ナーエ ドイツのワイン産地5

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位置

 ドイツ南西の主要産地が固まっている地域の北西、ライン川支流のナーエ川流域に広がるアンバウゲビート(Anbaugebiete)です。
北西にモーゼル(Mosel)、北にミッテルライン(Mittelrhein)とラインガウ(Rheingau)、東にラインヘッセン(Rheinhessen)、南東にファルツ(Pfalz)と、多くの産地に囲まれた立地にあります。

テロワール

 土壌の多彩さが特徴で、ムッシェルカルク(貝殻石灰岩)やコイパー(泥土岩)、シーファー(粘板岩)などはもちろん、黄土、火山岩、斑岩、ローム層など、ドイツでもっとも多くの地質が見られるとも言われています。
ナーエ川上流では冷たい空気が流れ込んでくるためやや寒冷な気候ですが、それ以外では基本的に温暖で穏やかな気候帯に属し、日照時間の長さや川からの照り返しなどの影響もあり、ブドウの熟成を期待できる地域となっています。
温泉地としても知られるほど火山活動の活発な地域で、ごつごつとした荒れた土壌を持つ地域も少なくありません。
特に「ローテンフェルス(Rotenfels=赤い岩)」と呼ばれる巨岩は有名で、その斜面にも同名のブドウ畑が作られています。

ワイン造り

 生産量や品質、知名度で上位に来る名だたる産地に囲まれており、面積や生産量は控えめながら多様な特徴を持つバラエティ豊かな畑が広がっています。
栽培面積は4172ヘクタール(約41.7平方キロメートル)、ワイン生産量は約2.8万キロリットルです。
ベライヒ(Bereich)はひとつだけ、グロースラーゲ(Groslage)は6、アインツェルラーゲ(Einzellage)は284となっています。
主なブドウ品種は、白ブドウはリースリング(Riesling)、黒ブドウはドルンフェンダー(Dornfelder)。
そのほか、ミュラー・トゥルガウ(Muller Thurgau)、シルヴァーナー(Silvaner)、シュペートブルグンダー(Spätburgunder、=ピノ・ノワール)なども栽培されています。
複雑な地形と非常に多彩な地質から、「ドイツワインの試飲小屋」の異名を取るほどバラエティ豊かなワインが生み出されます。
隣り合った畑でもまったく違う適性を持つことも多いため、栽培されるブドウ品種も多岐に渡りますが、やはりどちらかというと白ブドウの割合の方が高くなっています。
赤ワイン:白ワインの比率は、約25:75。
気候的な条件が合いやすい下流域のほうが、比較的赤ワインの生産量が多くなっているようです。

ベライヒ(Bereich)

ナーエタール(Nahetal)

 ナーエの唯一のベライヒです。
当然、ナーエ全域をカバーしており、一言では表せないほど様々な性質を持つ畑が混在しています。
ナーエ川上流域は冷たい空気が流れ込むためブドウの熟成を得にくく、ミュラー・トゥルガウやシルヴァーナーなど早熟な白ブドウに適していますが、下流域は温暖で穏やかな気候帯に属するため、リースリングや黒ブドウ品種の栽培が盛んです。
しかし、隣あった畑でもまったく異なる地質を持つことも珍しくないため、同一地域でも全然違う品種が選ばれるケースも多いようです。
国際的にも注目される畑や生産者も増えてきており、知名度の向上しつつある生産地だといえるでしょう。