ペイナンテ地区 ロワール地方のワイン産地1
ペイナンテ(Pays Nantais)地区
ペイナンテ地区は、ロワール地方のもっとも西側、ロワール川が大西洋に注ぐ河口付近の地域です。
ブドウ畑はロワール=アトランティック県の県庁所在地であるナント市(Nantes)があるロワール川の左岸が中心になります。
古くはブルターニュ公国領であり、多くの反乱や戦争を経験した土地でもあります。
石灰岩の土壌を持ち、「ミュスカデ(Muscadet)」を原料とする白ワインでよく知られています。
ペイナンテ地区のワインの歴史
この地区ではじめてワインが造られるようになったのは、3世紀頃のことであるといわれています。
石灰岩の土壌と長い日照時間という白ブドウの栽培に適したテロワールを持つこの土地は、しかし繰り返し起きる侵略や反乱、宗教対立などに翻弄され、他の北部の地域のようなブドウ産地としての順調な発展を見ることはできませんでした。
特に1500年代に頻発したペストの流行や新旧宗教対立の激化した16世紀には、ナント市を中心に大打撃を受けました。
17世紀以降、ルイ14世の治世にはいってしばらくは安定した期間が続きましたが、18世紀初頭には歴史的な寒波に襲われブドウが全滅。
その教訓から、霜害に強い性質を持つミュスカデが植えられるようになったのです。
19~20世紀にかけては海運業や砂糖の生産が主要産業となっていましたが、時代の移り変わりと共に少しずつワイン産業も回復。
2011年には新規に昇格したAOCも追加されています。
ペイナンテ地区のワイン
ペイナンテ地区の最大の特徴は、やはりなんといっても「ミュスカデ(Muscadet)」です。
これはもちろん白ワインの原料となるブドウの品種名でもありますが、じつはペイナンテ地区においてはこれそのものがAOCとして認定されています。
ブドウの品種名がそのままAOCとなるのは非常に珍しく、ミュスカデがどれだけこの地区の代表的なブドウであるかがわかります。
ミュスカデは辛口の白ワインで、強い酸味を持つさっぱりとした風味が特徴です。
同じ品種を使用したワインで、さらに詳細に産地を限定したAOCが3つあります。
そのうち最大の面積を持ち、ミュスカデ全体の9割以上を生産するのが、ナント市の東側に広がる「セーヴル・エ・メーヌ(Sevre-et-Maine)」です。
また、ペイナンテ地区では滓引きをせずに熟成を進める「シュル・リー(Sur Lie)」も一般的な手法となっており、全体の半数近くがこの方法で造られています。