バーレーワイン、ライスワイン(日本酒) 穀物ワインとは
厳密には「ワイン」ではない? 穀物ワインとは
「ワイン」と名前がつきますが、「ブドウを使用した醸造酒」という本来の意味でのワインでは当然ありません。
「ワインと同じくらいのアルコール度数」、もしくは「ワインと同じような製法(醸造酒)である」という程度の意味合いで使用されています。
穀物を原料とする場合、アルコール発酵に必要な糖分はそのままの状態では含まれていませんので、発酵を始める前に一工夫必要です。
バーレー(大麦)ワイン
その名のとおり、大麦を原料として使用します。
ワインと名が付いていますが、実際には「ワインと同じくらいのアルコール度数(8.4~12%)」を持つビールです。
大麦は、発芽する際にでんぷんを糖分に分解する酵素を発生させます。
この作用を利用して、「大麦を発芽させて麦芽にする→糖度が十分高まった所で煎って酵素を止める→煮込んで糖分などを溶け出させ、その茹で汁(麦汁)を発酵させる」というのが通常のビール作りの工程です。
バーレーワインの場合は普通のビールよりも高いアルコールを得るため、麦芽を大量に使ったり糖度の高い一番搾り麦汁だけを使用したり、発酵が進んでアルコール度数が高くなっても弱りにくい酵母を使ったりと、いろいろな工夫を施しながら造られています。
バーレーワインは他のビールよりもアルコール度数が高いため、比較的長期間の保存・熟成が可能です。
特に10%を超えるアルコールを含有するものは、十年、二十年といった単位の熟成も可能ですので、子供の誕生年のものを成人のお祝いまで寝かせておいたり、気に入った銘柄を数年おきに開けて変化を楽しむなど、まさにワインのような楽しみ方をされています。
ライスワイン(日本酒)
ご存知、日本を代表する醸造酒、日本酒です。
日本酒の平均アルコール度数は15%前後、原酒系であれば18%以上になりますので、「ワインと同じ製法で造られるお酒(蒸留酒でなく醸造酒である)」という意味で、ワインと名乗っているものと思われます(この呼び名が使われ始めたのは、日本酒の輸出が盛んになった近年のことです)
お米もそのままでは糖分を持たず、しかも大麦のような自分ででんぷんを分解する仕組みを持ちませんので、麹菌という微生物に手助けしてもらいます。
日本酒の醸造は、「麹菌がお米のでんぷんを糖に分解(米麹)→米麹を少量の水と蒸し米と合わせておくことで乳酸菌が酸を発生(酒母)→そこに酵母を入れ、段階的に水と蒸し米を追加していくことで、でんぷんが糖に、糖がアルコールになる」という、菌のバトンリレーのような工程で行われているのです。
ワインの例から分かるように、液中のアルコール濃度がある程度高くなってくると、酵母の働きはどんどん弱まっていきます。
そのため、単純に醸造を行った場合、15%を超えるアルコール度数を得ることは困難とされています。
しかし日本酒は、酒母に蒸し米や水を一度に混ぜず三回に分ける「三段仕込」と、麹菌の活動を止めずにでんぷんの分解が続いている状態で酵母菌と合わせる「並行複発酵」という手法で、この問題をクリアしています。
これは酵母菌への糖分供給をコントロールすることで酵母の活性が高い状態を維持し、結果として20度近い高アルコールを醸造だけで得るという、非常に高度な技術です。
現在では様々な理由から長期熟成の日本酒は主流ではありませんが、消費者の嗜好や食事の変化、そして海外からの評価によって、今後はおいしい熟成日本酒が飲めるようになるかもしれません。