プーリア州 南イタリア4
プーリア州(Puglia)とは
プーリア州はイタリア半島の南東の端、アドリア海の出口に位置する州です。
カンパーニャ州(Campagna)、モリーゼ州(Molise)、バジリカータ州(Basilicata)に州境を接し、アドリア海とイオニア海に面しています。
古くはギリシャとイタリア半島を結ぶ航路の玄関口として栄えた地域で、州都バーリはカンパーニャ州のナポリ、シチリア州のパルレモと合わせて南イタリアの歴史的中心地のひとつとして知られていました。
ローマ帝国時代には穀倉地帯として活用され、麦や油を大量に産出していましたが、ブドウについては他の主要産地ほどではなかったようです。
15世紀のアラゴン王家(後にスペイン)の支配期間は、南イタリアでは珍しく地方の有力貴族の力が強く、地主のように振舞っていました。
イタリア統一後、特に第二次世界大戦後に大規模な農地改革が行われ、その結果としてワインの生産量が増大。
現在ではイタリア全体で見てもトップになりうるほど大量のワインを生産しています。
イタリア半島の州の中では例外的に山岳地の少ない州で、割合はわずか2%ほど。
平地が半分以上の53%を占め、残りは丘陵地となっています。
温暖な地中海性気候を有し、雨が非常に少ないため、ブドウの栽培に適しています。
土壌は石灰岩を多く含む砂質や泥質が主体で、テロワールを生かせばかなり高品質なワインを産出できるポテンシャルを持っているとされています。
プーリア州のワイン造りに関する歴史
現在プーリア州と呼ばれている地域は、早い時期からミケーネ人やギリシャ人がきて住み着いていた土地で、東方との船での行き来の拠点として複数の町がローマ以前から港湾都市として発達しました。
当然、ワインの生産も行われていたと考えられていますが、他の産地のようにはっきりとこの時代から伝わっているとされる主要ワインはないようです。
ただ、使用されるブドウ品種にギリシャから伝わったものが指定されていたり、ギリシャ風の甘口赤ワインも多いなど、影響は随所に見られます。
ローマ帝国の属国になったあとは、その広い平野と気候の良さを生かして穀物や油の生産地として活用されました。
帝国崩壊後は様々な勢力による支配権の交代が相次ぎ、シチリア(ナポリ)王国領を経て15世紀にアラゴン王家の支配地域となります。
このスペインによる支配期間には、オスマン帝国やヴェネツィア共和国からの侵攻が頻繁に行われたこともあり、地域を治める貴族が大きな力を持ち地主のように振舞っていました。
ただ、北部の地域のように、それによって小作人となった人々の居住範囲が分散したり、ワインの生産量が一気に増加して品質の向上やワインを飲むという習慣の定着が起こったりはしませんでした。
プーリア州でもワイン産業の発展が起こるのはイタリア統一後、厳密に言えば第二次世界大戦後を待たねばならなかったのです。
大規模な平地と温暖で乾燥気味の気候を持つプーリア州は、低品質なテーブルワインやバルクワインの大量生産を行うのにうってつけで、20世紀末ころまで「ヨーロッパの酒蔵」との異名を取るほどでした。
しかし、イタリアの他の地域と同じように次第に「量より質」へと方針を転換し、特に今世紀に入ってからは目覚しい変化を見せています。
プーリア州のワイン造り
プーリア州はワインの一大生産地で、常にヴェネト州やシチリア州、エミリア・ロマーニャ州とイタリア全体での生産量トップを争っています。
しかし、その大半が安価で低品質なテーブルワインかバルクワイン(原料ワイン)となっており、DOPワインの比率は15%弱です。
バルクワインはイタリアだけでなく他の国のテーブルワイン用に輸出されてもいるため、プーリア州は一時期「ヨーロッパの酒蔵」の異名をとっていたこともあります。
ただ、近年では「量より質」へと方針を転換したこともあり、全体的に品質が向上。
2011年にはそれまで0だったDOCGワインが4つ認定を受け、20世紀中は一桁台だったDOCG・DOCワインの割合も増加してきています。
プーリア州に当たる地域は古代からギリシャ方面との航路の玄関口に当たり、東方文化の多く流入する土地でした。
そのため、現在でもブドウ品種やワインのタイプにギリシャの影響が見られるものが少なくありません。
例えばDOCG級DOPワインの「カステル・デル・モンテ・ネロ・ディ・トロイア・リゼルヴァ(Castel del Monte Nero di Troia Riserva)」と「カステル・デル・モンテ・ロッソ・リゼルヴァ(Castel del Monte Rosso Riserva)」は、「ネロ・ディ・トロイア(Nero di Troia)」というブドウ品種を使用しますが、これはその名前からも分かるようにギリシャ人の都市・トロイアで栽培が始められたと言われている古代品種です。
また、DOPワインには古代ギリシャ風の甘口赤ワインがいくつも含まれています。