ワインに合うチーズの種類と特徴 ワインに合わせるおつまみ
「赤ワインのおつまみにチーズを」というのは、シャブリと生牡蠣を合わせるのと同じくらい一般的な考え方なのではないでしょうか。
でも、ワインはもちろん、チーズだってものすごくたくさんの種類がある食べ物です。
どのワインにどのチーズを合わせてもよい、なんてことはなく、やはり相性のよい組み合わせというものが存在します。
ここでは、チーズの種類や特徴と、合いやすいワインのタイプについてご紹介します。
チーズの分類
チーズとは、動物の乳に含まれるたんぱく質などの固形成分を、酸や酵素の働きによって凝固させて水分と分離したものです。
世界には1000種類を超えるチーズが存在するといわれており、味や香りはもちろん製法も様々ですが、それでも共通する特徴によっていくつかのタイプに分類することができます。
ワインとの合わせ方
チーズの種類と簡単な特徴が頭に入ったところで、ワインとの合わせ方を見てみましょう。
基本的には、味や香り、塩分や脂肪分などによって相性を考えていきます。
ナチュラルチーズ
動物の乳をいずれかの製法で凝固、発酵、熟成させたもので、プロセスチーズ以外の全てのチーズの総称です。
元となる原料や製法によって様々な特徴を持っており、なかにはかなり癖の強いものも含まれます。
ワインと同じように「原産地呼称統制」の規制を受けるものも多く、産地や製法、品質などが一定の基準を満たしていないと、特定の名称を名乗れません。
製法や成分によって、さらに大きく7つのタイプに細分化されます。
ソフトチーズ
ナチュラルチーズのうち、水分の残留量が47%以上のものの総称です。
熟成度合いによっては常温でも固形化せず、とろとろと流れる状態になっているものもあります。
熟成してあるかどうかと、製法や原料によってさらに4つに分けられます。
フレッシュチーズ
チーズのうち、凝固させたあと熟成せずに食べられるものを指します。
熟成工程を経ていないので、その名のとおりほぼ生ものです。
ぷるぷるとしたごく柔らかい食感と、ほとんど癖のないシンプルな味わいが特徴で、塩やオリーブオイルをかけてそのままスプーンで食べてもいいですし、生野菜とともにサラダに使用されたり、ケーキやクッキーなどのお菓子の原料としても使用されます。
代表的なものは、モッツァレラチーズやリコッタチーズ、マスカルポーネ、クリームチーズなどです。
フレッシュチーズは酸味や果実味の際立つワインと
熟成期間を持たないフレッシュチーズは、すっきりとしたシンプルな味わいと酸味が特徴。
合わせるワインも酸味のしっかりとした白ワインや、早飲み系のワインがいいでしょう。
果実味の豊かなタイプなら、さらにイチゴなどをプラスしてみてもおいしいかも。
逆に渋みの強い赤などは、お互いの長所を打ち消しあってしまう可能性があるためあまりおすすめしません。
ただし、クリームチーズにツナや魚卵を混ぜて作ったディップなど、手を加えると他のタイプにうまく合わせられる可能性もあります。
白カビ系チーズ
熟成させたソフトチーズのうち、外側を白カビが覆ったタイプのものです。
整形した後、しばらく塩水に漬けておくことで外側だけが塩分の多い状態になり、その状態を好む白カビが発生します。
白カビの作り出す酵素がチーズを分解・熟成させ、それが外から中へ向かってゆっくりと進んでいくため、最初は比較的さっぱりと癖がなく、熟成が進むごとに独特の香りとコクを獲得。
最初は中心部に固い芯のような食感の未熟な部位がありますが、熟成と共にとろとろに柔らかくなっていきます。
あまり置いておきすぎると過熟状態になり、外側のカビの層のつやがなくなり中央がくぼんで、匂いもかなりきついものになりますが、好きな人にとってはその状態こそがもっともおいしく感じるようです。
代表的なものは、カマンベールチーズ、ブリーなどです。
白カビ系チーズはコクありの白
コクや塩味はありつつ、基本的にさっぱりとしている白カビ系チーズは、マロラクティック発酵やシュル・リーでコクを獲得した白ワインがおすすめです。
とろりとした食感と香りが残る舌を洗うように飲むと、チーズ、ワインの往復が止まらなくなるかも。
熟成が進んできたら、さらにさっぱりとした辛口のスパークリングも良いでしょう。
