アンジュー&ソーミュール地区 ロワール地方のワイン産地2

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アンジュー&ソーミュール(Anjou&Saumur)地区

 アンジュー&ソーミュール地区は、ペイナンテ(Pays Nantais)地区の東側、主にロワール川の左岸に広がる産地です。
片岩質、及び石灰質の土壌を持ち、特に白亜質の石灰岩土壌は「テュフォー(Tuffeau)」と呼ばれます。
ロゼワインの生産が盛んで、産地や使用品種によって異なる複数のAOCが認定されています。
赤や白のロゼワインはもちろん、スパークリングワインや貴腐ワインも造られている、バラエティ豊かな地区です。

アンジュー&ソーミュール地区の歴史

 この地域での最初の歴史的な重要拠点は、ロワール川の右岸に位置する都市、アンジューといえます。
この都市は、12世紀以降イングランド、そしてフランスのアキテーヌ公国領を支配したプランタジネット朝の発祥の地であり、ポーランドやハンガリーなど周辺諸国の王が複数輩出されている町でもあります。
しかし、時代が進むにつれて次第にその役目は左岸のソーミュールへと引き継がれていきます。
ノルマン人の侵略に対抗するために築かれたソーミュール城は、後にアキテーヌ地方がイギリス領となる原因となったヘンリー2世が改修して使用し、フランスとの間で所有権が何度も行き来した重要な拠点となりました。
現在、主要なワイン畑は左岸に集中していますが、そちら側にも「アンジュー」を名乗る地区が点在しているため、ワイン造りにおける重要度の点ではどちらの地名も同等となっています。

アンジュー&ソーミュール地区のワイン

 アンジュー地区のワインで最も有名なものは、何と言ってもロゼワインです。
使用する品種や栽培地域でAOCが分かれており、グロローという品種を中心に使用する甘口の「ロゼ・ダンジュー(Rose d'Anjou)」、カベルネ・フラン主体でやや辛口の「カベルネ・ダンジュー(Cabernet d'Anjou)」、アンジュー&ソーミュール地区はもちろんさらに東のトゥーレーヌ地区の一部までを栽培地域に含む辛口の「ロゼ・ド・ロワール(Rose de Loire)」の3つに分類されます。
「アンジュー」を名乗る土地がなぜかいくつもあるのも面白い特徴となっています。
対してソーミュール地区は、主にスパークリングワインで知られています。
シャンパンと同じシャンパーニュ(トラディッショナル)方式で、瓶内二次発酵を経て造られる「ソーミュール・ムスー(Saumur Mousseux)」と、同じ製法でガス圧がやや低め(3.5気圧)の「クレマン・ド・ロワール(Cremant de Loire)」が有名。
どちらもシュナン・ブランがメインで辛口のすっきりとしたスパークリングワインです。
また、ソーミュールは貴腐ブドウ、もしくは過熟のブドウで造られる極甘口の果汁濃縮系ワインも多く産出しており、主なものでも6つのAOCが認定されています。
このほか、10年近い熟成を要するようなしっかりとした赤ワインや、チョーク質の石灰岩土壌が育むミネラル豊富な白ワインもあり、フランスのワイン産地の中でもバラエティに富んだラインナップを誇る地域であるといえるでしょう。