その他の製法で作られたスパークリングワインの熟成方法 熟成方法と飲み頃その4
シャンパーニュ(トラディッショナル)製法以外にも、スパークリングワインはいろいろな手法で造られています。
それぞれ異なる特徴がありますが、なかでも一番違いが出るのが熟成の工程です。
スパークリングワインにとって、炭酸ガスを含有させる二次発酵と、それを生かしたまま味わいを深める熟成の重要度は、全醸造工程の中でも大きなウェイトを占めているといえます。
シャルマ方式
シャルマ方式は、二次発酵と熟成を瓶内ではなくタンク内でまとめて行う手法です。
調合(アサンブラージュ)を済ませた原酒ワインを密閉したタンクに詰め、シャンパーニュ方式と同じように酵母と糖分を添加します。
二ヶ月ほどに渡る二次発酵中、気密性の高いステンレスタンクが巨大な瓶のようにガスを閉じ込め、発生した二酸化炭素がワインの中に溶け込んでいきます。
瓶に比べて温度や圧力を調整しやすいため、発酵の進み具合の微調整も容易で、労力を大きく削減できることから品質に対して安価に造ることが可能になります。
熟成工程も当然タンク内で行います。
発生する滓はタンクの底に溜まるため、形状を工夫することで動かさずとも広い面積でワインと接触させることができるのです。
熟成期間は製品によって異なりますが、シャンパーニュ方式よりは短めにとるものが多いようです。
これは温度や滓との接触をコントロールすることによって熟成を早められるからですが、そうすることでよりコストを抑えて造ることができるからでもあります。
熟成終了後は、そのまま新しい瓶に詰めることができるため、動瓶(ルミュアージュ)を行う必要もなく、ガスの放出もほぼゼロに抑えられます。
基本的にタンク内二次発酵と熟成以外はシャンパーニュ方式と同じ基準で造られるため、アルコール発酵後二次発酵前で保管されるリザーブワインでの熟成も同じように行われます。
できるだけ風味が変わらないようにステンレスタンクで熟成するものもあれば、樽からコクや香りを積極的にうつして微量の酸化熟成を進めるものもあります。
十分に品質が高いものであれば、瓶詰め・出荷後も長期間の熟成が可能です。
シャンパーニュ製法のワインでは高価すぎてなかなか手が出ませんが、シャルマ方式で造られたものなら良質なものでも比較的安価に購入できますので、熟成による味わいの変化も手軽に楽しめるかもしれません。
トランスファー方式
トランスファー方式は、瓶内熟成後にワインを一度加圧タンクにあけ、新しい瓶に詰めなおす手法です。
シャルマ方式よりもシャンパーニュ方式に近く、滓の抜き方が違うだけともいえます。
当然、瓶内熟成の条件もシャンパーニュ方式と同じです。
瓶詰め時に添加される糖分と酵母によって二次発酵が起こり、その際に発生する滓の上で1年から数年の熟成を行います。
ただし、熟成を行った瓶から滓を抜いて同じ瓶で出荷されるシャンパーニュ方式と違い、別の瓶に詰めなおすトランスファー方式では滓を移動させる必要がないため、動瓶(ルミュアージュ)は行いません。
そのため瓶内熟成の全期間において、滓と最大面積で接触した状態にしておくことができるのです。
これは当然、コストの大きな削減にも役立ちます。
熟成終了後は炭酸ガスが抜けないよう加圧されたタンクにワインをあけ、あとはシャルマ方式と同じように瓶詰め、出荷されます。
リザーブワイン時点と、出荷後の長期熟成も同条件になります。
メトード・リュラル方式
メトード・リュラル方式はシャンパーニュ方式の基となったとされる、最も古いスパークリングワイン造りの手法です。
一次発酵の途中でワインの温度を下げて酵母の働きを抑え、瓶詰め後にその続きの発酵が起こることで発泡性を獲得します。
もともとは、修道士のピエール・ペリニョンがスティルワインの意図しない再発酵を防ぐために早期に瓶詰めしたことで偶然発見した手法とされており、基本的には糖分や酵母の添加などは行いません。
そのため、他の方式に比べてガス圧は低く、2.5気圧程度です。
アルコール発酵まではスティルワインと同じなので、瓶詰め前の熟成は行われず、シャンパーニュ方式のような二次発酵による大量の滓も発生しません。
発酵が終了したあとの熟成も、基本的にはあまり長期間行わずに出荷されるようです。
ワイン法で規定を受けるスパークリングワインとしては早飲みの部類にはいるかもしれませんが、控えめで繊細なやさしい泡は通常のスパークリングワインの炭酸では強すぎるという人々を中心に好まれています。
炭酸ガス注入方式
スティルワインなどに二酸化炭素を吹き込み、発酵に由来しない炭酸を持たせる手法です。
基本的に安価なスパークリングワインの製造に使用される方式で、高品質なワインが原料となることはほとんどありません。
そのため、この方式で造られたスパークリングワインは、長期間の熟成に耐えない早飲み系のワインであると考えて間違いないでしょう。
購入後はあまり長期間寝かせずに、早めに飲んでしまったほうがおいしくたのしめるはずです。
ガスも比較的抜けやすいものが多いので、一人でじっくり飲むよりもパーティなど大人数で短時間に飲んでしまった方が良いでしょう。