ミッテルライン ドイツのワイン産地10
位置
ライン川の下流域、ナーエ川との合流地点付近からボン(Bonn)に至るまでの100kmほどの細長い範囲、ライン川両岸に分布するアンバウゲビート(Anbaugebiete)です。
ライン川に西側で接続する主な支流を範囲に含むため、アール(Ahr)、モーゼル(Mosel)、ナーエ(Nahe)とそれぞれ川の合流地点付近で近接し、南端はラインガウ(Rheingau)に接しています。
ライン川沿いでもっとも北まで伸びている産地となっています。
テロワール
土壌は各種粘板岩(スレート)と砂礫質が中心で、火山岩や軽石、粘土層なども見られます。
ライン川沿いで最も北に位置する産地ですが、川沿いに南から暖かい空気が流れ込むことや、川の水自体も保温効果を発揮してくれるため、平均的に温暖な気候に恵まれています。
ドイツ国内でも特にきつい斜度の地域が多く、機械化はもちろん畑の拡大も容易ではない厳しい地形を持ちます。
ただ、その斜面のおかげで日照を十分に得ることができ、高品質なブドウが生み出されています。
年間降水量は600ミリ弱で、土壌の保水力の高さからすると多くも少なくもないちょうど良い量であるといえるでしょう。
ワイン造り
非常に傾斜の厳しい斜面を利用しているため、条件は優良ながら小さな産地となっています。
栽培面積は462ヘクタール(約4.6平方キロメートル)、ワイン生産量は約0.3万キロリットルほど。
ベライヒ(Bereich)は2つあり、グロースラーゲ(Groslage)は10、アインツェルラーゲ(Einzellage)は111です。
主なブドウ品種は、白ブドウはリースリング(Riesling)、黒ブドウはシュペートブルグンダー(Spätburgunder、=ピノ・ノワール)。
そのほか、ミュラー・トゥルガウ(Muller Thurgau)も多く栽培されています。
全体的に伝統的な品種、そして生産量の少なさとコストの高さ(傾斜がきついため全て手作業)をカバーできる高級品種が主に栽培されており、リースリングが70%近い割合を占めます。
近年は黒ブドウの栽培も増えているようですが、それでも赤ワイン:白ワインの比率は、約15:85。
モーゼル川と合流する付近までは主に左岸、それより下流では主に右岸に畑が設けられています。
生産されたワインはほとんどが観光地でもある地元で消費されるため国外ではほとんど手に入りませんでしたが、近年ではインターネットの発達により直接通販を行う生産者も増えてきているようです。
ベライヒ(Bereich)
ローレライ(Loreley)
ミッテルラインのベライヒのうち、上流側に位置する地区です。
ライン川の中島に建つプファルツ城を少し越えたあたり、川幅が細くなって曲がりくねるライン川くだりの難所に差し掛かるあたりにある150mほどの巨岩が名の由来となっています。
ごつごつした火山岩土壌や黄土層などの地質はリースリングの栽培に適しており、あまり酸味のきつくないすっきりとした白ワインを生み出します。
生産量は少ないのですが、流域には多くの観光名所と宿泊施設やレストランが並んでおり、現地を訪ねればワインを心行くまで楽しむのも難しくはありません。
ジーベンゲビルゲ(Siebengebirge)
ミッテルラインのベライヒのうち、下流側に位置する地区です。
南部よりも斜面が切り立っており、火山岩の割合が大きいのが特徴です。
その黒っぽい岩盤が熱を吸収してカイロのように保温効果を発揮することや、高緯度地域で日照時間が長いことなどから、ローレライよりも赤ワインの比率が高くなっています。
さすがに熟成度はあまり高くならず軽めの仕上がりになりますが、フルーティで口当たりのよい赤ワインは、たっぷりしたミネラル感を持った白ワインとともにこの地区の顔として知られています。