ローヌ地方のワイン造り 特徴、製法など
「川沿いの斜面」と「石ころだらけの畑」
ローヌ地方でブドウの栽培が始まったのはローマ帝国が拡大を進めていた西暦前のことです。
フランスでももっとも早い時期に生み出されていたこのワインは、主に現在の「セプタントリオナル(Septentrional)」、つまり北部地区で生産され、最北部の町ヴィエンヌのワインとしてローマ市民に親しまれていたといいます。
しかし、畑が現代のように高品質なブドウを生み出すようになったのはそれよりもずっとあと、14世紀にはいってからのことです。
教皇座の置かれたアヴィニョンを中心に、主に「メリディオナル(Meridional)」、つまり南部地区に高品質なブドウを生み出す畑がいくつも開墾されました。
こうした開発理由や時期の違いから、北部と南部では大きく異なる様子がみられます。
北部では、ボルドー地方のメドック地区やグラーヴ地区のように、川沿いの水はけの良い砂利質の斜面に畑が作られており、整然と並ぶ段々畑が丘を埋め尽くしています。
対して南部の畑は、ローヌ川の左右岸ではありますが川からかなり離れた場所にまで広がっており、緩やかな平野に作られています。
このうち、特に左岸側(東側)の畑は土壌の表面をかなり大きな石が覆っており、一般的な「畑」のイメージとはかなり異なる見た目になっているのが特徴です。
濃厚なワイン
このように地区ごとに異なるテロワールを持つローヌ地方ですが、ワインの質は北部でも南部でも共通した部分があり、全体的にしっかりとした、濃厚なワインになるとされています。
これは、北部では日当たりと水はけの良い斜面、少ない雨、そして昼夜の寒暖差によって果汁が様々な成分を蓄えつつ濃縮されていくスタンダードな理由によります。
特に川沿いの斜面に作られた畑では、通常の日光のほかに水面からの照り返しも受けることになるため、大陸性気候の特徴であるただでさえ長い日照時間をさらに有効活用することができるのです。
しかし南部ではそうした斜面はほとんど見られません。
そのかわり、畑の土壌表面を覆う砂利や石が日光によって温められ、これが気温の下がる夜間にカイロのような保温効果を発揮することで、夜の間も果実の熟成が進みます。
これにより、同じような条件の一般的な畑よりも熟した、糖分も他の成分もたっぷりとのった果汁を得ることができるのです。
極限まで絞った収穫量
ローヌ地方にはいくつも著名な地区や畑があります。
そして、そうした名醸地区では、栽培面積あたりのブドウの収穫量を極端に絞っていることが少なくありません。
例えば、北部地区のもっとも北側にある重要産地「コート・ロティ(Côtes Rôtie)」では、1haあたりの収穫量は4キロリットル以下、南部地区の左岸、アヴィニョン近郊の重要地「シャトー・ヌフ・デュ・パプ(Châteaunuef du Pape)」にいたっては、1haあたりの収穫量は3.5キロリットル以下と定められています。
そのため、面積あたりのワイン生産量が、AOCワインの産出量では劣るボルドー地方とほぼ同等、さらに畑ごとにAOCが認定されているブルゴーニュ地方よりも少なくなっています。
この収穫量の少なさが、果汁の濃縮と完熟を促すテロワールとあいまって、ローヌワインの凝縮感をさらに高めているのです。
3段階のAOC
ローヌ地方では、ボルドー地方のような格付けやブルゴーニュ地方のような畑ごとの等級分けはありません。
ローヌ地方全体をカバーする広域AOCで総生産量の5割以上が属する「コート・デュ・ローヌ(Cotes du Rhone)」、そのうち良質なワインが生産されると認定された「コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ(Cotes du Rhone Village)」、そして固有の名称をAOCとして使用するいくつかの主要産地の、簡単明快な3段階の品質クラスがあるだけです。
ただ、「コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ(Cotes du Rhone Village)」を構成する95のコミューンの中には、さらに特に優良であるとしてコミューン名を付け足すことのできる17のコミューンが含まれており、これをもって4段階とする考え方もあります。
また、主要な産地は北部地区に9、南部地区に13の計22ですが、北部の「シャトー・グリエ(Chateau Grillet)」を「コンドリュー(Condrieu)」に含まれるものとして数えず、計21とするケースもあります。