赤ワイン、特にフルーティなタイプの赤は、場合によってはちょっと臭みを感じてしまう恐れもありますので、注意が必要です。
ウォッシュチーズ
熟成させたソフトチーズのうち、外側を塩水などで定期的に洗うという製法で作られたものです。
塩水のほか、ビールやブランデーなどが使用されることもあります。
塩分やアルコールに強い菌が発生し、水分が定期的に供給されるため、かなり強い発酵状態が続きます。
完成すると、外側はぬめりのある赤褐色の状態になり、一般的には「くさい」と表現される強いにおいを発するようになります。
外側の菌の影響で、内部はとろとろになり、塩味がきいてよく熟成した味わいに。
この菌類、実は納豆を発酵させるのと同じ種類の菌なので、日本人にとっては意外と親しみやすいかもしれません。
代表的なものは、モンドール、リヴァロなどです。
ウォッシュチーズの個性にタンニンと酸で対抗
独特で強烈な匂いがクセになるウォッシュチーズは、押し負けないボディを持つワインと組み合わせましょう。
アルコールはやや高めの、どっしりとしたタンニンや渋みを持つパワフルなタイプが最適。
ブドウで言えばシラー、産地で言えばカリフォルニアやオーストラリアなどが有力候補です。
また、表面を落とすと意外とクセのないタイプでもあるので、コクと酸味の際立つ寒冷地方の力ある白ワインなども合わせられるかも知れません。
フルーティな果実味や繊細な香りが特徴のワインは、せっかくの香りを塗りつぶされてしまうこともあるので気を付けましょう。
シェーブルチーズ
熟成させたソフトチーズのうち、山羊の乳を使用したものです。
癖のある原料を使用しているため、チーズ自体もかなり個性的な味わいです。
牛乳から作られるチーズに比べて影が薄いのですが、実は歴史的にはこちらのほうが古くから存在するという説も。
独特の味わいを持つ食品に良くあることですが好みの分かれるチーズで、嫌いな人はまったく受け付けませんが、好きな人はこれでなければ駄目というほど好きになります。
羊肉やほやなど、ちょっと一般受けしにくいような食べ物が好きな方は、一度チャレンジしてみるといいかもしれませんね。
代表的なものは、ヴァランセ、サント・モール・ド・トゥレーヌなどです。
シェーブルチーズはタイプを確認してからワイン選びを
山羊の乳から作られるため他のタイプとは一線を画する個性を持つシェーブルチーズ。
逆に言えば、山羊の乳が原料であれば全てこのタイプにカテゴライズされるため、実は様々な個性を持つものが混ざっているチーズでもあります。
また、熟成度合いでの味の変化が大きいのも特徴で、元がどんなタイプで熟成がどこまで進んでいるかによって、合わせるべきワインも大きく変わってきます。
基本的に若いうちは軽めのもの、熟成が進んだらボディのしっかりしたものを合わせると失敗が少ないようですが、最終的は味を見てから決めたほうが良いかもしれません。
全体的に個性が強いのは間違いないので、あまりすっきりした早飲み系などは避けたほうがよいでしょう。
青カビ系チーズ(ブルーチーズ)
青カビの力を借りて熟成させたチーズです。
白カビ系と違って表面だけでなく、中までしっかりカビが入っていくのが大きな特徴です。
そのため、チーズ自体が他のものに比べてかなりしょっぱく、一度に口に入れるような食べ方には向きません。
独特の風味と口の中がちょっとぴりぴりするような味わいを持っており、初めてだと外見のインパクトもあって受けいれづらいかもしれませんが、慣れてくると意外と食べやすいタイプでもあります。
クラッカーに少しだけつけて食べたり、パスタに混ぜたりといったオーソドックスな食べ方のほか、蜂蜜をかけてデザートにしたりソースに使用するなど、幅広い楽しみ方が可能です。
代表的なものは、ゴルゴンゾーラ、ロックフォールなどです。
青カビ系チーズにはとろりとした甘口ワインを
強い塩味とピリピリする味わいが特徴の青カビ系チーズは、意外にも甘口のワインとの相性が抜群です。
代表的な青カビ系チーズであるゴルゴンゾーラが、蜂蜜をかけてデザートのようにして食べられることでも知られているとおり、このタイプはジャムやシロップのようなしっかりとした甘みに良く合うのです。
