山形県 日本のワイン産地2

目次

山形県とは

 山形県は本州北部、東北地方5県のうち南西に位置する県です。
東北地方の中では割合と温暖な方ですが、ほぼ全域が冬季には相当量の降雪のある特別豪雪地帯となっています。
海側と内陸側で大きく異なる気候を持っており、特に南東部がブドウの産地に適したテロワールの地域として有名です。
果物の生産が盛んで、ブドウはワイン用はもちろん食用も多く作られており、他にさくらんぼやもも、ラフランスなどの名産地として知られています。
米の生産量も多く、本州における主要な食料生産地といえるでしょう。

山形県のワイン造り

 山形県はもともと果物の栽培に適した土地を持っていたため、ブドウの栽培もワイン造りが行われるずっと前から行われていました。
食用ブドウの生産は江戸時代初期の頃から続いているといわれており、300年以上の歴史があるのです。
そのため、日本で国産のワイン造りが始まった19世紀末には、山梨県と同時期に山形県でも多くのワイナリーが立ち上げられました。
山の斜面を利用したブドウ畑は日本の中ではかなり水はけが良く、昼夜の寒暖差の激しい乾燥した夏の気候の影響もあり良質なワイン用ブドウが生産できるため、最盛期には50を超えるワイナリーが軒を連ねる町もあったそうです。
その後、ワインの需要の縮小や方向性の変化から生産者数は減少してしまいましたが、現在でも国内の主要なワイン産地として数えられています。

山形県の主要なブドウ品種

 山形県を代表するブドウとしては、マスカット・ベーリーAとデラウェアが知られています。
生産量だけではデラウェアが断トツで多く、日本全体で見ても第一位なのですが、そのうちのかなりの量が食用として販売されるため、ワイン用としてはマスカット・ベーリーAと同程度となっています。
ヨーロッパ系品種もシャルドネやメルローが栽培されていますが、生産量はマスカット・ベーリーAの半分以下です。
また、生産量は少ないのですがヤマブドウも栽培されており、山形県の特色を生かしたワイン造りに使用されています。

山形県のワイン造りの強み

 山形県、特に内陸側の南部は日本全域でも例外的なほどブドウの栽培に適した地域です。
冬の気温がやや高めなため、豪雪地帯として知られる山形の中では比較的積雪が少なく、ブドウの栽培を妨げるほどではありません。
夏場は雨が少なく乾燥しており、最高気温と最低気温の差が大きい地域でもあります。
なにより、奥羽山脈や朝日連峰をはじめとする山々の斜面が、水はけや日照の良さをもたらしてくれるため、梅雨の悪影響を受けにくくなっているのです。
そのため、ブドウやワインの生産量自体は山梨県や長野県に及びませんが、品質面では高い評価を得ている町がいくつもあり、県外のワイナリーが買い求めるケースも多くなっています。
また、高品質なブドウを十分な量調達できることから、県内産のブドウを100%使用した良質なワインを認証する「山形県産認証ワイン」制度が取り入れられていたこともありました。
日本の消費者がワインの認証表示に馴染みがなかったことや、アナウンスの不足などから認知度が上がらず2014年に廃止はされてしまったものの、山形産ブドウの質の高さがうかがえる施策だったといえるでしょう。

山形県のワインの問題点

 品質面では十分な力を持つ山形のワインですが、それに見合うだけの認知度が得られないのは問題といえそうです。
生産量が主要産地のなかでも下のほうなため、国産ワインの売り場でなかなか目立つことができません。
「甲州」や「ナイアガラ」のようにインパクトのある品種を持っているわけでもなく、デラウェアはどちらかというと食用として知られています。
米や他の果物など、ブドウ(ワイン)以外の名産品の知名度が高く、相対的に陰に隠れがちなのも要因のひとつといえるでしょう。
「山形県産認証ワイン」制度が最終的にあまり浸透せずに終わってしまったことから考えても、本腰を入れた広報活動が必要とされているのかもしれません。

 しかし、それは逆に認知度さえ上がって正当な評価を得られるようになれば、一気にブレイクする可能性があるということでもあります。
ワインに関する法律が整備され、ブドウの産地や品質に対する注目度が高まりつつあるいま、あまり目立たなかった山形県のワインが日本ワインのなかで重要な地位を得るようになるのもそう遠くないかもしれません。