シーン別 テイスティングを行う意味について

目次

 ワインの外観や味、香りを評価するテイスティング。
 グラスをくるくる回すスワリングや空気を含ませながらしゅるしゅると音を立てる飲み方など、ソムリエっぽい動作として憧れる方も多いのではないでしょうか。
しかし、実はテイスティングの方法はそれだけではありません。
ワインをチェックする目的や状況によって正しいやり方が異なる場合もあるのです。
ここでは、テイスティングを行う意味をシーン別に確認していきましょう。

レストランでボトルワインを注文した際

 ボトルワインを注文した時にするテイスティングの目的は、ワインの品質確認です。

 ソムリエが在籍しているようなしっかりしたレストランでボトルのワインを注文すると、開栓時に目の前で抜いたコルクと少量を注いだグラスを渡され、テイスティングを求められるのが一般的です。
これは、注文どおりのワインをごまかしなく持ってきました、という証明と、ブショネなどの不具合が起こっていないかを確認するのが目的です。
現代の日本ではあまり考えられないことですが、有名なワインのボトルに別のワインを入れて持ってくる、という不正を行う(もしくはそれを疑われる)のを避けるためには、目の前で開栓するのがもっとも簡単で効果的です。
しかし、ブショネや還元臭の発生など、ワインに起こっている不具合は大抵の場合開けてみるまで分かりません。
そこで、ブショネの発生源となるコルクの香りとワインを客自身がチェックするのです。
品質のチェックだけが目的なので、通常のテイスティングのようにじっくり吟味するのではなく、異臭などの違和感や異常なにごりなどがないかだけを短時間で確認しましょう。

パーティなど他の人といるとき

 パーティなどで行うテイスティングの目的は、コミュニケーションです。

 ワインのテイスティングを目的とした集まりでない限り、家族や友人、恋人とワインを楽しんでいるときに、大きな音を立てて啜りこんだりワインの分析に没頭したり、聞かれてもいないのに長々と解説するのは基本的にマナー違反です。
ワインを楽しむ行為や自分自身に対しての不審や不満を生むだけですので、極力避けたほうがいいでしょう。
しかし、だからといってワインを飲むことや話題とすることまで諦める必要はありません。
ワインは非常に多くの情報を持つ飲み物です。
生産地や原料となるブドウ、醸造法、味わいや香りなどをテーマとして、お互いの感想を聞きあうという形で話題にしてみるのはいかがでしょうか。
1人では思いもしなかった感想から、同じワインに対しても新しい捉え方を発見できるかもしれません。

自宅やバーで一人

 1人でワインを飲む際に行うテイスティングの目的は、ワインの評価と分析です。

 自室に1人でいるときやワインバー、レストランなどで1人でいるときこそ、ワインと向き合うための最良の時間です。
このシーンでは、そばに控えて返答を待つソムリエも、マナーを気にするべき他人もいません。
(お店の場合は、他のテーブルのお客への配慮は忘れないようにしましょう)
グラスをいろいろな角度から観察したり、スワリングなど様々なテクニックを駆使しての外観、味、香りなど基本的なテイスティングはもちろん、産地や製法、そのワインに関わるエピソードなど、ワインを様々な角度から吟味し楽しみます。
また、テイスティングの技術を磨いたり、ソムリエやワインエキスパートなどの資格取得のための勉強もここで行うのが良いでしょう。

投資用ワインをチェック

 投資用のワインをテイスティングする際の目的は、将来の価値の見極めです。

 目の前のワインそのものを評価、分析する他のテイスティングと一線を画すのがこのシーンでのテイスティングです。
投資用のワインとは、流通前の醸造途中のワイン、もしくは販売され始めてから日の浅い熟成途中のワインのこと。
当然、そのワイン本来のおいしさはまだ備わっておらず、飲んでもあまりおいしくありません。
しかし、将来十分に価値が上がって利益を出せるかどうかは、そのワインがどれだけおいしくなるかにかかっているため、このテイスティングでワインの持つポテンシャルを量るのです。
このシーンでは、現在の味わいや香りから将来の姿を予想するという、通常のテイスティングとはまったく違う能力が要求されます。
一般人にはあまり縁のない、まさにプロのテイスティングと言えるでしょう。