アイスワインや貴腐ワインなどの果汁濃縮系ワインと一緒にいただくと、普段はあまりたくさん飲めないはずの濃厚な甘さを持つワインが止まらなくなるおいしさです。
また、ポートワインなど甘口のフォーティファイドワインに合わせても良いでしょう。
アルコールの強さが、独特の強い香りを緩和してくれます。
カベルネ・ソーヴィニヨンなどが主体の果実味に乏しいワインは、全体的にとげとげした刺激ばかりになってバランスが取りにくいので、合わせるのはちょっと難易度が高いといえるかもしれません。
セミハード系チーズ
水分含有量が39~46%のチーズです。
ソフト系のように常温でとろけているようなことはありませんが、ハード系ほど歯ごたえのしっかりしたものでもなく、もっちりとした柔らかい食感です。
日本のプロセスチーズと似た食感、味わいのものが多いため、フレッシュチーズが初めてという方でも割と抵抗なく楽しめるのではないでしょうか。
熟成がゆっくりなので、購入後もあまり急速に味が変化せず、急いで食べなくていいのもポイント。
そのためか、国産のものも多く作られているようです。
そのままでもおいしいのですが、グラタンなど焦げ目がつくくらいに加熱してあげると、コクや風味が増してさらにおいしくいただけます。
代表的なものは、ゴーダチーズ、マリボーチーズなどです。
セミハード系チーズには国産ワインでチャレンジ
日本でも受け入れられやすい種類の味わいを持つセミハード系チーズは、国内で作られているものも多く、プロセスチーズの原料としても最も利用されているチーズです。
基本的に相性のレンジの広いタイプで、色々な可能性がありますが、これはぜひ国産ワインを合わせてみてください。
国産ワインは、日本人の味覚に合わせて造られているものが多いので、同じく日本人にとって馴染みやすいセミハード系チーズとの相性もよいはずです。
赤、白、甘口、辛口のいずれもそれなりに合わせられるはずですが、ナイアガラなどフォクシーフレーバーのはっきりしたものは例外的に難しいかも。
また、あまり安価だったり単純な味や香りのものよりは、きちんとある程度のポテンシャルを持つものの方が良いでしょう。
ハード系チーズ
水分含有量が38%以下のチーズです。
その名のとおりがっしりと固く、小さく砕くかチーズカッターで薄くスライスして食べます。
もしくは、熱を加えてとろとろに溶かし、パンや野菜にかけて食べたり、チーズフォンデュにしたりといった食べ方も。
水分が少ないため長期間の熟成が可能で、短くても半年(6ヶ月)、長いものでは3年、場合によっては5年寝かせることもあります。
その分、しっかりとしたコク、結晶化した独特の食感、からすみに例えられるようなねっとりとして芳醇な香りなど、豊かな味わいを楽しめます。
ナチュラルチーズの中では、日本でも名前の知られているものが多いタイプとも言えるようです。
ちなみに、販売されるときは小さく小分けにされていますが、熟成時点では数十kgからものによっては100kgを超えるような大きな塊の状態なのも特徴です。
代表的なものは、パルミジャーノ・レッジャーノ、チェダーチーズ、ミモレットなどです。
ハード系チーズにはしっかりとした熟成を経たワインを
水分をしっかりと抜き、長期間の熟成を行うハード系チーズには、同じように熟成期間の長いタイプのワインが良く合います。
ボルドーなどの赤ワインはもちろん、豊かなコクを持つ白ワインなどもおすすめです。
フォーティファイドワインも合わせやすい種類ですが、甘口タイプよりは辛口のほうが良いかもしれません。
薄切りにしたハード系チーズを少しかじり、口の中一杯に広がった旨みと香りをワインで溶かすようにゆっくりと飲み込むと、長く続く幸せな余韻に浸れます。
プロセスチーズ
ナチュラルチーズを再加工して作られるチーズです。
加熱、整形はもちろん、他の種類のチーズとの混合、塩や胡椒など調味料の追加、味や香りの調整、固さの調整など様々な手法での加工が行われます。
より食べやすくするほか、保存性や加工性の向上も目的としており、製品によっては(薄切りのとろけるチーズやストリングチーズのように)特別な性質を持たされるものもあります。
日本においては、ナチュラルチーズが広く受け入れられるようになった現代でも、まだまだ各種プロセスチーズがもっともメジャーなチーズといえるでしょう。