ワイン先物取引のメリット・デメリット 資産としてのワインその3

目次

生産者と購入者双方にメリットが ワイン先物取引とは

 ワインの先物取引とは、一般市場に出回る前のワインをチェックし、良質なものを購入しておき、後日販売する手法のことです。
いわゆるワインの青田買いで、フランス、ボルドーの「アンプリムール」など、伝統的に行われている地域もあります。
熟成中のワインを試飲して価値を見極めねばなりませんので、通常のテイスティングとは違った知識と経験が必要になりますが、一般的には市場に売り出されるよりもかなり安価に購入できるため、うまくすれば販売開始直後から大きな利益を出せるようになる可能性もあります。
また生産者側からしても、熟成中のワインに値がつくことによって、販売前に資金を回収できるというメリットがあります。
場合によっては数年樽熟成をさせるフルボディの赤ワインなどの場合、本来だと熟成が終わって出荷されるまではお金になりませんが、その間も毎年ワインを作るための資金が必要です。
余裕のない生産者の場合、先に現金化されることによって資金繰りが改善するとともに、望ましい状態まで熟成する前に泣く泣く出荷する、という事態を避けることもできるのです。
多くの場合、樽単位で買い手がつきますが、高価なものや仲介業者がはいる場合は瓶単位のこともあります。

より良いワインをより安く ワイン先物取引のメリット

 先物取引の最大のメリットは、なんと言ってもその安さです。
生産者側も先に売れるとメリットがあるため、ほとんどの場合市場で売りに出される予定価格を大きく下回る値段で購入することができるようになっています。
理想的にことが進めば、ほんの数年で大きな差益を得ることができるのです。
また一般市場に出る前なので、地域や生産者のブランド以外、評価がなされていないのも大きな特徴です。
無名でも良質なワインはあるため、感覚が優れていれば掘り出し物に出会える可能性も十分あり、その場合はさらに利益が拡大します。

 上で書いたように、先物取引での熟成中のワインの売買ができることは多くの生産者にとってもありがたいことなので、試飲に回るとただの見学者よりもしっかりと対応してくれます。
バイヤー任せではなく自分自身で試飲に回り、話をするだけでなく毎年購入もしていれば、いわゆる「お得意さん」として扱ってくれることも。
生産者との交流はそれだけでも価値のあるものですが、同時に産地に人脈を作ることができるのも大きなメリットといえるでしょう。

目論見が外れれば大きな損害がでることも ワイン先物取引のデメリット

 先物取引は通常生産者対販売者で行う取引で、一般人が個人で参加するのはかなり難しいため、基本的にはバイヤーが買い付けたものを代行業者を通して入手することになります。
もし一般にも売ってくれたとしても、販売に関するルートがなければ市場で売って利益を得ることができません。
(もちろん、自分で飲むために買ってもよいのですが、それには量が多いでしょう)
どの業者のテスターもプロであり、しっかり吟味してよいものを選んではくれますが、それでも目論見が外れるケースは良くあります。
新酒の状態では良かったのに熟成したら平凡になってしまうものや、思ったように味や香りが乗らなかったもの、予想通り熟成したのに他のもっと良いものとの競争に負けて値が下がるものも。
ひどいケースだと、先物で購入したより市場で売りに出た価格のほうが安かったなんてこともあるようです。
当然、差額分は損になってしまいます。

 近年では特に、予想額を大きく下回るケースも増えてきているようです。
技術の発展によっていままでは無理とされてきた土地でもブドウ栽培とワイン造りができるようになり、消費者の評価や求める味が今までとは変わってきていたり、地球規模での気候変化でワインの出来にも影響が出るようになってきているのです。
運用する際には、十分なリスクヘッジと覚悟が必要となるかもしれません。