ロワール地方とは ロワールの地域データ 位置、歴史、気候など
ロワール地方とは
ロワール地方は、フランス北西部、ロワール川流域に広がる一連のワイン生産地です。
東西に400km以上、南北に100km以上という広大な範囲にいくつもの生産地が点在しており、当然ながら土壌や気候条件も様々です。
そのため、ロワール地方全体をカバーするAOCはなく、それぞれの地区ごとに異なる特徴を持つワイン造りを行っています。
ロワール地方は、その位置や特徴によって大きく4つの地区に分けられます。
ロワール川が大西洋に流れ出る河口付近の「ペイナンテ(Pays Nantais)地区」、川を遡り主に左岸にブドウ畑の広がる「アンジュー&ソーミュール(Anjou&Saumur)地区」、やや北上したあたりに左右に広がる「トゥーレーヌ(Touraine)地区」、ロワール川が大きく南下し東にはシェール川の流れる「サントル&ニヴェルネ(Centre&Nivernais)地区」です。
それぞれがその地区を代表するような大きな都市を擁しており、それを中心として点在する古城や修道院からの影響を受けています。
ロワール地方の歴史
ロワール地方はルイ14世の時代にその座をパリ周辺に譲るまで、長い間フランスの政治や宗教の中心地でした。
そのため封建制による領地の奪い合いや百年戦争、宗教改革、ルネサンス、絶対王政とその結果によるフランス革命に至るまで、フランスの1500年の歩みそのものを濃縮したような歴史を持っています。
例えばペイナンテ(Pays Nantais)地区ではナント市を中心としてなんども戦争や紛争、宗教対立などの暴力的な事件が起こっていますし、アンジュー&ソーミュール(Anjou&Saumur)地区ではソーミュール城を境界としてイギリスとフランスの熾烈な争いが展開されました。
トゥーレーヌ(Touraine)地区には、諸侯の建てた要塞のような館やルネサンス期にこぞって建造された豪奢な城などが多く残っており、ブドウ栽培とワイン醸造はもちろん、あらゆる美食と庭園文化も発展した「フランスの庭」と呼ばれる、現代においてはフランス観光の際にはずすことのできない地域です。
サントル&ニヴェルネ(Centre&Nivernais)地区ではベネディクト派の修道院がワイン醸造のレベルを大きく引き上げるという、ブルゴーニュ地域圏でははずすことのできない要素によって、世界的に有名なワインが生まれています。
テロワールとそれに伴う栽培品種の違いはもちろん、東西で異なる政治的なパワーバランスや事件の差が、多様なこの地方のワイン文化を形作っているのです。
ロワール地方のテロワール
ロワール地方は地区ごとに大きく異なるテロワールを持っていますが、基本的には「石灰質の土壌」を共通の特徴とします。
西側のペイナンテ地区、アンジュー&ソーミュール地区では、チョーク質の石灰岩である「テュフォー(Tuffeau)」が多く、南東の飛び地であるサントル&ニヴェルネ地区は貝などの化石を主要素とする石灰質土壌です。
そのため、スティルワインはもちろんスパークリングワインや貴腐ワインもあるバラエティ豊かな地方ではありますが、その中でも特に高評価の白ワインが目立ちます。
気候については土壌よりも違いが大きく、西の海側は海洋性気候で東は大陸性気候、さらに寒暖差の激しい厳しい気候の土地もあれば温暖でブドウ以外にも様々な農作物が育つような土地もあり、これによってロワール地方はバラエティ豊かなワインが造られる多様性を持つワイン産地となっています。