴーニュワインのお手本のようなアペラシオンであるといえるでしょう。
この村のアペラシオン・コミュナル(村名アペラシオン)である「シャンボール・ミュジニー(Chambolle-Musigny)」は赤ワインのみのAOCですが、ここのグラン・クリュのひとつであるミュジニー(Musigny)は赤・白両方に認められており、コート・ド・ニュイ地区のグラン・クリュ唯一の白ワインとなっています。
グラン・クリュ
- ミュジニー(Musigny)
- ボンヌ・マール(Bonnes-Mares)
ボンヌ・マール(Bonnes-Mares)は隣のモレ・サン・ドニ(Morey-Saint-Denis)にまたがっており、シャンボール・ミュジニー側は約13.2haです。
ミュジニー(Musigny)のほうが少しだけ小さく、10.7haとなっています。
主なプルミエ・クリュ
- オー・ボー・ブリュン(Aux Beaux Bruns)
- ラ・コンブ・ドルヴォー(La Combe d'Orveau)
- レ・ザムルーズ(Les Amoureuses)
- レ・クラ(Les Cras)
- レ・フスロット(Les Feusselottes)
シャンボール・ミュジニーのプルミエ・クリュは24区画です。
ヴージョ
ブドウの栽培面積の半分以上を巨大なひとつのグラン・クリュが占めているという、異色の村です。
しかも、そのグラン・クリュは80以上の生産者で分割所有されているのです。
まったく同じ名前なのに品質も方向性も大きく異なる80種類以上のワインが存在するということで、「もっとも買いにくいグラン・クリュ」というちょっと不名誉な異名をとることもあります。
グラン・クリュ
- クロ・ド・ヴージョ(Clos de Vougeot)
面積が実に49.4haという、コート・ド・ニュイで最大のグラン・クリュです。
相続や転売によって分割が進み、現在では107区画にまで分かれています。
基本的には標高の高いほうが条件が良いとされており、逆に標高の低い部分はグラン・クリュであることに疑問がもたれる部分も少なくないとのこと。
より良い区画は内外から狙われていますが、現在の所有者でさえも80以上ですから、まさに戦国時代の陣取り合戦のような様相を呈しているといえるでしょう。
購入の際には生産者と区画の位置を良く確認する必要がありますが、手間がかかる分掘り出し物も少なくないといわれています。
主なプルミエ・クリュ
- レ・クラ(Les Cras)
- レ・クロ・ブラン(Les Clos-Blanc)
- レ・クロ・ド・ラ・ペリエール(Les Clos de La Perriere)
- レ・プティ・ヴージョ(Les Petits-Vougeot)
ヴージョのプルミエ・クリュは以上の4つだけです。
ヴォーヌ・ロマネ
コート・ド・ニュイ地区でもっとも重要なアペラシオンです。
(この手前に「フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echezeaux)」という二つのグラン・クリュを持つ村がありますが、村名アペラシオンを持っていないためこちらに含まれます)
多くの優秀な畑が集まるこの地区の中でも特にレベルが高いといわれており、「ヴォーヌ・ロマネの一級畑は他の村の特級畑に、村名アペラシオンの畑は他の村の一級畑に匹敵する」と言われることもあるほど。
ワインに興味がなくても聞いたことがあるであろう「ロマネ・コンティ(Romanee-Conti)」を筆頭に、最上級の畑がずらりと並んでいます。
「他の村の特級に匹敵する」といわれるプルミエ・クリュも当然質の高いものが多く、しかも1ha前後の極小の畑をさらに分割所有しているケースも珍しくないため、へたなグラン・クリュよりも稀少で高値がつくケースも少なくありません。
グラン・クリュ
- グラン・エシェゾー(Grands Echezeaux)
- エシェゾー(Echezeaux)
- ロマネ・コンティ(Romanee-Conti)
- ラ・ロマネ(La Romanee)
- ロマネ・サン・ヴィヴァン(Romanee-St-Vivant)
- ラ・ターシュ(La Tashe)
- リシュブール(Richebourg)
- ラ・グランド・リュ(La Grande Rue)
グラン・エシェゾー(Grands Echezeaux)とエシェゾー(Echezeaux)は、「フラジェ・エシェゾー(Flagey-Echezeaux)」のグラン・クリュです。
エシェゾーは35.8haというコート・ド・ニュイ地区で2番目に大きな面積を持つグラン・クリュですが、第一位のクロ・ド・ヴージョと同じように分割所有が進んでおり、品質もピンキリになっています。
逆にロマネ・コンティ(Romanee-Conti)は、面積わずか0.8haというコート・ド・ニュイ地区最小のグラン・クリュで、生産数はわずかに5000本前後。
そのクオリティの高さとあいまって、恐ろしく高価なワインとしても有名です。
ちなみに上記8つのうち、ロマネ・コンティ(Romanee-Conti)、ラ・ロマネ(La Romanee)、ラ・ターシュ(La Tashe)、ラ・グランド・リュ(La Grande Rue)の4つは、モノポール(単独所有畑)となっています。
主なプルミエ・クリュ
- オー・デシュ・デ・マルコンソール(Audessue des Malconsorts)
- オー・ブリュレ(Aux Brulees)
- オー・マルコンソール(Aux Malconsorts)
- オー・レニョ(Aux Reignots)
- クロ・デ・レア(Clos des Reas)
- ラ・クロワ・ラモー(La Croix Rameu)
- レ・ゴーディショ(Les Gaudichots)
- レ・ショーム(Les Chaumes)
- レ・スショ(Les Suchots)
- レ・プティ・モン(Les Petits-Monts)
- レ・ボー・モン(Les Beaux-Monts )
- アン・オルヴォー(En Orveaux)
- クロ・パラントゥ(Clos Parantoux)
- レ・ルージュ(Les Rouges)
レ・ボー・モン(Les Beaux-Monts )はフラジェ・エシェゾー(Flagey-Echezeaux)とヴォーヌ・ロマネにまたがっています。
下三つはフラジェ・エシェゾーのプルミエ・クリュです。
ニュイ・サン・ジョルジュ(Nuits-Saint-Georges)
コート・ド・ニュイ地区の最南端に位置するアペラシオンです。
(行政区分上ではさらにもうひとつ南にプレモー・プリセ村がありますが、そちらに村名AOCがないため、ニュイ・サン・ジョルジュに統合されています)
村を東西に分断する形で川が流れており、これによって南北で異なる特徴を持つようになっています。
グラン・クリュこそありませんが平均的なポテンシャルは高く、プルミエ・クリュが40以上、全域に散らばる形であります。
グラン・クリュはありません
主なプルミエ・クリュ
- レ・ヴォークラン(Les Vaucrains)
- レ・カイユ(Les Cailles)
- レ・サン・ジョルジュ(Les Saint-Georges)
- クロ・ド・ラ・マレシャル(Clos de la Marechal)
クロ・ド・ラ・マレシャル(Clos de la Marechal)は、プレモー・プリセ村に属する畑です。