その他の国の主要な黒ブドウ品種 赤ワイン用ブドウその7

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アルゼンチン

マルベック(Malbec)

 フランス南部原産の赤ワイン用ブドウ品種です。
果皮が厚く色素が多いため、俗に「黒ワイン」と呼ばれるほど濃い色の赤ワインになります。
含有するポリフェノールの量が他の品種よりも多く、健康効果が高いワインとして注目されることもあるようです。
アルゼンチン以外では、フランスのボルドー地方でも栽培されていますが生産量はごくわずかで、フランスの中ではカオール地方がメインの栽培地となっています。
色から連想されるようにしっかりしたタンニンがボディの厚みを生み、果実味と酸味も強い長期熟成に適したワインになりますが、口当たりは意外にも柔らかなものが多く、若いうちでも飲みやすい品種であるといえます。
単独使用のほか、色の濃さや複雑味を付加するために他の品種にブレンドされることもあります。

オーストリア

ブラウアー・ツヴァイゲルト(Blauer Zweigelt)

 オーストリアを原産とする赤ワイン用ブドウ品種です。
単に「ツヴァイゲルト」と呼ばれることもあります。
1922年にブラウフレンキッシュとサン・ローランの交配種として人工的に作られたブドウであり、オーストリアでもっとも栽培面積の大きい黒ブドウ品種(ワイン用ブドウ全体の10%、黒ブドウに限れば1/3以上)でもあります。
タンニンが強いものの酸味が際立っており、早飲み用からオークの小樽熟成の高級ワインまで様々に利用されています。
寒冷な気候にも耐えるため、カナダやハンガリー、そして日本の東北地方や北海道でも栽培されています。

ハンガリー

カダルカ(Cadarca)

 バルカン半島原産の、ハンガリーを代表する赤ワイン用ブドウ品種です。
オスマン帝国の侵略から逃げ延びたセルビア人が持ち込んだとされる非常に古い品種で、社会主義時代に他品種への植え替えが進んで一時期作付けが激減しましたが、地元の人々の愛着が強く、近年はまた生産量が増加してきています。
すっきりとした酸味と軽い味わいが特徴で、色もタンニンも薄めのライトな赤ワインになります。

ルーマニア

フェテアスカ・ネアグラ(Feteasca Neagra)

 古い歴史を持つ品種が多いルーマニアの中でも、最も古いとされている古代の赤ワイン用ブドウ品種です。
名前の意味は「黒い乙女」で、華やかで若々しくありつつも、どこかミステリアスな複雑な香味を持つことから名付けられたとされています。
果汁の含有糖分量が非常に多く、アルコール度数も高めになるため、長期熟成に向く品種といえます。

チリ

カルメネール(Carménère)

 フランスのボルドー地方原産で、現在はチリを代表する赤ワイン用ブドウ品種です。
フィロキセラや需要の変化によってヨーロッパでは100年以上前に姿を消した品種でしたが、それ以前にチリに輸入されていた苗が生き延びて栽培されていたことが近年判明しました。
栽培され続けてきたのになぜ近年なのかというと、20世紀末にDNA検査によって正体が判明するまで、メルローだと思われていたからです。
果実の特徴もメルローに良く似ていて、深いルビー色の水色を持ちつつもタンニンは柔らかく、豊かな果実味を感じさせる早飲み系のワインに適しています。
また、収穫量を絞って濃縮させたものだと、草や土っぽい野生的な香りとたっぷりとしたボディの力強い味わいを楽しめるようにもなります。
いままではメルローだと思われていたため現在試行錯誤の最中という生産者も多く、長い歴史を持っているにもかかわらず今後が楽しみな品種であるといえるでしょう。

南アフリカ

ピノタージュ(Pinotage)

 南アフリカ共和国で人工的に作り出された赤ワイン用ブドウ品種です。
1925年にステレンボッシュ大学の教授だったアブラハム・イツァーク・ペロルド氏によって分離された品種で、ピノ・ノワールとエルミタージュを親に持ち、作り手や畑によって大きく性質を変えるのが特徴となっています。
基本的には色味や渋み、酸味が強く、輪郭のはっきりとした味わいになりやすく、スモーキーで複雑な香りを持ちます。
ただしタンニンは比較的柔らかめで、ボディも重過ぎるということはなく、よく比較されるカベルネ・ソーヴィニヨンよりも親しみやすいワインに仕上がるようです。
性質の振れ幅が大きいため、数本飲んだくらいでは特徴をつかむのは難しく、長く付き合って正体を確かめていきたい品種といえます。